葬儀で僧侶に足を運んでもらった際は、お布施を渡す必要があります。お布施とは読経や、戒名をつけてもらったことに対する謝礼としての意味合いがある金銭です。お布施を入れる封筒や包み方、渡し方などには決まりがあります。お布施の作法は細かく決まっているため、悩んでしまう人もいるかもしれません。
この記事ではお布施を包む封筒のマナーや、選び方、表書き・裏書きの方法、お渡しする際の注意点などを解説します。お布施で必要な奉書紙や切手盆がない場合の対策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
お布施とは
お布施は法事や法要の際に僧侶に渡す金銭です。まずはお布施の目的や香典との違いを解説します。
お布施の目的
お布施は労働の対価や報酬ではなく、僧侶に対する感謝を表すために渡す金銭と位置付けられています。お布施は仏事で欠かせないものとされているため、僧侶に読経を上げたり戒名をつけたりしてもらう場合は、その謝礼としてお布施を用意しましょう。
また、お布施は寺院への寄付としての意味もあります。寺院の運営にかかる費用は主にお布施や寄付によって支えられているため、お世話になっている寺院を支援する気持ちを込めてお布施を渡します。
香典との違い
香典(こうでん)もお布施と同じく仏事の際に用意される金銭ですが、渡す相手や意味合いが異なります。香典は僧侶ではなく、遺族に渡す金銭です。香典はお悔やみの気持ちを込めて、故人の霊前(祭壇や魂などの前)に供えます。
香典を渡す際は不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)に包むことがマナーであり、不祝儀袋とは法事や弔事などで使うための専用の封筒です。不祝儀袋の表書きは宗派によっても異なりますが、一般的に四十九日前までなら御霊前と書き入れます。四十九日を過ぎた後なら、御仏前や御佛前などの表書きが用いられます。
ただし、例えば浄土真宗では死後速やかに仏になる(往生即成仏)と考えられていることから御霊前は使いません。宗派によって適切な表書きが決まっているため事前に確認しておくとよいでしょう。
お布施を包む袋の選び方
お布施の包み方には形式が定められています。仏事ではお布施を奉書紙で包むのが正式なマナーです。奉書紙がない場合は白い封筒を用いる方法もあります。ここでは、お布施を包む袋の選び方や奉書紙、封筒を用いる場合をそれぞれ解説します。
奉書紙(ほうしょし)を使う
奉書紙は和紙の一種です。古くは公文書の作成で使われ、最高級の公用紙とされていました。和紙の中でも分厚くしっかりしている点が奉書紙の特徴です。現在はさまざまなシーンで奉書紙が使われています。
お布施を包む紙には奉書紙を用いるのが伝統的で正式なマナーとされています。奉書紙で包む際は、中包みに半紙も使用してください。包み方の手順は以下のとおりです。
- ・お布施として準備したお札を半紙で包んで中包みを作る
- ・ツルツルしている側が表面になるように奉書紙を置き、真ん中に中包みを置く
- ・奉書紙を左、右の順で重ねて三つ折りにする
- ・奉書紙の下部分を上に折り上げ、上部分を下に折って被せる
奉書紙は慶事でも用いられますが、慶事との差別化のため上記と反対の手順で折られます。また、弔事では奉書紙を1枚しか使いませんが慶事では2枚使います。
白い封筒を使う
奉書紙がない場合は白い封筒を使用しても構いません。お札が外から透けて見えないよう、厚手の封筒が望ましいでしょう。封筒は柄や郵便番号欄の印字などがない、無地で真っ白なものを選びます。
お布施を入れる封筒には基本的に水引が必要ありません。水引には故人を供養する意味合いがありますが、お布施は僧侶への感謝の気持ちを形にしたものなので水引は不要です。また、二重封筒を使用すると不幸が重なることを連想させることからマナー違反になります。お布施に二重封筒を用いることは避けましょう。
お布施を包む封筒の書き方
お布施を包む封筒では表書きや裏面の書き方に決まりがあります。封筒には適切な表書きを書き入れ、裏面には必要項目の記載が必要です。それぞれ解説します。
表書きの書き方
お布施の封筒の表書きにはお布施や御布など、封筒を僧侶にお渡しする際の目的を書き入れます。ただし、読経や戒名に対するお布施であっても、読経料・戒名料の表現は避けるようにしましょう。お布施は前述したように、僧侶の労働への対価ではなく、あくまでも感謝の気持ちを表すものとされているからです。例えば○○料の表現を使用すると何かに対する代金として捉えられてしまいます。
表書きの下には喪主または施主の氏名、または苗字を記載してください。フルネームを記載すると丁寧な印象になります。個人ではなく家からお布施を出す場合は、苗字のみを記載しても構いません。○○家と書き入れるケースが一般的です。
裏面の書き方
お布施を包む封筒の裏面には、一般的に以下の必要項目が記載されます。
- ・お布施として包んだ金額
- ・お布施を包んだ人の名前
- ・お布施を包んだ人の住所
ただし、金額や住所に関してはあえて記載しないケースもあります。お布施は僧侶に対して感謝の気持ちを伝えるものだからです。とはいえ金額は、包んだつもりの額と実際に入っていた額の間違いを防ぐためにも記載しておくことがおすすめです。
裏面は縦書きで記入するため、住所の記載には漢数字を使用します。お布施の封筒に金額を記載する際は、旧字体の漢数字を用います。旧字体の漢数字は以下のとおりです。
数字 |
旧字体 |
一 |
壱 |
二 |
弐 |
三 |
参 |
四 |
肆 |
五 |
伍 |
六 |
陸 |
七 |
漆 |
八 |
捌 |
九 |
玖 |
十 |
拾 |
千 |
仟 |
万 |
萬 |
お布施の金額は金○○圓也の形で記載されます。圓は円の旧字体です。例えばお布施として5万円を包んだ場合は金伍萬圓也と表されます。四は死を、九は苦を連想させるとされているため、弔事ではできる限り避けるべきでしょう。
お布施を封筒に包む際のマナー
お布施を封筒に包む際はお札の状態や向き、表書きに使う墨の濃さなどに関してマナーが決まっています。それぞれ解説します。
新札を用意する
お布施で渡すお札は新札を用意しましょう。香典では新札を避けるべきとされていますが、お布施には新札が適しています。お布施は香典と異なり、お悔やみの気持ちを表すものではないためです。お布施は僧侶へのお礼として渡す金銭なので、感謝の気持ちを表すためにも新札を準備します。新札を用意できない場合は、できる限り使用感がなくきれいなお札を使用してください。
香典は準備する余裕もなく駆けつけたことを示すため、ある程度の使用感があるお札を包みます。香典に新札を使ってしまうと、不幸が起こることを予期してあらかじめ準備していたような印象となってしまうからです。香典を包む際に新札しかない場合は、お札の真ん中に一度折り目をつけてから包むとよいでしょう。
お札を封筒に入れる向きに注意する
慶事や弔事で封筒に入れるお札には正しい向きがあります。お布施を封筒に入れる際は、お札に描かれた肖像画が封筒の表側にくるように入れ、肖像画を封筒の上側になるように入れることがマナーです。お札は角を揃えて丁寧な印象になるようにしましょう。
一方、香典のお札を封筒に入れる場合、お布施とは反対にお札の肖像画が封筒の裏側になるように入れ、肖像画が封筒の下側になるようにしてください。お札を裏向き、下向きに入れることで肖像画の顔を伏せ、訃報に対する弔意を表すとされているからです。
基本的に慶事の際はお札の顔を表に、弔事であれば裏に向けて入れます。お布施のお札を封筒に入れる向きは慶事と同様なので違和感があるかもしれません。しかし、お布施はあくまでも僧侶に渡すお金であり、お寺に不幸があったわけではないため、お札を裏向きにする必要はないのです。
表書きは濃墨で書く
お布施の表書きは薄墨(うすずみ)ではなく、濃墨(こずみ)で記入します。濃墨は通常の黒色、薄墨はそれよりも薄くグレーに近い色合いの墨です。お布施は僧侶に感謝を伝えるためのものなのでしっかりと準備したことを示せるよう、表書きに濃墨を用います。表書きを書き入れる際は市販の筆ペンを使っても構いません。
一方、香典は薄墨の使用が一般的です。弔事では墨をする暇もなく慌てて駆けつけたことを示すため、薄墨を使うことがマナーとされています。また、薄墨は悲しみによる涙で墨が薄くなったことを表すものでもあります。筆ペンの中には薄墨タイプのものもあるので、香典の表書きの記入にも便利です。
お布施と戒名料は別に包む
お布施と戒名料は一緒にせず、別に包む必要があります。お布施として包む金銭は基本的に僧侶の読経に対する謝礼です。戒名や卒塔婆に対して金銭を渡す場合は、別の封筒に分けてください。お布施以外に僧侶に渡す金銭は以下のとおりです。
戒名料 |
戒名(故人の仏弟子)をつけていただいたことに対する謝礼 |
御膳料(食事代) |
僧侶が法事や法要の後の会食に参加しない場合に渡す金銭 おもてなしの代わりとして渡される |
御車料(お車代) |
僧侶が葬儀会場まで足を運んでくれたことに対する謝礼 電車やバス、タクシーなどにかかる交通費 |
卒塔婆料(塔婆料) |
卒塔婆の用意に対する謝礼 卒塔婆とは故人の供養のために立てる縦長の木板のこと |
寺院や地域によってはお布施と戒名料をまとめて包んでもよいとされているため、事前に確認しておきましょう。
お布施の封筒をお渡しする際の注意点
お布施では封筒の形式や包み方と同様に僧侶へお渡しする際のマナーも大切です。お布施の渡し方に関する注意点を解説します。
お布施の渡し方
お布施を渡す際はタイミングと場所が重要です。お布施を渡すタイミングに厳密な決まりはありませんが、適切な頃合いを見計らう必要があります。一般的なタイミングは葬儀の前、または読経の終了後です。葬儀が始まるまでに僧侶と顔を合わせる時間があれば、挨拶と同時にお布施を渡しておきましょう。
葬儀の前に時間がなければ、僧侶が読経を済ませてひと息ついたタイミングでお布施を渡すとよいでしょう。僧侶の控室を訪れ、お勤めへの感謝を述べつつお布施を渡します。葬儀の日にお布施を渡せなかった場合は、後日僧侶に直接手渡しに行く必要があります。僧侶が式場を離れるとお布施を渡す手間が大きくなってしまうため、できる限り速やかに渡すのがおすすめです。
お布施を渡す際は切手盆に乗せ、両手をついて一礼します。僧侶から見て文字が読める方向に封筒を向け、両手で渡します。お布施を渡す際は机を跨がず、傍で正座し一礼してから渡してください。お布施の封筒が複数ある場合は重ねて渡します。
お布施の封筒を重ねる順番
お布施を僧侶に渡す際は、他にも戒名料や御膳料、御車料、卒塔婆料などを同時に渡す場合があります。お布施やその他の金銭は前述したように、それぞれ別の封筒に包んでおきましょう。僧侶にお渡しする際は、複数の封筒を重ねて切手盆に乗せます。封筒を重ねる場合はお布施が一番上にくることが大切です。
【お布施の封筒の重ね方の例】
上からお布施、卒塔婆料、戒名料、御車料、御膳料の順
お布施を手渡すときには「どうぞお納めください」と言葉を添えることで、より丁寧な印象となります。
切手盆がない場合は袱紗で代用する
お布施を乗せるための切手盆がない場合は袱紗(ふくさ)で代用可能です。袱紗とは冠婚葬祭の場で金銭を包むための布や布製の入れ物を指します。袱紗には風呂敷タイプのものと、金封タイプのものがあります。また、袱紗にはさまざまな色のものがありますが、葬儀では紺や緑、灰色などの落ち着いた寒色系を選びましょう。
基本的にお布施は封筒のままでは持ち歩かず、袱紗に入れて運ぶのがマナーです。封筒を袱紗に入れることで傷みや汚れを防げます。また、僧侶への敬意を表す意味合いもあります。僧侶にお布施を渡す際、封筒を乗せるための切手盆がなければ袱紗でも代用可能です。切手盆の代わりに袱紗に封筒を乗せ、表書きが僧侶から読める向きにして手渡しましょう。
まとめ
葬儀で僧侶に手渡すお布施には、包み方や渡し方に細かい作法が決められています。お布施の作法をきちんと守ることで僧侶への感謝の気持ちをしっかりと伝えられます。お布施は同じく葬儀の際に渡す香典と似ていますが、違いを知っておくことでマナー違反を防げるでしょう。
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