訃報の連絡は突然あるものです。しかし、葬儀に関する知識やマナーを知らなければ、どうしても慌ててしまいます。「服装はどうしたらいいのか」「香典にはいくら入れたらいいのか」。そうしたマナーは、知識として事前に調べておく必要があります。
今回の記事では、突然の葬儀でも慌てないための事前準備や葬儀マナーについて紹介していきます。
葬儀について基礎知識
葬儀とは故人の冥福を祈り、成仏祈願を行う儀式を指します。宗教や宗派によっても違いがあり、日本の仏教であれば読経や焼香、神道であれば祈祷や玉串奉奠(たまぐしほうてん)、キリスト教であれば聖書の朗読や説教が行われます。
「通夜」「葬儀」「告別式」の意味と違い
日本の仏教における葬儀は、通夜の翌日に告別式とともに行われます。通夜とは家族や親族が故人との最期の夜をともに過ごし、供養することをいいます。また、告別式は故人が生前に親交のあった人との最後のお別れを意味します。本来、告別式と葬儀は区別されますが、最近ではまとめて行われることが一般的です。
通夜:家族や親族が故人との最期の夜をともに過ごすこと。
葬儀:故人の冥福を祈り、成仏祈願を行う儀式。
告別式:故人が生前に親交のあった人との最後のお別れをすること。
参列と列席の意味と違い
葬儀において、「列席」と「参列」という言葉の違いを理解しておく必要があります。列席とはその場に出席することで、参列は加わり出席すること。実はそれぞれの言葉の意味には違いありません。しかし、「列席」は葬儀の主催者側(遺族側)が使う言葉であるのに対して、「参列」は遺族側以外の立場の人が使う言葉になります。意味は同じですが、それぞれの立場で使う言葉が異なりますので、マナーとして覚えておきましょう。
葬儀に参列するときの事前準備
多くの場合、訃報の連絡は急に入ります。もし葬儀に参列することになれば、お香典や袱紗、数珠などの準備が必要になります。以下では、葬儀に参列するときの事前準備について紹介していきます。
お香典のお札は新品を使わない
葬儀に参列する際、香典袋と現金を用意する必要があります。お香典に関しては、いくつかのマナーが存在します。
一般的に結婚式のご祝儀では新札を使用することがマナーとされていますが、お香典においては逆で、香典袋に入れるお札は新札ではないものを使います。新札を使ってしまうと、あらかじめ不幸を予測していたという印象を与えてしまうためです。あまりにも汚れているお札ではない限り、使用感のあるお札を入れるようにしましょう。
袱紗や数珠は場面によって使い分ける
葬儀に必要な持ち物として、お香典の他に、袱紗(ふくさ)や数珠があります。この袱紗と数珠は場面によって使い分けるとよいでしょう。
通夜やお葬式などの弔事の場において、袱紗は香典袋を包むために使用します。袱紗は結婚式などでも使用するため、慶事用の赤色やオレンジ色のもの、弔事用の紺色や紫色のもの、それぞれの用途に合わせた袱紗を持つと良いでしょう。なお、紫色の袱紗であれば、慶事でも弔事でも、どちらでも使用できます。
また、数珠は「本式数珠」と「略式数珠」の2種類があります。本式数珠は宗派によって決まった形があり、略式数珠はどの宗派でも使用できます。葬儀に参列する際、どの宗派かわからない場合は略式数珠を用意するようにしましょう。
お供え物は線香・花・保存が効くお菓子
故人と親しい間柄で合った場合、お供え物を持っていくこともあると思います。その場合は、線香や花、お菓子などを持ち込むことが多くなりますが、お菓子に関しては、保存が効くものをお供えするようにしましょう。その際、のしをかけることを忘れないようにしましょう。
葬儀参列者の服装マナー

葬儀に参列する際は、もちろん服装のマナーを守る必要があります。
以下では、葬儀参列者の服装マナーについて紹介していきます。
男性の服装
男女において、お葬式における服装は喪服の着用が基本となります。なお、和装に関しては、故人に近い人物が着用するものなので、一般の参列者の着用は控えましょう。
男性の場合は、礼服用のブラックスーツが一般的です。もちろんモーニングの着用もOKですが、昼の時間帯でしか着用できないため注意が必要です。また、ネクタイやベルト、靴、靴下は黒色のものを準備し、ワイシャツは白無地を着用しましょう。その他にも、アクセサリーはすべて外し、時計については華美でないシンプルなデザインのものを着用するとよいでしょう。
- ●一般的には礼服用のブラックスーツ(又はモーニング)
- ●ネクタイやベルト、靴、靴下は黒色のもの
- ●ワイシャツは白無地
- ●アクセサリー類は外し、時計はシンプルなデザインのもの
女性の服装
女性の喪服として、ブラックフォーマルが最も多く着用されています。スーツを着用する場合はパンツではなく、スカートが無難でしょう。
インナーは白色のブラウスや黒色のカットソー、ストッキングと靴は黒色のものを着用するようにしましょう。また、男性と同様に、アクセサリー類は外します。ただし、真珠のネックレスなどの着用は問題ありません。その他にも、ネイルをする場合はシンプルで落ち着いたデザインにするとよいでしょう。
- ●一般的には礼服用のブラックフォーマル(黒色のワンピースなど)
- ●インナーは白色のブラウスや黒色のカットソー
- ●ストッキングと靴は黒色のもの(真珠などはOK)
- ●アクセサリー類は外し、ネイルはシンプルで落ち着いたデザインのもの
また、男女ともに毛皮などの革製品は動物の「殺生」を連想させるため、NGです。
子どもや学生の服装
参列者の中には、礼服を持っていない子どもや学生もいます。その場合、中学生などの学校指定の制服があれば、それを着用すれば問題ありません。ただし、派手な色のネクタイやリボンがある場合は外すようにしましょう。
奨学生や園児の服装についても、もし指定の制服等があればそれを着用できます。指定の制服がない場合は、襟付きの白いシャツや黒のズボン・スカートなど、落ち着いたデザインのものを着用するとよいでしょう。ただし、葬儀では長時間の着用になるため、できる限り、子どもの負担とならないように配慮しましょう。
なお、大学生の場合は喪服を着用するのが一般的です。もし喪服を準備できない場合は、リクルートスーツを代用してもかまいません。ただし、リクルートスーツでもストラップ柄が入っているなど、派手なデザインのものは着用を控えるようにしましょう。
葬儀参列者の香典マナー

ここでは、香典の書き方や金額相場、持参するタイミングなど香典のなど、香典マナーについて紹介していきます。
香典のマナー
香典マナーとして、「表書き」「香典はいつ持参するのか」「受付で香典を差し出す際のマナー」などが挙げられます。以下の内容を参考にして、失礼のないように配慮しましょう。
- ●香典の表書き
仏式の葬儀において、香典の表書きは「御香典」や「御霊前」が一般的です。宗派によっては「御仏前」とする場合もありますが、葬儀前に確認することは難しいですので、「御霊前」の表書きであれば問題ありません。なお、表書きや名前は薄墨を使用することがマナーです。これは、「書きながら涙をこぼした」などの意味合いを持ちます。
- ●香典を持参するタイミング
香典は、通夜または葬儀・告別式に参列する際に持参します。両日ともに参列する際は、いずれかの参列時に持参すればよいでしょう。
- ●受付で香典を差し出す際のマナー
香典は、受付で記帳して差し出します。香典を差し出す際は「この度はご愁傷様でございます」と一言申し添えをします。また、香典は手で持つのではなく、受付に備えてある香典用のお盆等に乗せ、受付の方が香典の表書きが読めるような向きでお渡しします。
香典の金額の相場
香典の金額の相場は、その人の故人との関係性で変わってきます。
以下は、故人との関係性と香典の相場の目安となります。
関係性 | 香典相場の金額 |
自分の親 | 5万円~10万円 |
自分の兄弟姉妹 | 3万円~5万円 |
自分の祖父母 | 1万円~3万円 |
配偶者の親 | 5万円~10万円 |
配偶者の祖父母 | 1万円~3万円 |
配偶者の兄弟姉妹 | 3万円~5万円 |
親戚のおじ・おば | 1万円~2万円 |
その他の親戚 | 5,000円~1万円 |
上司 | 5,000円~1万円 |
上司の家族 | 5,000円程度 |
同僚 | 5,000円程度 |
同僚の家族 | 3,000円~5,000円 |
友人・知人 | 3,000円~1万円 |
友人・知人の親 | 3,000円~1万円 |
ご近所の方 | 3,000円~5,000円 |
葬儀参列者の焼香マナー
焼香とは、「抹香」と呼ばれる木片を香炉にある香炭へくべることで、故人や仏様に対して拝む作法のことをさします。基本的な焼香の作法は、右手の親指、人差し指、中指の三本で抹香をつまみ、額の高さまで上げます(おしいただく)。次に香炉へ落とし、抹香をくべ終えたら遺影に向かって合掌して一礼します。
なお、宗派ごとに、お焼香の方法は異なりますので、今のうちから覚えておくようにしましょう。
【宗派ごとの焼香マナー】
真言宗:おしいただき、焼香は3回おこなう。
浄土宗:おしいただき、焼香は1~3回おこなう。
浄土真宗本願寺派:おしいただかず、焼香は1回おこなう。
浄土真宗大谷派:おしいただかず、焼香は2回おこなう。
日蓮宗:おしいただき、焼香は1〜3回おこなう。
臨済宗:1回目はおしいただき、2回目はそのまま焼香する。
曹洞宗:1回目はおしいただき、2回目はそのまま焼香する。
天台宗:おしいただき、焼香は3回おこなう。
参列者として遺族への声かけマナー
葬儀において、遺族や親族へお悔やみの言葉を伝えたいと思っても、どのような言葉をかけるべきか悩んでしまうかもしれません。以下では、お悔やみの言葉として、代表的な言葉の例を紹介します。
●参列者が遺族へ声をかけるとき
「この度はご愁傷様です。心よりお悔やみ申し上げます」
「この度はご愁傷様です。心中お察し致します」
●参列者が親族へ声をかけるとき
「この度は突然のことで驚いております」
また、かける言葉としては使ってはいけない「忌み言葉」も知っておきましょう。
切れる、消える、終わる、落ちる、数字の四(死)、数字の九(苦)など
●不幸が重なることを連想させる言葉
わざわざ、次々、重ね重ね、いよいよ、どんどん など
●不幸が繰り返されることを連想させる言葉
再び、再々、また、ひき続き、続いて、追って など
●死に関わる言葉
死ぬ、生きる など
まとめ
今回の記事では、突然の葬儀への参列でも慌てないための、葬儀に関する基礎知識やマナーについて紹介してきました。知識もなく葬儀に参加して、ご遺族や親族の方に失礼な態度を取ってしまわないように、十分に配慮するようにしましょう。
しかし、この記事で学んだこと以外にも、悩み事や迷ってしまうことがあるかもしれません。「サン・ライフ」では、24時間対応のコールセンターも完備していますので、葬儀に関する疑問やお悩み事がある際は、お気軽にお問い合わせください。スタッフが親身なってご対応いたします。大切な故人との最期のお別れを全力でサポートいたします。
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査 1級葬祭ディレクター
高橋 竜一
株式会社サン・ライフは安心のご葬儀・お葬式・家族葬をお手伝いいたします。