
遺族にとって納骨式は故人を偲び、その魂を安らかに送り出す大切な儀式です。しかし具体的な手続きや費用が分からない方もいるのではないでしょうか。特にお布施の金額やマナーは、事前に知っておきたい情報の一つです。
この記事では納骨とは何か、四十九日法要との違い、納骨の種類、お布施の相場、お布施の書き方や渡し方などを詳しく解説します。納骨式をスムーズに進めるための流れや作法を、事前に把握しておきましょう。
目次
納骨とは? 四十九日法要との違い
初めに納骨とは何かよく理解しておきましょう。納骨と比較される「四十九日法要」との違いや、納骨のタイミングを説明します。
納骨とは
納骨とは火葬後の遺骨を故人の魂が安らぐ場所に納めることです。一般的には骨壷に入れた遺骨をお墓に埋葬することを意味しますが、近年では一般的なお墓だけではなく、納骨堂や樹木葬など、さまざまな種類の納骨方法があります。
一般的なお墓への納骨の場合、通常はカロートと呼ばれる空間に遺骨を納めます。カロートは墓石の下にある遺骨を納めるためのスペースです。カロートの構造や納骨方法は法律で厳密に定められているわけではありません。そのため骨壷ごと納めたり、遺骨を骨壷から出して布で包んで納めたりするなど、地域や宗教、個人の考え方によって多様な方法が存在します。
基本的にカロートは一度納骨を行うと簡単に開けられません。そのためあらかじめ納骨日を設定し、石材店に依頼して開閉作業を行ってもらうのが一般的です。
四十九日法要とは
「四十九日」または「七七日(しちしちにち・なななぬか)」とは、故人の命日から数えて49日目を指します。この期間は仏教において故人の魂が次の世へ向かう旅路にあるとされ、特別な意味を持つ日と考えられています。
魂の行き先が決まる四十九日目を仏教では「忌明け」と呼ぶのが一般的です。故人を悼む「忌中」の期間が終わって遺族が少しずつ悲しみを乗り越え、日常生活に戻り始める節目として「忌明け法要」が行われます。
四十九日法要は忌中の中でも最も重要とされる儀式で、僧侶の読経や親族との集まりを通して悲しみを分かち合い、支えながら新たな気持ちで未来へと進む力を得る儀式と考えると良いでしょう。
納骨式を行うタイミング
納骨を行うタイミングは、四十九日法要の後同日に執り行うのが一般的です。仏教では亡くなった方の魂は49日間、現世とあの世の境をさまよい、さまざまな審判を受けるという考え方が根付いています。魂の行き先が決まる四十九日法要で故人の旅立ちを祈り、納骨することで最後の別れを告げるのです。
ただし必ずしも四十九日ちょうどに行う必要はありません。遺族または参列者の都合やお墓の状況などの事情によって、納骨日を前倒しにするケースもあります。例えば「49日が平日で忙しい」「遠方から参列する親族がいる」「暑い時期を避けて涼しい時期に行いたい」などが考えられるでしょう。
納骨には3つの種類がある
納骨は家族の想いや故人の生前の希望に合わせられ、方法も多種多様です。ここでは一般的なお墓に納骨する方法以外の、3つの主な方法を詳しく解説します。
納骨の種類①樹木葬
樹木葬は、故人の身体を自然に還すという意味を持つ納骨方法です。墓地に木を植え、その周辺に遺骨を埋葬します。この方法は環境に配慮できるだけでなく、樹木が成長し、いつまでも緑が茂る様子によって故人の存在を感じられるのがメリットです。
なお樹木葬には「里山型」と「霊園型」の2種類あります。里山型は区画整理された自然豊かな場所で、霊園型は既存の霊園内で実施されます。
樹木葬の平均費用は20万円から70万円程度ですが、あくまでも目安です。実際の費用は地域や葬儀会社、また個別の条件に応じて変動します。
納骨の種類②散骨
散骨とは火葬後の遺骨を粉末状にして海や山、川などに撒き、自然に還すという方法です。故人が生前、自然に還りたいという希望を持っていた場合に選ばれる方法で、お墓の管理は必要ないのが利点です。
この方法は法律上違法ではありませんが、地域や市の条例によっては制限されている場合もあります。不安な方は法的な問題や環境への配慮を熟知した専門業者に依頼し、事前に確認することをおすすめします。
また散骨に関して詳しく紹介したコラムもご用意していますので、ぜひ参考にしてください。
海に散骨するのはアリ? 海洋散骨の特徴や費用・服装マナーについて解説
納骨の種類③手元供養
手元供養とは、故人の遺骨を自宅など身近な場所で保管し供養する方法です。故人を身近に感じたい方や、従来の葬送の形式にとらわれずに自分らしい形で供養したい方におすすめです。
特定の法律や宗教、マナーに縛られることも少ないため、法要なども不要で遺族が自由に供養を行えます。
粉骨すると遺骨の体積を大幅に減らせる他、小さな骨壺やおしゃれなデザインの収骨容器に収められます。マンションなどスペースが限られた住居で保管する場合は、粉骨する方が良いでしょう。粉骨や保管に必要な物は仏具店またはインターネットでも購入可能です。
納骨式や四十九日法要のお布施費用の相場は?
儀式を執り行う場合は、僧侶への謝礼としてお布施を包むのがマナーです。ここでは一般的な相場を説明します。規模や地域、宗派などによっても多少異なるので、あくまでも目安として考えてください。
納骨式のみ行うときのお布施
納骨式のみを行う場合、お布施の一般的な相場は3万円から5万円程度です。納骨と同時に故人の魂をお墓に迎え入れる儀式である開眼供養を行う場合は、通常のお布施の1.5倍から2倍程度を準備するのが望ましいとされています。
開眼供養は納骨式よりも規模が大きく、より多くの読経や儀式が行われるためその分お布施の金額も増額するのが通例です。納骨式のお布施は故人を敬い、僧侶への感謝の気持ちを表すためにも大切です。状況に応じて適切なお布施を用意しましょう。
四十九日法要のみ行うときのお布施
四十九日法要のみを行う場合のお布施の相場は、一般的に3万円から5万円程度とされています。納骨式のお布施の相場とほぼ同じですが、四十九日法要のお布施の金額は、通夜や葬式・告別式で支払ったお布施の10%から20%程度を目安にするケースが多いようです。
例えば葬儀で50万円のお布施を支払った場合、四十九日法要では5万円から10万円程度が目安となります。四十九日法要のお布施は故人の冥福を祈り、僧侶に感謝の気持ちを伝える大切な儀式です。経済状況なども加味しながら、無理のない範囲で準備しましょう。
浄土真宗の際はお布施の金額が異なる
浄土真宗のお布施費用は、葬儀、法事・法要、法名の授与など、状況によって異なります。
- 葬儀(通夜・火葬・初七日を含む) 20万円~30万円
- 法事・法要 3万円~5万円
- 法名の授与 1万円
浄土真宗では、他の宗派で見られるような「戒名料」という概念はありません。代わりに「法名」と呼ばれる名前を授かりますが、宗派によって金額が定められています。浄土真宗のお布施は他の宗派とは異なり、戒名のランク付けや複雑な計算をする必要はありません。
浄土真宗本願寺派(お西)や真宗大谷派(お東)も、法名の授与は1万円と非常にシンプルです。(お西は17歳以下、お東は20歳以下が5,000円)僧侶への感謝の気持ちと、故人の冥福を祈る気持ちを持って、ご自身の経済状況に合わせて包みます。
納骨式と四十九日法要を同時に行うときのお布施
納骨式と四十九日法要を同時に行う場合、お布施の相場は5万円から10万円程度とされています。この金額には両方の法要における読経料や、僧侶への謝礼が含まれています。
ただし実際のお布施の金額は宗派や法要の規模、地域の慣習によって異なることが多いため、事前の確認が必要です。なお浄土真宗では法名料が定額で設定されているため、他の宗派に比べてお布施がやや抑えられる傾向にあります。
このような背景から、お布施の具体的な金額は地域の寺院や葬儀社に相談し、相場や作法を確認することが望ましいでしょう。
お布施以外にお坊さんへ渡すお礼
葬儀や法要を執り行う際、僧侶の方へのお礼として支払う費用には、お布施以外にも「御車代」や「御膳料」などが存在します。これらの費用をそれぞれ詳しく説明します。
御車代
御車代は僧侶がご自宅や寺院から葬儀会場まで移動する際の交通費として渡す金銭です。単なる実費というだけでなく、駆け付けていただいた僧侶に対する感謝の気持ちを表す意味合いが込められています。
お布施とは別の封筒に「御車代」と書き入れて用意するのが一般的です。お車代の相場は5,000円〜1万円程度ですが、地域の慣習や喪主の判断によって金額は異なります。
一方、寺院で納骨を行い、僧侶が移動しない場合や喪主自身が送迎またはタクシーの手配を行う際は、御車代が不要です。
御膳料
御膳料は法事を行う僧侶が会食に参加しない場合に、感謝の気持ちとしてお渡しするお心付けです。金額の相場は5,000円から2万円程度ですが、僧侶の人数や地域の慣習によって変動するので注意しましょう。
近年では僧侶が法要後の会食に参加するケースは減少していますが、参加しない場合でも御膳料をお渡しする慣習は引き続き受け継がれています。これは僧侶の労をねぎらい敬意を示す日本の伝統的な習慣の一つです。
御膳料は「御膳料」と記した袋に入れて渡し、必要に応じて御車代と共に渡します。
開眼供養したときの費用
納骨式に加えて新しい墓石に故人の魂を入れる開眼供養を行うときは、僧侶による読経が行われます。そのため納骨式のお布施とは別に「開眼供養費」として、3万円から5万円程度を準備する必要があります。地域や寺院の慣習によっても金額が異なるため、事前に確認しておくと安心です。
納骨式と開眼供養を同時に行う場合は、両方の儀式にかかる費用を合わせ、総額で8万円から10万円程度を見積もっておくとよいでしょう。開眼供養は故人を敬い新しい墓所での安らぎを願う大切な儀式として位置付けられており、家族にとっても心の節目となる重要な機会です。
納骨式にかかる費用相場
納骨式にかかる費用は、お布施だけなくお供え物、会食費、石材店への依頼費用、永代供養料などさまざまな要素があります。ここでは、それぞれの費用を解説します。
お供え物の費用
納骨式では故人の冥福を祈り、墓前に花を手向けたり線香を焚いたりします。供え物にかかる費用は、総額で5,000円から1万円程度です。供え物には季節の果物や故人の好物などを用意するのが一般的です。納骨式の厳粛さと親密さを演出するためにも、心を込めて供え物を準備しましょう。
なお、仏教では故人を供養するために墓の後ろに立てられる、細長い木「卒塔婆(そとうば)」を立てるケースがあります。卒塔婆の費用は別途必要となり、寺院によって料金が異なります。
参列者との会食代
納骨式の後、通常は参列者との親睦を深めるために会食を行います。会食はレストランやホテルなど別会場で行われる形式が多く、費用は施主が負担します。
一人当たりの会食費は、5,000円から8,000円程度が相場です。また会場までの移動にバスを手配する際は、参加人数に合わせてマイクロバスの貸し切り費用も考慮する必要があります。
会食は故人を偲び、参列者との絆を強める大切な機会です。故人への感謝と参列者への配慮を示すためにも、会食の場を設けましょう。
石材店に依頼したとき
既存のお墓に納骨する場合、一般的にはカロート(納骨室)の開閉や遺骨の安置を石材店に依頼します。関東地方によく見られる自分で開閉可能なカロートでは業者を頼む必要はありませんが、重い墓石を動かす場合は安全のため専門業者への依頼をおすすめします。
作業料は1万円から2万円程度が相場です。専門家に依頼すれば、墓石の損傷や事故のリスクを避け、安心・安全に納骨を行えるでしょう。
また新たに納骨した故人の名前を墓誌に刻む際は、彫刻費用として一人当たり4万円前後を支払う必要があります。墓誌の彫刻は石材店に依頼するケースが多く、施主にとっても故人の供養を形に残す大切な作業です。
永代供養料
寺院管理の納骨堂に遺骨を納める場合、永代供養料が必要です。永代供養料は遺骨を預け、半永久的に供養してもらうための費用で、相場はおよそ10万円から20万円程度とされています。
「永代」と呼ばれますが、実際には三十三回忌や五十回忌を区切りとして供養が終了し、その後は永代供養墓に合葬されるケースが一般的です。契約内容を十分に確認し、自身や家族の意向に合った永代供養プランを選びましょう。
なお永代供養にはこの他に、管理費や入檀料が別途かかることもあるので、事前に確認しておくと安心です。
お布施を書く際のマナー
お布施を書く際には、いくつかの基本的なマナーを守ることが大切です。その一つが「濃い墨を使って書く」という習慣があることです。通夜や葬儀では悲しみの中で筆を取り、涙が混じったと表現するために薄墨を使いますが、お布施は供養や感謝の気持ちをはっきりと示すため、濃い墨を使うのがマナーとされています。
表書きの書き方
お布施を包む封筒や奉書紙には、目的を示す「表書き」を記す必要があります。宗教によって表書きの言葉が異なるため、以下のように適切な表現を選びましょう。
- 仏教:御布施
- 神道:御祭祀料
- キリスト教:献金または御礼
奉書紙は通常の和紙よりも厚手で、表書きは封筒の中央上部に大きく記入します。市販の表書き入り封筒も使用可能ですが、宗教や宗派によって適切な表書きが異なるため、事前に確認してから選ぶと安心です。「御布施」の下部には氏名(名字またはフルネーム)、「○○家」などと記入します。
裏面の書き方
お布施の封筒の裏面には、包んだ方の情報を記入します。右下から左に向かって、住所、氏名、金額の順で書くのが基本です。また金額は漢数字で記入します。特に金額を記載する際には、次のような漢数字を使用します。
- 1:壱
- 2:弐
- 3:参
- 4:四
- 5:五
- 6:六
- 7:七
- 8:八
- 9:九
- 10:拾
お布施の相場や書き方についてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
お坊さんにお布施を渡す際の注意点
お布施は僧侶への感謝の気持ちを表す大切なお金です。正しい方法で渡す動作は、より丁寧な弔いの気持ちやお礼の気持ちを表現できるので覚えておきたいマナーです。以下の注意点を参考にしてください。
お布施を正しい方法で包む
お布施を包む際は、以下の手順で行いましょう。
- 奉書紙を準備する
奉書紙には、一般的な和紙よりも厚手の紙を使用します。表書きの部分には、宗教に応じた言葉(仏教では「御布施」など)を濃い墨で記入します。 - お布施のお金を用意する
新札またはきれいな紙幣を準備します。折り目が少なく、清潔な状態の紙幣を使うのがマナーです。 - お金を奉書紙に包む
奉書紙の中央に紙幣を置き、左側を折ってから右側を重ねるよう丁寧に包みます。
奉書紙が準備できないという場合は、無地の白い封筒を使用すれば問題はありません。なおキリスト教では、水引が印刷されているお布施袋は適していないので注意してください。さらに蓮の花が印刷されたタイプは仏教のみ使用するとされており、それぞれマナーが異なります。
袱紗または切手盆を使用する
お布施を直接手渡しするのは、正式な場においてマナーに反します。正しい作法としては、切手盆(小さなお盆)にお布施を乗せて渡すか、袱紗(ふくさ)に包み、渡す際は袱紗の上に置いて差し出す方法が推奨されます。このような方法で渡すことで、僧侶や関係者への感謝や敬意を形にして伝えられ、丁寧な心配りを示せます。
お布施は供養や感謝の気持ちを表す意味を持つので、無造作に渡さず儀式の厳粛さを保ちながら慎重に扱うことが重要です。こうした所作を守ることで、心を込めた供養の姿勢が相手に伝わり、より誠実な気持ちで儀式に臨めるでしょう。
お布施を渡すタイミングを考える
お布施を渡す最適なタイミングは、読経前に控え室で僧侶に挨拶する際がベストとされています。とはいえ明確な規則は存在しないため、葬儀の場面においては読経後に僧侶が帰る際に渡すケースや、後日お寺を訪問してお礼と共に渡すこともあります。
タイミングに迷ったときは、躊躇せずに直接お寺や葬儀社に確認するのが賢明です。礼儀正しい振る舞いを心掛け、状況に応じた適切な対応をすれば、僧侶への感謝の意もしっかりと伝わるでしょう。
お礼を述べる
僧侶へお布施を渡す際は、無言で渡すのではなく、言葉を添える心遣いも忘れないようにしましょう。
- 法要前にお布施を渡す場合:「本日はお越しくださりありがとうございます。よろしくお願いいたします」
- 法要後にお布施を渡す場合: 「本日はありがとうございました」
簡潔な言葉でもよいので正しいマナーを意識し、心から感謝の気持ちを伝えることが大切です。
また家族葬でのお布施の相場やマナーを詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
家族葬に必要なお布施の相場は?僧侶に渡す際のマナーやポイントなど詳しく解説
まとめ
納骨式におけるお布施は金銭的な支援だけではなく、故人への供養や感謝の気持ちを込めた大切な行為です。相場やお布施のマナーなどは宗派や地域の習慣などによっても異なるため、できるだけ事前に確認しておくと良いでしょう。
お布施に関して不安や疑問をお持ちの方は、ぜひ株式会社サン・ライフにご相談ください。経験豊富なスタッフが、宗派や地域に合わせた適切なアドバイスを行い、スムーズな納骨の手続きをサポートいたします。
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