天台宗は日本仏教の主要な宗派の一つです。日本では56派の宗派が存在するといわれており、同じ仏式でも各宗派によって葬儀の方法が異なります。
今回は天台宗の葬儀について、葬儀の流れや焼香、お布施のマナーなど詳しく解説します。天台宗の葬儀を検討している方や、天台宗の葬儀に参加する方は、ぜひ最後までご覧ください。
天台宗の葬儀とは
天台宗は平安時代に 伝教大師「最澄」が日本に広めた宗派といわれ、比叡山延暦寺を総本山とします。法華経を経典とし、古くから信仰されてきた宗派の一つです。
天台宗は独自の考え方や教えに基づき葬儀を執り行うため、一般的な葬儀とは少し異なる作法があります。ここからは天台宗の葬儀の特徴や葬儀に使用する道具に関してご紹介します。
天台宗の葬儀の特徴
天台宗にとっての葬儀は、故人を仏さまとして送り出す儀式です。葬儀では「受戒」と「引導」の2つをメインとして執り行い、「顕教法要」「例時作法」「密教法要」の3つで構成されています。
「顕教法要」で法華経を唱えることにより現世での罪を悔い改めること、これが「受戒」とされ、顕教法要によって仏性を高められるという教えです。その後「引導」として光明真言を唱える「密教法要」を行い、故人が極楽浄土に行けるように祈りを捧げます。
「例時作法」は朝夕決まった時間に行う勤行のことで、天台宗の修行の一つです。故人の供養だけではなく、先祖代々の霊の供養の意味もあり、皆が極楽浄土に行けるようお祈りを捧げます。
天台宗の葬儀で行われる儀式は、顕教法要の「自他救済」の考えと、密教の「仏との一体化」という思想が織り交ぜられ、故人の現世での罪や穢れを浄化し、仏道への到達を助けるために行われる儀式として、葬儀が位置付けられているといえるでしょう。
天台宗の葬儀に使用される道具
天台宗の葬儀で使用される道具は木魚です。木魚は魚の形をした木製の道具で、僧侶が読経時にリズムを取るために叩きます。なぜ魚の形をしているのかというと、魚は眠らないと昔から信じられており、「読経中に魚のように眠くならないため」という眠気払いの意味が込められているからです。
その他にも葬儀中に僧侶が使用する錫杖(しゃくじょう)や、故人にお茶を供える儀式に使う茶湯器も天台宗特有の仏具といえます。
また参列者が準備する道具としては数珠があります。一般的な数珠とは少し異なり、玉が丸い物ではなく、楕円形の平たい形をしているのが特徴です。そして108個の主玉と4つの天玉、1つの親玉からなっており、親玉には弟子玉が連なっています。天台宗の葬儀に参列する際は、数珠の種類が異なる点に注意しましょう。
天台宗の葬儀の準備
天台宗で葬儀を行う際の準備を解説します。一般的な葬儀とあまり変わりませんが、いざというときに慌てないよう、再度見直しておきましょう。
僧侶に依頼する
葬式を執り行うことが決まったら、まずは菩提寺の僧侶(司祭)に依頼して、葬式のスケジュールを決めます。読経をお願いする僧侶や葬儀の日取りを菩提寺と調整し、当日の流れなどを相談します。
葬儀社を決める
次に葬式の日取りを基に葬儀社を決めます。どのような葬儀にしたいのか、参列者はどれくらい来るのかなどを踏まえ、希望の葬儀ができる葬儀社を見つけましょう。
なお株式会社サン・ライフでは天台宗の葬儀会場やプランもご用意しています。柔軟に対応いたしますので、お気軽にご相談ください。
天台宗の葬儀の流れ
ここからは天台宗の葬儀の流れを説明します。通夜→葬儀→告別式の流れは一般的な葬式と同じですが、行われる内容に若干の違いがあるため確認してください。
枕経・通夜を行う
ご遺体を棺に入れる納棺の前に、枕経を僧侶が唱えます。納棺が終わり通夜が始まると、「通夜誦経」と呼ばれる読経が行われます。通夜誦経とは朝に法華経、夕方に阿弥陀経を唱え、故人の極楽浄土をお祈りする読経のことです。
通夜読経を終えると「剃度式」と呼ばれる儀式が行われます。昔は煩悩を脱ぎ去るためとして本当に髪を剃っていたようですが、現在では実際に行われることはほとんどありません。
剃度式中には「辞親偈(じしんげ)」と呼ばれるお経を僧侶が唱え、故人の安らかな旅立ちと来世での幸せを祈ります。
葬儀のための身支度
天台宗の葬儀において、葬儀のための身支度は、以下のような段階を踏んで行われます。
- 身体を清浄にする
- 心を清浄にする
- 戒を授かる(三帰授戒)
- 戒名を授かる
- 引導と下炬の儀式
- 念仏を唱える
身体的な汚れは剃度式や洒水、塗香で落とし、精神的な汚れは顕教法要で読経をすることで落とします。身体的・精神的な汚れを落とし、清浄にした後、仏の教えを授かるということで三帰戒を授かり、仏弟子として戒名を授かるといった流れです。
戒名を授かった後に極楽浄土へ確実に行けるよう引導と下炬の儀式を行い、現世とのお別れをします。最後に念仏を唱えて、故人を迎えに来た阿弥陀如来に新霊の往生をお願いすれば葬儀は終了です。
「身を清める」「仏弟子になる(戒名を授かる)」「確実に極楽浄土に行けるようにお願いする(引導、下炬、念仏)」の3つは、故人が仏の教えに従い、浄土へ向かう旅立ちを表現しているといわれています。
告別式を行う
告別式では故人と最後のお別れをします。生前に故人と縁があった方々に参列していただき、弔辞や弔電を通じて家族と共に故人を偲んでいきましょう。
喪主が家族を代表して挨拶を行い、参列者の方々にこれまで懇意にしてもらった感謝と、変わらぬ支援を賜りたい旨の言葉を述べます。最後に家族や参列者の一人ひとりが焼香をして、故人への敬意と感謝を心の中で伝えお別れとします。
また天台宗の焼香の仕方は粉末状の香と線香では作法が異なるので、下記を参考にしてください。
<粉末状の香の場合>
- 合掌して一礼
- 右手の親指・人差し指・中指で香をつまんで、左手を添えながら額に近付ける
- 1の動作を3回くり返す
※天台宗は焼香の回数が明確に決められていないため、1回の場合もある - 合掌して一礼
<線香の場合>
- 線香を左手に持って火を付ける
- 手で仰いで火を消す。その際、左手に持った数珠に線香の煙を数珠にかける
- 線香が1本の場合は真ん中に立てる、3本の場合は手前に1本、奥に2本立てる
天台宗におけるお布施や香典のマナー
ここからは天台宗で必要なお布施や香典のマナーを解説します。葬儀を執り行う場合も、葬儀に参列する場合も必要な知識なので、ぜひ最後までご覧ください。
お布施について
葬儀にかかるお布施は20万〜35万円が目安とされており、プラスで戒名代と御車代が必要です。御車代は菩提寺と葬儀場との距離で変わりますが、5,000〜1万円程度が相場です。
なお戒名は位の高さによって異なります。以下の金額が一般的とされているので参考にしてください。
院居士・院大姉 | 100万円 |
信士・信女 | 30万円 |
香典袋の書き方
天台宗の葬儀での香典袋は、表書きに「御霊前」もしくは「御香典」と記載します。香典袋のデザインは金額によって決まっており、少額である1万円以下であれば水引が印刷されたシンプルなものが良いでしょう。
3万〜5万円の香典を包む場合は、印刷されたものではなく水引が付いたタイプを選ぶのが一般的です。さらに5万円以上であれば、より装飾が華やかな香典袋がおすすめです。
まとめ
天台宗にとって葬儀とは、故人を仏弟子にするための儀式です。この儀式を通じて、故人の身体と心を丁寧に清め、極楽浄土への旅立ちを助けます。一般的な葬儀とは異なる方法もあるので、天台宗での葬儀を執り行う、もしくは参列する場合は、事前にマナーや取り決めなどをしっかりと理解しておきましょう。
株式会社サン・ライフでは天台宗を含むさまざまな宗派の葬儀に対応しております。各宗派が大切にしている儀式を丁寧に執り行い、故人が安らかに旅立てるようサポートいたします。電話での無料相談や資料請求なども実施しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。