「香典返し」とは、頂いた不祝儀に対してなんらかの品物をお返しすることをいいます。頂いたお心づかいに対する返礼のうちのひとつだと考えればよいでしょう。今回はこの「香典返し」を取り上げて、「香典返しを送るタイミング」「香典返しをするときのマナー」「香典返しの選び方」「香典返しに関するよくある疑問と、その答え」について解説していきます。
香典返しとは?
香典返しとは、頂いた不祝儀に対して、喪家側がお返しをすることをいいます。現在はなんらかの物品でお返しする方法が一般的です。
香典返しにまつわるマナーは数多くあるため、ここではこの「香典返しのマナー」について解説していきます。
香典返しの金額の相場
香典返しは、「頂いた金額」に応じてお返しするのが基本です(※例外については後述します)。
このときのお返しの目安は、「頂いた金額の2分の1~3分の1程度」です。そのため、10,000円の不祝儀をいただいたのならば、おおよそ3,000円~5,000円程度の香典返しをお渡しすることになります。ちなみに半分程度のものをお返しすることを、特に「半返し」といいます。
なお、親族から頂いた不祝儀であっても、特段の事情がない限りはお返しするのがマナーです。
【不祝儀の金額】相場の違い
では、実際にはどれくらいの不祝儀が寄せられるのかを見ていきましょう。
寄せられる不祝儀の額は、「不祝儀を渡す人の年齢」「その人と故人の関係」によって左右されます。また、地域差による違いも多少見られます。ここではおおよその金額を、表にまとめています(※地域差をすべて書き表すことはできないので、今回は地域差は考慮していません)。
20代 | 30代 | 40代 | |
祖父母 | 10,000円 | 10,000円-30,000円 | 30,000円-50,000円 |
親 | 30,000円-50,000円 | 50,000円-100,000円 | 100,000円 |
おじ・おば | 10,000円 | 10,000円-30,000円 | 10,000円-30,000円 |
兄弟姉妹 | 30,000円-50,000円 | 30,000円-50,000円 | 50,000円-100,000円 |
職場関係 | 3,000円-5,000円 | 5,000円-10,000円 | 5,000円-10,000円 |
友人やその家族 | 3,000円-5,000円 | 5,000円-10,000円 | 5,000円-10,000円 |
近所の人 | 3,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
※職場関係の場合は、「部内全員でお金を集めて出す」「取引先なので、会社名義で経理から出す」などのケースがあります。個人名で贈られることもありますが、前者の場合は「香典返し不要」、後者の場合は「香典返しが必要」と判断されることが多いといえます。
香典返しを贈るタイミング
香典返しを送るタイミングは、2通りあります。
- 葬式当日に渡す
- 忌明け後に渡す
それぞれ金額や考え方が異なるので、注意しておきましょう。
お葬式の当日に贈る
上記で述べたように、香典返しは「頂いた金額の3分の1~2分の1の価格のもので返す」という原則があります。渡された不祝儀をその場で開封するわけにはいきませんから、この考えをとるのであれば、後日に
ならなければ香典返しはできないことになります。
即日返し、という考え方
しかしそのスタイルを取る場合、おそらく葬儀においてもっとも一般的な額であろうと思われる5,000円~10,000円の不祝儀を寄せてくれた人一人ひとりに対して、後日お返しをしなければならなくなります。これは大変な手間です。
そのため現在は「即日返し(当日返し)」というスタイルが非常によく取られるようになりました。これは、「葬式のときに不祝儀をくれた人全員に対して、3,000円程度のものを香典返しとして渡す」という方法です。
これによって、5,000円~10,000円の不祝儀を寄せてくれた人に対する香典返しを終わらせてしまうのです。
即日返しと後日のお返し
ただこの方法の場合、一律で3,000円程度のものをお渡しすることになります。つまり、20,000円以上の不祝儀を寄せてくれた人に対しては、不適当な香典返しを渡すことになってしまいます。そのため、20,000円以上の不祝儀を渡してくれた人に対しては、後日改めてお返しをすることになります。
忌明け後に贈る
香典返しは、本来は忌明け後に送るものです。「忌明けはいつか」は宗教によって異なりますが、仏教は49日・神道は50日・キリスト教は30日とされています。
この忌明けから1か月以内に、香典返しをお渡しできるようにします。
忌明け後に香典返しをお渡しする方法は、香典返しの本来の在り方からすればもっとも理想的です。上記でも述べたように一般葬でこの方式を選ぶと手間がかなり増えることにはなりますが、「より正式なやり方で行いたい」ということであれば、この方法をとるとよいでしょう。
また、「不祝儀を寄せる人が少なく、そして一件あたりの金額が多い」という特性を持つ家族葬においては、このスタイルが取りやすいといえます。
香典返しのマナー
ここからは、香典返しのマナーについて解説していきます。
・香典返しの表書き
・挨拶状に書くべきこと
・より厳格に、より丁寧にしたい場合
それぞれ解説していきます。
表書きには「志」と書く
香典返しの表書きは、「志」とするのがもっとも一般的です。ただ、地域などによって多少の違いがあり、「茶の子」「偲び草」とする場合もあります。
着ける掛け紙は、無地で、黒白の結び切りあるいはあわじ結びの水引のついたものを選びます。
お礼状の文章に注意する
「挨拶状」「お礼状」は、即日返しの場合も、また後日に郵送で香典返しを送る場合も、いずれの場合であってもつけるようにします。
即日返しの場合
地域や葬儀社によって多少見解が異なりますが、「会葬御礼=葬式に参列してくれたことへのお礼」の礼状と一体化して添えられることが多いといえます。
そのため以下の内容が書かれます。
- 本日は葬儀の参列と、ご厚志をありがとうございます
- ささやかながら返礼品を用意しました
- 書面で申し訳ありません
後日返しの場合
後日返しの場合は、「葬儀への参列」が文章に組み込まれません。また、後日のお返しの場合は、「葬式に参列していない人が送ってくれたケース」も想定されるため、下記のようにします。
- ご厚志ありがとうございます
- 滞りなく、葬式も法要も終わりました
- ささやかながら返礼品を用意しました
- 本来はお会いしてお礼を申し上げるべきところですが、書面で申し訳ありません
なお、いずれの場合でも、忌み言葉は使いません。また、時候の挨拶は組み込みません。「謹啓」などの表現は、後日のお返しの場合は使いますが、即日返しの場合は利用しません。
なお、葬送のお礼状には句読点は使いません。「読みやすくするために打つので、これを打つのは『相手は読みにくい文章は読めないだろう』という軽蔑の意味にあたるからだ」とも、「一連の葬送儀礼が止まることなく、滞ることなく進むことを表すためだ」ともいわれています。
より厳格に、より丁寧にしたい場合
上記で挙げた例は、現在一般的に取られている香典返しのやり方と、それに伴うマナーです。しかしより厳格にしたいのならば、下記のいずれかの方法が考えられます。
後日、直接会ってお渡しする
「忌明けに、相手に連絡して時間を取ってもらい、香典返しを持参して直接渡す」というやり方は、香典返しのやり方のなかでももっとも正式なものです。お互いに時間が必要な方法ではありますが、特にお世話になった人で、かつ近場に住んでいる人の場合はこの方法をとってもよいでしょう。
なおこの場合、お礼状は必要ありません。
文面を変える
「家族葬であり、来た人は少なかった。香典返しは後日行う」という場合は、不祝儀を寄せてくれた人一人ひとりに対して、異なる文面(故人がその人をどのように評していたかなど)を盛り込んだ文面でお礼状をしたためるのもひとつの方法です。
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香典返しの選び方
ここからは、香典返しの品物の選び方について見ていきましょう。
香典返しとしてふさわしいもの
まず、香典返しの品物としてふさわしいものを紹介します。
消え物
「消え物」は、「悲しみを長引かせない」「個々人の好みに左右されない」ということで、香典返しにぴったりのものです。
洗剤類などは「悲しみを洗い流す」という意味を持ちますし、お茶や海苔などの乾物類は保存もしやすく賞味期限も長いためよく選ばれています。
また、日用品としてのタオルなどを選んでも構いません。
カタログギフト
現在は、持ち帰りがしやすく、かつ好きなものを選べる「カタログギフト」も非常に人気を博しています。なお下記で「生ものはNG」としましたが、カタログギフトのなかの選択肢の1つとしてこれが含まれている場合は問題ありません。
「きちんと半返しをしたい。100,000円を頂いたのだから、50,000円のものをお返ししたい」など、香典返しが非常に高額になる場合は、選択肢はほぼこのカタログギフト一択となります。
香典返しとしてふさわしくないもの
香典返しにふさわしいものもあれば、ふさわしくないものもあります。
生もの
肉や魚は避けるのが無難です。生ものは賞味期限の問題もありますし、「生臭物」として嫌われるからです。
「精進料理」にも繋がることなのですが、葬送の席ではこれは用いません。
金額がわかるもの
ビールや商品券などの金額が明確に分かるものは、相手にとって失礼にあたるため、避けます。
一部の地域ではこれを選ぶ場合もありますが、「故人が希望していた」「地域・親族が伝統的にこれをお返しとして選んでいる」などの特別な事情がない限りは、ほかのものを選んだ方がよいでしょう。
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香典返しに関するよくある疑問・質問
最後に、香典返しに関するよくある質問に答えていきます。
高額な不祝儀をいただいた場合の香典返しの相場は?
ご親族から寄せられる不祝儀は高額になりがちです。このような不祝儀に関しては、「限度額をおおよそ15,000円程度としてもよい」という考え方を適用することができます。
つまり、30,000円を頂いても、100,000円を頂いても、15,000円の香典返しをお渡しすればよいのです。
※もちろん、厳格に半返しもしくは3分の1でお返ししても構いません。
香典返しを辞退された場合は?
香典返しを辞退された場合は、先方のお心づかいであると考えて、香典返しを無理にお渡しすることは避けましょう。特に会社などからの不祝儀の場合は、「経理上の都合で、受け取るのが難しい」という場合もあります。
ただしこの場合でも、忌明け後にお礼状を送りましょう。
香典返しをしなくても良いケース
「故人の意向で、頂いた香典はすべて慈善団体に寄付をする」「亡くなったのが一家の大黒柱で、子どもが小さく、不祝儀は遺児の養育にあてる」といったケースでは、香典返しをする必要はありません。この場合は忌明け後に、事情を簡単に記したお礼状を送るとよいでしょう。
また、「社葬であった」場合も、原則として香典返しをしなくても構いません。
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まとめ
頂いた不祝儀に気持ちをお返しする「香典返し」の金額は、「頂いた不祝儀の2分の1~3分の1程度」が相場です(不祝儀の額は、出す人の年齢や、故人との関係性で異なります)。
香典返しをするタイミングは、「当日」あるいは「忌明け後~1か月以内」です。
香典返しは「志」と表書きをして、黒白の結び切りもしくはあわじ結びの水引をつけます。挨拶状も必要ですが、即日返しと後日返しの場合では文面が異なります。より丁寧にしたいのであれば、直接会ってお渡しするか、お礼状の文面を一人ひとり変えるとよいでしょう。
香典返しには、「消えもの」「カタログギフト」がよく選ばれています。生ものや、商品券などは避けます。
高額な不祝儀を寄せられた場合は、香典返しは15,000円を上限とします。香典返しを辞退されたら、無理に渡すことはやめましょう。また、「寄付」「遺児の育成に使う」「社葬」の場合は、香典返しは必要ありません。
「頂いたご厚志にきちんと向き合いたいので、香典返しのことで悩んでいる」という方は、ぜひ「サン・ライフ」にご相談ください。