身内が亡くなったとき、遺族は悲しい気持ちを抱えながらもすみやかに葬儀の準備に取りかからなくてはなりません。しかし神道の家の場合は、どのような手順で葬儀を進めればよいか、仏教の葬儀と何が異なるかなど迷う部分が多いでしょう。
そこで本記事では、神道における葬儀の流れやマナーなどを解説します。聞き慣れない言葉も多い神道の葬儀について理解し、葬儀の準備を始めましょう。
神道の儀式とは
神道は日本固有の宗教で、仏教とは発祥地も信仰対象も異なります。神道の儀式についてどのような宗教かに触れつつ、神道と仏教との違いも解説します。
神道とは
神道は日本で生まれた宗教で、さまざまな神を信仰する多神教です。かねてから日本には「森羅万象あらゆるものに神が宿る」という考えがありました。神道の神様は「八百万の神」と呼ばれ、自然から生まれた神様もいれば、実際にいた人物が神格化した神様もいます。
日本最古の書物「古事記」には神道に関連する話がいくつか見られますが、神道の起源は有史以前とされています。国内の代表的な神道は、大きく分けて以下の5つです。
- ・神社神道
- ・国家神道
- ・皇室神道
- ・教派神道
- ・復古神道
また代表的な神道の神社には、出雲大社や伊勢神宮などが挙げられます。
神葬祭とは
神葬祭とは「穢れ(けがれ)」を祓う儀式のことです。穢れは精神的・肉体的と両方が衰え生命力が弱まった状態を意味します。神道における「死」は重大な穢れで、祓わなければ充実した生活を取り戻せないといわれています。穢れを祓い清めて再び健やかに日常生活を送れるよう、神葬祭を取り行うことが大切です。
また神葬祭には「先祖崇拝」の考え方も組み込まれています。先祖崇拝とは、亡くなった祖先が自分たちを守ってくれるように崇めることです。多神教を認める神道では、故人は祖先神となり神さまの世界へ戻ると考えられています。
神道と仏教の違い
神道と仏教との大きな違いは「民族宗教」か「普遍宗教」です。神道は日本固有の民族宗教で、仏教は普遍宗教です。神道をはじめとする民俗宗教には、教えや経典はありません。
一方、仏教のような普遍宗教には明確な経典や信仰対象があります。以下に神道と仏教の主な違いをまとめました。
神道 |
仏教 |
|
発祥地 |
日本 |
インド |
信仰対象 |
八百万の神 |
仏陀(釈迦如来)や菩薩 |
目的 |
神の加護により自然の恵みを得て、災害を鎮められるよう願うこと |
仏陀の教えに従い悟りを得て、輪廻転生の輪から抜け出すこと |
聖職者の呼び方 |
神主・巫女 |
僧侶・尼 |
聖職者の役割 |
祈祷や社務 |
説法や勤行 |
建物 |
神社 |
お寺 |
参拝の作法 |
二礼二拍手一礼 |
数珠をもって合掌 |
お墓を建てる場所 |
公営霊園や民営霊園などの墓地 |
お寺や共同墓地 |
神道の儀式の流れを解説
神道の葬儀に当たる神葬祭について、逝去当日から神葬祭1日目、2日目までと具体的な流れを解説します。仏教の葬儀とは違って聞き慣れない言葉も多いとかと思いますが、当日に困らないよう詳細を確認しておきましょう。
帰幽奉告(きゆうほうこく)
帰幽奉告(きゆうほうこく)とは、神棚や祖霊舎などを封印することです。封印する目的は、祖先を死の穢れから守るためです。帰幽奉告した段階で、祖先に故人の死を報告したことになります。
訃報を受けたら神棚や祖霊舎扉を閉じて「神棚封じ」と呼ばれる白い半紙を貼りましょう。
枕直しの儀
枕直しの儀とは遺体を自宅に安置して枕飾りをし、北枕にして寝かせて冥福を祈ることです。自宅にご遺体を置けない場合は、専用の施設にある安置室を使う場合もあります。
基本的な枕直しの儀では、故人の顔に白い布をかけ、周囲に屏風や守り刀を立てます。続いて米や酒と、故人が日頃好んで口にしていた食べ物を用意しましょう。
納棺の儀
納棺の儀ではご遺体を棺に納めます。具体的な流れは以下のとおりです。
- ・末期(まつご)の水でご遺体の口を湿らせる
- ・湯灌(ゆかん)し、死化粧(エンバーミング)を施す
- ・死装束を着せる
- ・副葬品を納める
男性と女性は死装束(神衣)が異なります。故人が男性の場合は白い狩衣と烏帽子を被せ、笏(しゃく)を手に持たせます。女性の場合は白い小袿を着せて、扇を手に持たせます。
しかしご遺体が死後硬直により固まっているときは、死装束への着替えが困難です。そのため近年は、ご遺体の上から衣装をかけるだけのケースも見られます。
通夜祭
通夜祭には故人の安らかな眠りを祈り、家を守ってくれることを願う目的があります。通夜祭が始まると神職が祭詞や祭文を奉上し、遺族や参列者は「玉串」を奉って拝礼します。玉串とは、紙の飾りのついた枝のことです。玉串には主に榊が使われ、麻紐で「紙垂」が付けられます。
遷霊祭(せんれいさい)
遷霊祭(せんれいさい)の目的は、故人の魂を仏葬の位牌に当たる「霊璽(れいじ)」に移すことです。
故人の魂を移すにあたって「夜」を再現するため、葬儀会場の明かりが消され厳かな雰囲気で遷霊祭が進められます。神職により「遷霊詞(せんれいし)」が奏上され、明かりがつけられた後に遺族と参列者は霊璽の前に集まります。音を立てずに「二礼二拍手一礼」をして故人の冥福を祈りましょう。
葬場祭
神葬祭のメインともいえる葬場祭は、主に以下の三つで構成されています。
- ・弔辞の奉呈
- ・弔電の代読
- ・祭詞奏
玉串奉奠は、仏教の葬儀でいうところの焼香に相当するものです。玉串奉奠は祭詞が奉上される中で行われ、自分の心を玉串に託して神様に奉げることで故人の安らかな眠りを祈ります。
火葬祭
火葬祭とは、火葬前に故人を偲ぶ儀式です。神職が祭詞を奏上する中で、遺族や参列者は玉串を奉って故人と最期の時間を過ごします。
火葬祭が終わったらご遺体は火葬されます。火葬後には骨上げを行いますが、骨上げの手順やマナーは仏教の葬儀と変わりません。
火葬の流れを下記でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
埋葬祭
埋葬祭とは、お墓に遺骨を埋葬することです。かつては火葬当日に遺骨をお墓に埋葬していました。一方、近年の埋葬祭は一般的に仏教の「四十九日法要」に相当する「五十日祭」で行われます。なお「墓石が間に合わない」「遺族のスケジュールが合わない」などの場合は一年祭で埋葬祭を行うケースも見られます。
帰家祭
火葬祭または埋葬祭を終えたら、遺族は自宅に戻り体を塩と手水で清めます。その後、神葬祭に関わった神職や世話役に感謝して「直会(なおらい)の儀」という食事会を開きます。
持ち帰った霊璽や遺影、遺骨などは、神棚や祖霊舎に納めましょう。神棚封じは埋葬祭が終わった後を目安に取り外し、封印を解きます。
神道の儀式のマナー
神葬祭の流れは仏教の葬儀と異なる部分があります。同じくマナーについても神葬祭と仏教の葬儀では異なるため注意してください。ここでは服装や香典、遺族にかける言葉などをはじめとして神葬祭のマナーを解説します。
服装
服装については、仏教の葬儀と神葬祭との違いはほぼありません。男性は黒いスーツやネクタイを着用します。女性も黒のスーツやワンピースなどで参列し、メイクやアクセサリーは華美にならないように配慮しましょう。男性・女性とも、清潔感を意識し、殺生を思わせる動物の革や毛などの素材を使ったアイテムの着用は控えてください。
また故人が亡くなってから時間が経つと、神式の儀式の案内に「平服でお越しください」と記載されているケースがあります。その際は喪服ではなく、男女ともダークスーツなど落ち着いた色やデザインの服を着用します。
また近年、少人数で行う家族葬を行うケースが増えてきました。家族葬における服装や身だしなみのマナーについては、以下の記事も参考にしてください。
香典
そもそも神道では「香典」という言葉を使いません。神道で香典に当たるのは「玉串料(御玉串料)」で、表書きには「御霊前」「御玉串料」などと記載します。蓮の花が描かれた不祝儀袋は、仏教用なので使用しないように注意してください。
また玉串料の相場は仏教の香典と同じと考えてよいです。親族が亡くなったときの玉串料の相場を、以下に故人との関係別に示しているので参考にしてください。
- ・自分の実の親や、義理の両親が亡くなった場合:50,000~100,000円
- ・自分の兄弟姉妹が亡くなった場合:50,000円程度
- ・自分の祖父母が亡くなった場合:10,000~30,000円
- ・その他親族が亡くなった場合:3,000~20,000円
以下は、親族以外が亡くなったときの玉串料の相場です。
- ・上司が亡くなった場合:5,000~10,000円
- ・会社関係者やその家族、恩師、友人知人が亡くなった場合:3,000~10,000円
かける言葉
死は神道にとって重い穢れですが、悲しむべきものではありません。神道の世界では、故人は祖先神になり神さまの世界へ戻るとされているためです。したがって神葬祭で遺族に「お悔やみ申し上げます」と声をかけることは不適切になります。
「安らかに眠られますようお祈りいたします」など、宗派を問わず使える表現へ言い換えましょう。
また「往生」「冥福」「成仏」などの言葉は仏教で使う言葉のため、神葬祭では使わないようにしてください。
手水の作法
手水は心身を清める儀式です。以下に手水の作法を示しました。
- 右手で柄杓を持ち、左手に3回水をかける
- 柄杓を左手に持ち替え、同じく右手に3回水をかける
- 再び右手で柄杓を持ち、左手で受けた水で口をすすぐ
- 柄杓を元の位置に戻し、用意された懐紙で口を拭く
葬儀に参列する方の心身を清める大事な儀式なので、しっかり覚えておきましょう。
拝礼の作法
神道での拝礼は「二礼二拍手一礼」が基本です。神葬祭以外にも、拝礼は大晦日や新年などのお参りで求められるマナーなので、こちらもきちんと理解しておきましょう。拝礼の作法は以下のとおりです。
- 祭壇や神棚などの前に進み、お賽銭を入れる
- 姿勢を整える
- 90度の角度で、2回お辞儀をする
- 胸の高さで両手を合わせる
- 右手を少し下へずらして、2回拍手する
- 90度の角度で、1回お辞儀をする
神葬祭を含め、弔事で拝礼する際は拍手の音を立てないのがマナーです。
神職へのお礼
神葬祭を取り仕切ってくれた神職へのお礼については、特に決まった名称がありません。表書きには「御祭祀料」や「御礼」「御祈祷料」「玉串料」などと濃墨で書きます。なお玉串料は「慶事」「弔事」のどちらでも使用することができます。
まとめ
神道と仏教では葬儀の流れやマナーが異なるので注意してください。神道の葬儀は神葬祭と呼ばれ、帰幽奉告から始まり火葬祭または埋葬祭で終わります。神葬祭の最後には帰家祭を行い、神職を労る宴会を開き、神棚や祖霊舎に遺骨や遺影を飾りましょう。
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