近年では、故人・遺族に合わせてさまざまなスタイルの葬儀が存在するようになりました。多様化に伴い、従来は受け取ることが一般的だった香典に関しても、辞退をする方が増えてきています。
香典辞退をすること自体は問題ありませんが、辞退を行うにあたって伝えるタイミングや失礼のない伝え方を抑えておくことは大切です。
また、香典辞退をされた参列者の中には、どうしてもという思いから香典を渡したいと考えている方もいらっしゃいます。そういった状況でも相手の負担にならないよう最大限気を配る必要があります。
この記事では、香典辞退をする際の伝え方のポイントやマナー、また、香典辞退をされた側の対応方法についても解説していきます。
目次
香典とは
香典(こうでん)とは、葬儀などで、故人への哀悼を示すためにお花や線香の代わりに贈る品物やお金のことを指します。元々は、仏教や仏式の葬儀で使われていたものですが、現在では宗教的な背景だけでなく、亡くなった方への感謝や哀悼の気持ちを表す目的として、香典を贈ることが一般化されています。
香典は、故人の家族に対して贈られます。香典袋と呼ばれる白い封筒に金額を記入し、葬儀の参列や弔問の際に手渡すことが一般的です。葬儀などに参列できない場合は、後日遺族に手渡しすることも可能です。香典は直接手渡しすることが望ましいとされていますが、手渡しが難しい場合は郵送することも可能です。香典を郵送する場合は、葬儀後なるべく早く、現金書留で送るようにしましょう。
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香典辞退とは
香典辞退とは、喪主側が参列者に対して香典の受け取りを辞退することです。香典には故人や遺族に対する弔意を示す目的とともに、葬儀に費用がかかることを踏まえた遺族への金銭的援助の意味もあります。一般的な葬儀では香典を受け取りますが、近年では、家族葬の増加など、葬儀のスタイルが変化していることから、香典辞退を選択する方も増えてきています。
香典辞退をすることは、マナー違反ではないため問題はありませんが、参列者側は「香典は送るもの」として考えているため、辞退を伝えるタイミングや様々な配慮に気を配る必要があります。
後ほど香典辞退をする際に気を付けることやマナーについてもご紹介します。
香典を辞退する主な理由
香典を辞退する主な理由としては、以下が挙げられます。
- 故人の遺志
- 宗教・宗派上の理由
- 香典返しの用意が負担になる
- 参列者に経済的な負担をかけたくない
- なるべくシンプルに身内のみで葬儀を行いたい
故人の遺志
故人が亡くなる前に、香典は受け取らないという意思を伝えている場合は、故人の遺志を尊重して香典辞退するケースがあります。
宗教・宗派上の理由
日本の香典は主に仏教の葬儀や法要で贈られる習慣ですが、異なる宗教の信仰者は自身の信仰に基づいて、香典を辞退する場合があります。また、宗教に属さない人の中にも、香典を受け取ることに特別な意味がないと考えている場合、香典を辞退する場合があります。
香典返しの用意が負担になる
香典には故人や遺族への弔意を示す目的とともに、葬儀に費用がかかることを踏まえた金銭的援助の意味もあります。しかし、ご遺族は葬儀後も法要や様々な手続き、お墓の手配などの手続きに忙しいため、その中で香典返しまで手が回らないという理由から辞退されることがあります。
また、社葬などでも、事務や税務処理上の負担を軽減するため香典を辞退するケースもあります。
参列者に経済的な負担をかけたくない
香典は参列者に経済的な負担をかけることになる場合もあります。そのため、弔問客に負担をかけたくないという配慮から、香典を辞退する人もいます。
なるべくシンプルに身内のみで葬儀を行いたい
身内のみで静かに葬儀を行いたいという理由から香典を辞退するケースも多くあります。近年では故人と親しかった友人・知人で葬儀を行う「家族葬」が増えてきており、さまざまな面で負担を生む香典を辞退するケースが増えています。家族葬は費用を抑えられることから、香典の目的の1つである金銭的援助の必要性が低くなっていることも、辞退が増えている要因だと考えられるでしょう。
香典辞退を伝えるタイミング
香典辞退する際には、相手に香典辞退の意思を伝えるタイミングに気を配る必要があります。ここでは、香典辞退を伝えるタイミングについて3つのケースに分けて解説します。
- 葬儀の案内状を送る際に伝える
- 電話で伝える
- 葬儀会場で伝える
案内状を送る際に伝える
葬儀前に香典辞退の意向を伝える方法として、案内状に記す方法があります。文面を作成する際には、「故人の遺志により、御香典は辞退させていただきます」といった趣旨の文言を書き添えておきましょう。香典辞退はなるべく早いうちから参列者に伝えることが重要なため、案内状で知らせることは適切な方法と言えます。また、供花や供物も辞退する場合は、その内容も併せて案内状に記載しておきましょう。文面の作成に悩む場合は、葬儀社に相談すると文案を考えてくれることもあります。
電話で伝える
電話で伝える場合は、葬儀の日時を伝える際に、香典辞退するとの意向を一緒に伝えましょう。葬儀の日時を伝えたあと、「故人の生前の意向で香典は受け取らない形で考えております」と辞退する趣旨をしっかり伝えましょう。参列していただける場合は、感謝の意を示し、香典に関しては失礼のない程度に、気持ちだけで十分であることを伝えることが大切です。
葬儀会場で案内する
葬儀に受付を用意している場合、会場でアナウンスする方法も考えられます。この場合、口頭でアナウンスすることが一般的ですが、葬儀社に相談すれば受付付近に看板を設置してもらえることもあります。
ただし、この場合は会場に来るまで辞退の意向がわからないため、参列者に手間をかけてしまいます。参列者のことを考えると、他の方法を活用しなるべく事前に伝えておくことが好ましいです。
参列者以外は葬儀後に伝える
参列者以外に対しては、葬儀後に送る訃報にて香典辞退の意向を伝えます。特に家族葬の場合、故人と関わりがあった方全てが会葬者というわけではありません。そのため葬儀後に弔問したいと考える方もおり、この場合はしっかりと訃報にて意向をアナウンスしておくことが大切です。
この場合は、「誠に恐縮ではございますが、御香典や供花、供物、葬儀後の弔問はお断り申し上げます」という旨の一文を添えるようにしましょう。タイミングに決まりはなく、葬儀の1〜2週間後から遅くとも四十九日までに訃報を送ることをおすすめします。
香典辞退の伝え方(例文付き)
関係性によって香典の伝え方は様々にありますが、ここでは一般的な辞退の伝え方についてご紹介します。
- 友人・知人への伝え方
- 職場への伝え方
友人・知人への伝え方
友人・知人へ香典辞退を伝える場合には、ある程度はっきりと伝えても問題ないでしょう。気の知れた友人であれば、改まった文章を作成する余裕がない場合、フラットな文章でも問題ありません。まずは要点だけでもしっかりと伝えることが大切です。
友人へ訃報を伝えるにあたっては、メールを活用する方法も考えられます。文章やメールで伝える際には、「故人の遺志により、御香典・供花などのお気遣いは辞退させていただきます」といった趣旨の文言を添えれば基本的には問題ありません。
また、故人の友人・知人に伝える場合は、少しフォーマルな書き方が好ましいかもしれません。伝える内容としては、亡くなった日、葬儀の日程や会場の詳細、参列の可否、香典辞退の有無を伝えると好ましいでしょう。
故人の友人・知人へ伝える場合の例文
(故人の名前)の娘〇〇です
本日午前〇時に母が亡くなりました
生前のお付き合いに感謝申し上げます
以下に葬儀の日程を記載させて頂きます。
通夜:2023年〇月〇日 午後18時開始
告別式:翌日の〇月〇日午前〇時より〇〇区の〇〇ホール
葬儀式:2023年〇月〇日 午後〇時開始
葬儀会場:〇〇県〇〇市〇〇ホール
また、誠に勝手ではございますが、御香典、弔電、御供物などのご厚志は辞退させていただきます
職場への伝え方
職場へ伝える場合であっても、知人・友人の場合と同様に、辞退する旨を明確に伝えるようにしましょう。また、職場によっては社員が亡くなった際の手続きが決められていることもあります。なるべく早期に香典辞退の意向を上司や専門部署に伝えておくと、スムーズにやり取りを進められるでしょう。
葬儀については連絡をしていなくても、職場の方が急に来たり、香典が送られてきたりする可能性があるため、辞退の意思があるのであれば早期に・確実に事前連絡しておくようにしましょう。
会社へ連絡をする場合、以下の内容を含めると適切です。
・誰が亡くなったのか
・参列してもらう場合は日時や会場
・お葬式の形式
・忌引き休暇は何日まで取得するのか
・香典はどうするのか など
会社にメールなどの文面で伝える場合の例文
平素よりお世話になっております。◯◯部△△課の[あなたの名前]です。
令和○月○日に◇◇が逝去いたしました。
葬儀に参列するため忌引き休暇を取得したく存じます。忌引き休暇につきましては〇月〇日から〇日までいただければと思います。こちらから必要な手続きなどがあれば教えていただけますでしょうか。
葬儀に関しましてもご連絡いたします。
通夜:2021年〇月〇日
葬儀式:2021年〇月〇日
葬儀会場:〇〇県〇〇市〇〇ホール
葬儀会場電話番号:◆◆◆-◆◆◆◆-◆◆◆◆
尚、葬儀は近親者のみの家族葬で執り行う予定です。
また誠に勝手ではございますが、故人の遺志により、一般参列、御香典、弔電、御供物などに関しましてはご辞退申し上げます。
恐れ入りますが何卒よろしくお願い申し上げます。
[あなたの名前]
休暇中の連絡につきましては下記の番号へお願いします。
電話番号:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
敬具
会社に電話や直接伝える場合の例文
お疲れ様です。◯◯部△△課の▢▢▢▢です。昨晩◆◆が亡くなりましたため、ご連絡させて頂きました。
葬儀は、◆◆の希望で、近親者のみの家族葬で執り行う予定です。勝手ではありますが御香典などのご厚志につきましても、大変失礼ながら辞退させていただきます。
忌引き休暇につきましては〇月〇日から〇日までいただけますでしょうか。こちらから必要な手続きなどあれば教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。
それでも香典を渡したいと言われた場合
香典辞退の意思を伝えているにも関わらず、どうしてもという参列者の思いから香典を渡したいと申し出ている方に対しては、頑なに拒むことは避けるようにしましょう。
あまり強硬な態度を見せてしまうと相手を不快にさせてしまい、人間関係に影響が出てしまうかもしれません。やむを得ず受け取る際には、他の参列者とのトラブルが発生しないように人目のつかないところで対応するようにしましょう。
この場合の香典返しは、辞退の意思を伝えているのであれば不要ですが、特に金額が大きい場合については、頂いた額の半額程度を目安とした香典返しをするといいかもしれません。香典辞退を伝えている場合、香典返しは必須ではないため、基本的には、後日メールや電話などで感謝の気持ちを伝えておくといいでしょう。
やむを得ず香典を受け取った場合
辞退の気持ちを伝えていたとしても、香典を受け取ってしまうことはあります。こうしたケースにおいての対応に正確なマナーはありませんが、受け取ってしまった場合は、有り難く頂き後日メールや電話などで感謝の気持ちを伝えておくといいでしょう。
香典返しの相場
香典返しは、故人への弔意を示すために贈られた香典に対するお礼と、忌明けの報告を兼ねて品物を贈ることを指します。一般的には、忌明けの法要後1ヶ月以内に香典の3分の1から半分程度の金額相当の品物を贈ります。当日返しと呼ばれる方法では、通夜や葬儀の当日に参列者全員に同じ品物を渡すこともあります。
また、参列者からお供物をいただいた場合には、金額の目安も通常の香典返しと同様に考えます。香典返しの品物には厳格な決まりはなく、相手の立場や関係性、地域の習慣によっても異なるため、相手の気持ちを考慮して適切な品物を選ぶことが大切です。金額を意識したものよりも、感謝の気持ちを込めて心のこもった香典返しを行うことが、喪主や家族の方々にとっても心づかいのある行動となるでしょう。
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香典辞退の連絡があった場合の対応(参列者向け)
ここまで、喪主側の香典辞退についてご説明してきましたが、ここからは香典辞退をされた参列者の方の対応方法についてご紹介していきます。
香典辞退は葬儀前に伝えられるケースが一般的ですが、中には葬儀当日や葬儀後に伝えられる場合もあります。突然香典辞退を伝えられた場合や、香典の準備をした後に香典辞退を伝えられた場合にどのような対応をすることが適切なのか、解説していきます。
万一、香典辞退をされた場合は、受け取りたくない気持ちや事情があるかもしれませんので、まずは相手の気持ちを尊重し、香典辞退を受け止めるよう心掛けましょう。
香典のみ辞退されている場合
香典のみを辞退された際、代わりに「お供え物」を贈ることがあります。これは香典の代わりとして、故人への供養や感謝の気持ちを表す方法です。
お供え物は香典のように金銭的な要素がなく、代わりに具体的な品物を贈ることで、故人への思いやりを示す手段となります。香典のみ辞退された場合には、遺族や喪主に直接お供え物を手渡すこともあれば、葬儀後に送付する場合もあります。お供え物には線香や菓子類などが一般的に選ばれます。また、生花や果物、缶詰などの盛り付け物、線香、ろうそく、菓子類なども供物として選ばれることがあります。
香典に加えて供花や供物も辞退されている場合
香典に加えて供花や供物も辞退されている場合、参列者は特に何かを準備する必要はなく、
遺族が供花や供物を受け取らないことを尊重し、その代わりに直接お声をかけたり、故人の冥福を祈るために葬儀や告別式に参列することが適切な対応となります。葬儀や告別式に参列することで、故人や遺族に対する敬意を示すことができるため、遺族にとって心の支えとなるよう、心からの哀悼の意を伝えることを意識しましょう。
参列も出来ず香典も辞退されている場合
遺族が香典を辞退する意向であり、葬儀にも参列できない場合、弔電を送って弔意を示す方法があります。葬儀や告別式に参列できない状況であっても、弔電を利用することで、心からの哀悼の気持ちを伝えることができます。弔電とは、手紙やはがきを使って故人や遺族に対する哀悼の意を表すメッセージを送ることです。手紙やはがきを選ぶことで、直接顔を合わせることが難しい場合でも、思いを伝えることができます。
弔電の文面には、故人や遺族へのお悔やみの言葉や哀悼の意を表す言葉を綴ると良いでしょう。丁寧な言葉遣いや暖かいメッセージを添えることで、相手に対する思いやりが伝わります。手紙やはがきに加えて、最近では電子メールやSNSを利用して弔電を送ることも一般的になっています。
香典辞退のメリットとデメリット
最後に香典辞退をするメリット、デメリットについてお話します。
香典辞退のメリット
①香典返しの負担が減る
香典を受け取ると、それに対して香典返しをしなければなりません。香典辞退をすることで香典返しの手間や負担を減らすことができます。
②参列者に経済的な負担をかけない
参列者は葬儀に参加するだけでなく、香典を渡す負担もあります。香典を辞退することで、参列者に経済的な負担をかけずに済みます。
香典辞退のデメリット
①葬儀でかかる費用を遺族が全額負担する必要がある
香典は費用の一部を補填する役割があるため、香典をいただくことで葬儀の費用を一部カバーすることができますが、香典を辞退すると葬儀にかかる費用を遺族が全額負担することになります。現在では家族葬などの小規模で行われる葬儀が増えているため、経済的負担を比較的軽減することができますが、葬儀でかかる費用は決して安価ではないため、香典辞退に関してもご家族でよく相談し決定することが好ましいでしょう。
まとめ
葬儀のスタイルの多様化に伴い、香典辞退を選択する方が増えてきています。香典返しをする際には、事前にしっかりとアナウンスしておくことが重要でしょう。また、辞退の意思を伝えていたにもかかわらず香典を渡された場合、かたくなに拒否をするよりは相手の想いをくんで柔軟に対応する方が望ましいといえます。香典辞退は悩むことも多いため、専門家である葬儀社に相談するのがおすすめです。
「サン・ライフ」では、香典に関するご相談にも24時間365日体制で対応しています。専門のスタッフが皆さまの不安に対して24時間いつでも対応しており、相談・ご連絡は無料です。故人さま・ご家族さまの「想い」を大切にすることにこだわって、スタッフが心を込めてお手伝いしています。香典以外のことに関しても、葬儀に関することであれば何でもご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。