退職後、写真という趣味を見つけた父は、朝起きて出かけて、暗くなったら帰ってくるような、活動的な日々を過ごしていました。鳥類の自然な姿を撮影する為に、野外に小屋を建て、迷彩服を着込み張り込んだ事もあったとか。
充実した生活を送っていた中、癌が見つかったのは年の暮れの事。いつでもシャンと背筋が伸びていた父にとって、闘病生活が短かったのは良い事だったのかもしれません。わずか半年後、「ありがとう」と言い置いて息を引き取りました。
病院まで迎えに来てくれたのはサン・ライフの赤岡さんと山田さん。父の死に戸惑う私たちに「大丈夫ですよ」と声をかけ、式場に連れて行ってくれました。その言葉のおかげで、少しだけ落ち着いて”父の為の葬儀”を考える事ができました。
全身全霊で写真を撮り続けた父の姿が心にあり、葬儀の際に使えないかと探したところ、綺麗にファイルされた写真が見つかりました。癌が発覚してから自分で整理していた様子でしたが、残されたその色鮮やかさに、父の人生が眼の前に現れたような気がしました。
父の生きた証をかたちにしたい、父の見た鮮やかな世界を皆に見てほしい……。引き続き葬儀の担当をしてくれる事になった赤岡さんに相談したところ、快く引き受けてくれました。
式場の扉を開けて正面には、父の写真を飾ってもらいました。手を頬にそっと当てながら微笑む父の姿は、家族旅行の時のもの。何かを語りかけるような父の表情に、遺影はこれしかないと思いました。
とても素敵に展示して頂いた写真の数々は、どれも父の世界を彩ったものたちで溢れんばかり。海を望む窓の傍で、父の友人達が昔話に花を咲かせていました。「あのへんで一緒に虫を捕ったなぁ」との声に、昔から変わらず、外で遊ぶのが好きな人だったのだと知りました。
すべてに全力で「後悔は無い」と言っていた父の生き方は、昔の純粋な心を持ち続ける活力によって、いっそう輝いていたのかもしれません。
始終和やかで、堅苦しくなく、充実したお別れの時間を過ごす事ができました。スタッフの皆さんの細やかな気遣いが本当にありがたく、悲しい中でもこんなにきちんとお別れの準備ができたのは初めてです。父らしい葬儀を実現してくださった赤岡さん、本当にありがとうございました。