
数珠には、仏教の法具としてだけではなく、持ち主を守るお守りなど、さまざまな意味が込められています。しかし、いざ数珠を持とうと思っても、どのように選び、扱えば良いのかが分からない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、数珠が持つ深い意味から、種類や選び方、持ち方までを詳しく解説します。この記事を読めば、あなたにぴったりの数珠と出会い、正しく扱えるようになるでしょう。
数珠が持つ意味とは?
数珠は、単に念仏の回数を数える道具というだけではありません。そこには、持つ人の心に寄り添う、さまざまな意味が込められています。
具体的にどのような意味があるのかを、以下の表で確認してみましょう。
役割・意味 | 説明 |
法具としての役割 | 数珠は「珠数」や縁起の良い「寿珠」とも表記される、古くから伝わる仏具(法具)です。仏事において欠かせない道具として、全国的に広く普及しています。 |
念仏の回数を数える道具 | お経や念仏を唱える際、その回数を数えるためのカウンターとして用いられます。この役割から「念珠(ねんじゅ)」という別名でも知られています。 |
煩悩の消滅 | 数珠の珠は、人間の持つ108の煩悩を司る仏様とされています。数珠を持つことで煩悩が消え、心が清らかになり功徳を得られると考えられています。特に、正式な数珠である「本式数珠」は、この煩悩の数と同じ108個の珠で構成されているのが特徴です。 |
厄除け・お守り | 数珠は、持ち主を災いから守る厄除けやお守りとしての役割も担っています。常に身に着けることで、福を呼び込み、心を穏やかに保つ助けとなると信じられています。 |
仏との縁を結ぶもの | 数珠の輪に手を通すことは、仏様の世界と自分自身とをつなぐ「掛け橋」になるとされています。数珠は、仏様とのご縁を示す唯一の仏具ともいわれ、大切な役割を持っています。 |
このように、数珠は仏事における実用的な道具であると同時に、私たちの精神的な支えともなる奥深い意味を持つ仏具なのです。
数珠の種類
数珠には、大きく分けて「本式数珠」と「略式数珠」の2種類があります。さらに、珠の大きさによって男性用・女性用に分かれており、それぞれ特徴が異なります。初めて数珠を持つ方は、どの種類を選べば良いか迷うかもしれません。
ここでは、それぞれの数珠の種類と特徴について詳しく解説します。
1.本式数珠
本式数珠は、各宗派の正式な作法にのっとって作られた数珠です。珠の数は、人間の煩悩の数と同じ108個が基本となっており、念仏を唱えた回数を数えるという、数珠本来の役割を担っています。
輪を二重にして使用することから、「本連数珠(ほんれんじゅず)」や「二輪(ふたわ)数珠」とも呼ばれています。
本式数珠は、自身の信仰する宗派のものを一人ひとりが持つのが基本です。特に、日蓮宗など一部の宗派では、本式数珠を持つことが推奨される場合があります。ご自身の宗派が分からない場合は、親族などに確認すると良いでしょう。
2.略式数珠
略式数珠は、本式数珠を簡略化したもので、どの宗派でも共通して使用できる数珠です。一重の輪であることから「片手数珠(かたてじゅず)」とも呼ばれます。
かつては、本式数珠の108個の珠に対して、その半数(54個)や3分の1(36個)など、約数の数で作られていました。しかし、現代では実用性が重視されるようになり、珠の数に明確な決まりはありません。持ちやすいように、珠の数を調整して作られています。
宗派を問わずに使えるため、急な葬儀や法事に参列する際に一つ持っておくと安心です。どの数珠を選べば良いか分からない方や、初めて数珠を購入する方にも適しています。
3.男女別・子ども用の数珠も
数珠は性別によって使い分けられており、一般的に男女兼用ではありません。主な違いは、使われている珠の大きさにあります。
男性用の数珠
男性用の数珠は、女性用に比べて珠が大きく、しっかりとした作りが特徴です。珠のサイズは10mm〜18mm程度が一般的で、落ち着いた色合いの素材(黒檀、虎目石など)が多く用いられます。珠の数は、持ちやすさから22玉・20玉・18玉のものが主流です。
女性用の数珠
女性用の数珠は、男性用よりも珠が小さく、華奢な印象を与えます。珠のサイズは6〜8mmが基本で、水晶やサンゴ、真珠など、明るく美しい色合いの素材が人気です。手にフィットしやすいよう、輪の長さは短くなっています。
子ども用の数珠
近年では大人が使うものよりも輪が小さい、子ども用の数珠も販売されています。子どものうちから仏様と手を合わせる習慣を身に付けさせるきっかけにもなるでしょう。
数珠に使われる素材
数珠には、その見た目の印象を左右する珠(たま)や、アクセントとなる房(ふさ)など、さまざまなパーツがあります。それぞれに多様な素材が用いられており、その組み合わせによって数珠の個性や価格も変わってきます。
ここでは、数珠の「珠」と「房」に使われる代表的な素材について見ていきましょう。
珠に使われる素材
数珠の珠には、多種多様な素材が使われます。素材に厳格な決まりはなく、故人が好きだったものや、自身の誕生石など、好みのものを選べます。
高級品とされる星月菩提樹(せいげつぼだいじゅ)などの「木の実」、黒檀(こくたん)や白檀(びゃくだん)などの「木材」、水晶や瑪瑙(めのう)といった「天然石」が代表的な素材です。その他、サンゴや真珠、琥珀(こはく)なども用いられます。それぞれの素材が持つ意味や石言葉で選ぶのも良いでしょう。
房に使われる素材
数珠の印象を大きく変える房には、主に正絹(しょうけん)と呼ばれるシルク素材が使われます。正絹はしなやかで手触りが良く、高級感があるのが特徴です。近年では、人絹(じんけん)などの化学繊維で作られた房も増えています。
房の形にもさまざまな種類があり、撚り合わせた紐で作る「より房」や「頭付(かしらつき)房」、結び目が特徴的な「叶(かのう)房」などがあります。珠の素材と合わせて、房の色や形も検討してみましょう。
数珠の正しい持ち方
数珠は、ただ持っているだけではなく、場面に応じた正しい持ち方があります。基本的な作法を覚えておくことで、いざというときに慌てずに済みます。特に指定がない場合、数珠は左手に持つのが基本です。
シーン別の基本的な持ち方を、以下の表にまとめました。
シーン | 持ち方 |
数珠を使わないとき | 椅子に着席している間など、数珠を使わないときは左手首にかけます。 |
移動するとき | 焼香などで席を立つ際は、房が下になるようにして左手で持ちます。 |
焼香のとき | 焼香台の前に進んだら、左手の親指と人さし指の間に数珠をかけ、右手で焼香を行います。このとき、数珠を持った左手は胸の高さ辺りで静かに保ちます。 |
合掌するとき | 手を合わせる際は、親指と人差指の間に数珠をかけるか、数珠をかけた左手に右手を添えます。このときも、房は真下に垂れるようにしましょう。 |
本式数珠など二重の長い数珠の場合は、二重にした状態で左手に持つか、両手の中指にかけて合掌します。
ただし、これらはあくまで一般的な作法です。浄土真宗や天台宗、真言宗など、宗派によっては独自の持ち方や作法が定められています。ご自身の宗派の作法が分からない場合は、事前に親族や詳しい方に確認しておくのが望ましいです。
まとめ
数珠は念仏の回数を数えるだけではなく、お守りや仏様との縁を結ぶ大切な仏具です。正式な本式数珠の他、宗派を問わず使える略式数珠があり、素材やデザインも多岐にわたります。
ご自身の宗派や好みに合わせて数珠を選び、場面に応じた正しい持ち方を心掛けましょう。葬儀や法事に関する疑問やお悩みがあれば、専門家に相談するのも方法の一つです。サン・ライフでは、葬儀に関するさまざまな相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。