
生前葬は、その名の通り存命中に自分の葬儀を執り行う新しい葬儀スタイルです。まだ一般的とは言えませんが、自分らしい葬儀を実現できる選択肢として注目を集めています。家族への負担軽減や、感謝の気持ちを直接伝えられる機会となるなど、従来の葬儀にはないメリットがあります。
一方、心理的な抵抗や費用面での課題もありますが、十分な準備と家族との話し合いを重ねることで意義のある機会となるでしょう。この記事では生前葬に関して詳しく解説します。費用相場なども紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
生前葬とは? 特徴や行う意味を解説
生前葬は最近の葬儀スタイルと思いきや、実は江戸時代に生前葬が執り行われたという記録が残っているほど歴史がある葬儀方法です。その記録によると、熊本の家老が生前葬を行い、実際の葬儀では僧侶不在で出陣の恰好で葬列を組ませた、と記されています。
ここからは「生前葬が他の葬儀と異なる点」や「なぜ生前葬を執り行うのか」などを解説しますので、生前葬を検討されている方はぜひ参考にしてください。
生前葬とは?
生前葬の一番の特徴は、参列してくれた友人・知人と本人が直接交流できることです。生前葬であれば、遠方から駆け付けてくれた参列者と会話できる時間を十分設けられます。
また葬儀プランも本人の思い通りに立てられ、細かな部分も葬儀社と直接すり合わせができるので、希望の葬儀が行えるでしょう。いくら家族でも100%本人の意思を汲み取ることは難しいですが、生前葬であれば本人の意志を完全に反映した葬儀が行えます。
生前葬は宗教的な儀式をなくしてよりカジュアルに楽しめる葬儀にもでき、本人の好みや個性が反映されたスタイルも可能です。あまりかしこまらずに自由度の高い形で執り行えるのも、生前葬の特徴といえるでしょう。
生前葬を執り行う意味
生前葬を執り行う意味は人によって異なりますが、生きているうちに家族・友人・知人に感謝を直接伝えておきたいという方がほとんどです。生前葬では「自分の口からはっきりと伝えられるうちに大切な人たちに会って話しておきたい」という願いをかなえられます。
また自分で葬儀の準備ができるので、家族に葬儀準備の負担をかけたくないという思いから生前葬をされる方もいるでしょう。死後の葬儀方法など、生前葬をする上で家族と相談するべきことはありますが、家族の精神的・経済的負担を減らせるのも生前葬を執り行う大きな意味となります。
生前葬を行うメリット
生前葬を行うメリットは大きく3つ挙げられます。ここからはメリットを一つひとつ取り上げて詳しく解説していくので、生前葬を行うか迷われている方は参考にしてください。
家族に負担をかけずに済む
生前葬を執り行った際、死後の葬儀は簡略化されることが多いため、家族への負担を大きく減らせます。また生前葬の準備も本人が全て行うので、家族が何かサポートすることもあまりありません。
それゆえ家族の葬儀にかかる労力を減らせ、家族の精神的な負担・経済的な負担の両方を軽減できるといったメリットがあります。
ただし死後の葬儀に関しては、事前によく話し合っておきましょう。生前葬を執り行ったことで満足して死後のことを何も決めていないと、結局家族が一から決めていかなければならず「負担が減らなかった」ということになりかねません。生前葬を行うのであれば、死後のこともセットで相談することが大切です。
自分が希望する葬儀ができる
生前葬は自分の希望通りに葬儀プランを立てられます。葬儀会場から参列者、プログラム内容、お花、料理まで全て自由に選択できます。
一般的な葬儀のようにマナーを設けずに、自由に楽しんでもらいたいという場合は、それを反映させた葬儀をプランニングすることも可能です。柔軟なプログラム内容が組めるので、悲しみに包まれた空気にしたくない方や明るい雰囲気にしたい方には生前葬がぴったりでしょう。
さらに本人から参列者に向けての感謝の言葉を伝える時間も作れるので、一般の葬儀にはない個性的で心に残るお別れの会ができます。
時間に追われずゆっくり準備ができる
普通の葬儀であれば、遺体管理のタイムリミットや手続きの期限などがあるため、かなり駆け足で準備から葬儀まで執り行わなければなりません。しかし生前葬であればその心配がなく、思う存分好きなだけ葬儀の準備に時間をかけられます。
希望の葬儀にするためには、時間に追われずゆっくりと準備ができることはとても大切なことです。生前葬であれば納得がいくまで調整が可能です。葬儀社との打ち合わせが何度でもできるため、葬儀プランの細かなところまでしっかり決めたい方は生前葬を検討すると良いでしょう。
生前葬を行うデメリット
生前葬のデメリットは主に2つあります。どちらの点も、家族とよく話し合って解決していきましょう。
家族に理解してもらえない
生前葬という新しい形の葬儀に対して、家族の理解を得られるか不安に感じる方は少なくありません。また参列者にとっても初めての経験となることが多く、どのように振る舞うべきか戸惑いを感じることもあるでしょう。
しかしこのような不安は家族との丁寧な話し合いを重ね、自分の思いをしっかりと伝えることで解消できます。招待状に生前葬を選んだ理由や自分の気持ちを記せば、参列者の不安も和らげられるはずです。
近年では葬儀の形も多様化し、簡略化が進んでいることから、生前葬への理解も深まりつつあります。家族に反対されるかもしれないと諦めるのではなく、まずは自分の思いを素直に伝えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
一定の費用がかかる
生前葬の費用は、参加者数によって大きく異なります。30〜50人程度の小さな規模の葬儀では、会場費や設備費だけで30万円程度かかるのが目安です。葬儀会場ではなく、ホテルの宴会場やレストランなどを利用して会場費を削れば、20万円程度にまで抑えられるでしょう。
ただし、あくまで会場費や設備費などの費用であり、食事代や装飾代、返礼品代なども加味するとさらに費用は増えていきます。生前葬は一般的な葬儀と異なり、余興が多くなる傾向にあるため、それにかかる費用も予算に組み込まなければなりません。
生前葬は規模や内容によって費用が大きく変わるため、予算に合わせて調整することが大切です。
株式会社サン・ライフでは、生前葬の費用のご相談も承っております。「生前葬に興味がある」「一度話を聞いてみたい」という方は、お気軽にご相談ください。
生前葬を執り行うまでの流れ
生前葬の進行に関して、事前準備から当日の流れまで解説します。ただし生前葬の大きな特徴は、一人ひとりの思いに合わせて自由にプランニングできる点です。ここでご紹介する内容はあくまでも参考として考え、自分らしい生前葬を実現するためのヒントとして役立ててください。
事前準備
生前葬の事前準備には、以下のような項目が必要です。
- 生前葬を取り扱っている葬儀社を見つけて相談する
- 生前葬を執り行う会場や当日行う内容を決める
- 参列者を決める
- 参列者に招待状を送付する
必ずしもこの順番で行う必要はなく、同時進行で進めていくケースも考えられます。特に葬儀内容は会場の装飾や食事内容、スピーチの準備なども含まれ、最も時間がかかる部分です。スムーズにプランニングするためには、葬儀社に相談してできるだけ具体的な希望を伝えておくことがポイントとなります。
事前に「参列者とのコミュニケーションに時間を取りたい」「余興などをたくさん行って楽しませたい」など、自分が希望するスタイルをイメージしておきましょう。
当日に行う葬儀の流れ
生前葬でよく行われている内容を紹介します。上述したように、生前葬は自由に内容を変えられる点が魅力なので、この通りにする必要はありません。新しい余興をプラスしたり必要ない部分をカットしたりと、自分なりの生前葬をプランニングしてみてください。
- 開会の挨拶
- 主催者本人によるスピーチ
- 本人の今までの人生をたどる映像を流す
- 参列者による代表スピーチ
- 余興
- 会食
- 閉会の言葉
余興部分は、本人が得意なことや趣味などを披露する時間としても良いでしょう。ビンゴ大会やクイズ大会など、参列者参加型のゲームをするのもおすすめです。
生前葬に招待されたときのマナーはどうする?
続いては生前葬に招待されたときのマナーを解説します。周りで生前葬に参加した経験がある方も少ないと思うので、参考にしてみてください。
参列する際の服装
生前葬への参列時の服装は、まず主催者の意向を尊重することが大切です。招待状に「平服でお越しください」との記載がある場合、男性はダークスーツ、女性はダークカラーのワンピースやアンサンブルがおすすめです。
生前葬は一般的な葬儀と比べてカジュアルな雰囲気ではありますが、ジーンズなど極端にカジュアルな服装は避けた方が良いでしょう。また招待状に服装の指定がない場合は、遠慮なく主催者に確認することをおすすめします。服装についての事前確認はマナー違反には当たりません。
生前葬では通常の葬儀とは異なる服装を求められることもあるため、思い込みで判断せず、確認を取ることで参列者としての心遣いを示せます。
香典の有無
生前葬は基本的に香典ではなく、会費という形で主催者に渡します。金額は招待状に記載されている金額を用意しておきましょう。詳細な金額が記載されていない、香典辞退の記載がない場合は1〜2万円程度を香典として用意しておくと安心です。
ただし主催者の意向や状況によって対応が異なるため、不安なときは服装と同様、事前に主催者本人に確認しておくと良いでしょう。
生前葬は今後増える?
生前葬は今はまだマイナーな葬儀スタイルで、定着しているとはいえません。しかし直葬や家族葬など、葬儀スタイルは昔と比べて大きく変化してきたことも事実です。その変化の一つとして、生前葬がメジャーになる世の中が来ることも十分考えられるでしょう。
生前葬は今までの人生を振り返ったり生き方を見つめ直したり、これからどう生きていくのかを省みる機会でもあります。「家族・友人に感謝を伝えたい」「自分が死んだ後も幸せに暮らしてほしい」など、今まで照れくさくて言えなかったことを伝える時間にもなるでしょう。
生前葬は古くからの日本でされてきた還暦や古希など長寿を祝う風習とも通ずるものがあり、人生の区切りをつける意味でも新しい葬儀スタイルとして芸能界でも注目されています。
実際に生前葬を行った有名人は下記の通りです。
- アントニオ猪木氏(プロレスラー)
- ビートたけし氏(お笑いタレント、映画監督)
- 桑田佳祐氏(ミュージシャン)
- 大橋巨泉氏(テレビタレント、放送作家、政治家)
- 養老孟司氏(解剖学者)
まとめ
生前葬は生きているうちに家族や友人などに感謝の言葉を伝えられ、希望通りの葬儀を執り行えるのが大きな魅力です。周囲の理解や死後の葬儀の準備など、家族と話し合うことは必要ですが、生前葬を執り行うことは人生の節目として大きな意味を持つでしょう。
希望通りの生前葬をプランニングするためには、生前葬を取り扱う葬儀社を探すことが大切です。
株式会社サン・ライフでは、生前葬のご相談も承っています。お客さまの希望に添った生前葬プランをご提案します。
対面でのご相談はもちろん、電話での無料相談も受け付けているため、忙しい方でもご利用できます。ホームページからの資料請求も可能なので、ぜひお気軽にお問い合わせください。