核家族化や新型コロナウイルスの流行によって、以前にも増して家族葬の需要が増えています。
そこで、家族葬の場合の香典の相場や香典袋の書き方などのマナーについて解説いたします。
目次
家族葬に香典は必要?
通常のご葬儀では香典を持参するのがマナーとされていますが、家族葬でも例外ではありません。
しかし「香典返しの手間を省きたい」という喪家の意向で「香典辞退」とする場合もありますので、事前に確認をしておきましょう。
喪家に直接確認することが出来なければ、近い間柄の親戚や葬儀社に問い合わせても教えてもらうことができます。予め香典辞退と案内されているときは香典を持参する必要はありません。香典辞退と知らされていなければどちらにも対応できるよう、香典を用意しておくのが無難です。
家族葬で香典を渡すタイミングと渡し方
家族や身内中心で行われる家族葬では、いつどのように香典を渡せばいいのでしょうか?家族葬に参列する場合の香典を渡すタイミングやご挨拶の仕方、家族葬に参列できなかった場合の渡し方について、詳しく解説いたします。
家族葬に参列する場合
記帳所や受付の用意がされている場合は、通常のご葬儀と同様、記帳をするときに香典をお渡しするのが一般的です。「この度はご愁傷様でございます」と一言ご挨拶をして受付の方にお渡しすればよいでしょう。近年小規模な家族葬の場合には受付を設けないことも少なくありません。特に受付を設けていない場合には、喪主に直接手渡しします。
家族葬後に訪問する場合
家族葬に招かれていながらも、諸事情で参列がかなわなかったときには後日訪問してお渡しします。喪主は家族葬の後も手続きなどで忙しいこともありますので、予め連絡をしたうえで訪問します。できれば四十九日までに弔問に伺うようにします。その際に香典辞退の意向が伝えられていない場合は、香典を持参しお参りをしてからお渡しします。
仏式で家族葬を行っていて、弔問が四十九日以降になってしまう場合には、香典袋も「御霊前」ではなく「御仏前」を用意します。これは仏教の多くの宗派では四十九日を区切りに仏様になる(成仏する)と言われているためです。
弔問に行く場合には、香典の他に故人が好きだったものや供物を持参するとより丁寧です。
代理人に依頼する場合
家族葬に招かれていながらも、諸事情で参列がかなわなかったときには後日訪問してお渡しします。喪主は家族葬の後も手続きなどで忙しいこともありますので、予め連家族葬に招かれているものの参列がかなわない場合、参列する人に預けて代わりに渡してもらう方法があります。この場合にも事前に香典辞退になっていないか確認しておかないと、代理人の方にも手間をかけてしまいます。
郵送で送る場合
家族葬に招かれていながらも、諸事情で参列がかなわなかったときには後日訪問してお渡しします。喪主は家族葬の後も手続きなどで忙しいこともありますので、予め連家族葬に参列できない場合に、喪家の自宅や葬祭場に香典を現金書留で送る方法もあります。この場合にも、事前に香典辞退になっていないか確認し、香典辞退の意向があるときは香典も送らないようにします。すでに葬儀を済ませている場合であっても、勝手に送るのは迷惑になることがあるので、必ず喪主の意向を確認してから送ります。
家族葬の香典の相場とは
一般的な葬儀と家族葬とでは香典の相場は異なるのでしょうか?続柄や関係性によってどれくらいの金額を用意すればいいか、家族葬の香典の相場について解説します。
親族以外の参列者の香典相場
家族葬であっても、一般的なご葬儀の香典相場と変わりはありません。友人や会社関係であれば5千円前後、親しくしていた友人でも1万円ほどが相場となります。
親族の香典相場
親族の場合は故人との関係性や血縁によって香典相場も異なります。
(故人が自分にとって)
父、母 | 5万円~10万円 |
祖父母 | 1万円~5万円 |
兄弟姉妹 | 3万円~5万円 |
従兄弟/従姉妹 | 1万円~3万円 |
叔父/叔母 | 1万円~3万円 |
配偶者の親 | 5万円~10万円 |
これらの金額はあくまで目安ですので、地域の決まり事や慣習などがあればそれに従いましょう。
一般参列者を呼ばずに行われることが多い家族葬では、必然的に香典収入が減る傾向にあります。遺族の金銭的負担を軽減するために、家族葬に参列するときは一般葬よりも多めに包むこともあります。
子や孫から香典を出すべきかどうかですが、すでに成人しており、独立して生計を立てている場合には、故人と同居でない限り香典を用意するのがマナーと言えます。
金額を決める際の注意点
割り切れる数字はなるべく避ける
「2」や「6」のような割り切れる数字は、故人や親族との縁を切る、関係を断つ、といったことを連想させるため使うべきではないとされています。
香典を包む場合には1万円、3万円、5万円といった、奇数の割り切れない数字で用意しましょう
端数や小銭が発生しない金額にする
小銭を香典として包むことはもちろん、千円単位の端数が出るような金額も好まれません。1万5千円は割り切れない数字ですが、千円単位の端数が出てしまうので、こういった場合は1万円にするか3万円にするようにしましょう。
「4」や「9」などの縁起が悪いとされる数字は避ける
「4」という数字は「死」と読みが一緒であることから、昔から縁起の悪い数字とされてきました。同様に「9」も苦しむという意味の「苦」を連想させるため、不吉な数字とされています。
家族葬の香典の書き方
家族葬と一般葬とでは香典の書き方や包み方に違いはあるのでしょうか?ここでは香典の書き方について解説いたします。
表書きの書き方について
家族葬の香典の書き方は一般葬と特に変わりません。香典袋も一般的な白黒の水引のものを用意します。家族葬だからということで特別高価なものを用意する必要もありません。
表書きの書き方については宗教や宗派により異なりますので、注意しましょう。
仏教の場合
仏教の場合には一般的に「御霊前」(ごれいぜん)を使用します。仏教では四十九日までの間は亡くなった方は成仏せず、霊魂の状態で旅をしているという考え方があるためです。よって「御仏前」(ごぶつぜん)の香典袋は葬儀では使用せず、四十九日以降の法要の際に使用します。葬儀では他にも「御香料」(ごこうりょう)や「御香典」(ごこうでん)は使用することができます。
ただし、仏教の中でも浄土真宗については、亡くなられた方はすぐに成仏するという考え方がありますので「御霊前」は使用せず、葬儀でも「御仏前」を使用します。
神道の場合
神道の場合には「御榊料」(おさかきりょう)や「御玉串料」(おたまぐしりょう)、「神饌料」(しんせんりょう)を使います。「御霊前」を使っても問題ないとされていますが、成仏するわけではないので「御仏前」は使用しません。
キリスト教の場合
キリスト教ではカトリックとプロテスタントで異なる部分がありますので注意が必要です。
カトリックの場合には「御ミサ料」(おみさりょう)や「御花料」(おはなりょう)と書くのに対し、プロテスタントでは「献花料」(けんかりょう)や「御花料」を使います。
どちらか事前にわからないときには両方共通で使える「御花料」を用意するのが無難です。
仏教や神道でも使われる「御霊前」ですが、カトリックでは使用しても問題ないとされていますが、プロテスタントでは不適切とされていますので気をつけましょう。
なお、「御霊前」を使用する場合は水引のついた香典袋でも問題ありませんが、それ以外はキリスト教用の香典袋を用意するようにしましょう。
名前の書き方について
家族葬の香典も名前の書き方は一般葬と同じです。水引の下にフルネームで書きましょう。連名で書く場合には3名まで書くことができます。連名で書く時は目上の人の名前を右端に書きます。
4名以上でまとめて香典を包む場合には、表書きには代表者名や部署名のみを記載し、誰がそれぞれいくら包んだのかは別紙に控えて中袋に入れるようにしましょう。
金額の書き方について
金額の書き方についてですが、家族葬でも一般葬と同様に、大字と呼ばれる複雑な漢数字を使用して書きます。
(「一」⇒「壱」、「三」⇒「参」など)
これは後から数字を書き換えられたり、改ざんされないようにするために法的文書や会計文書などに使用されている漢字です。近年では日常的に使用している漢字を使用してもマナー違反ではないとされています。
お札の入れ方について
お札の入れ方については、中袋に入れる際に裏向きになるように入れるのが一般的です。お札の肖像が表下に来るように中袋に入れることで、取り出したときに金額がすぐに分かるメリットもあります。また、使用する紙幣は新札を避けるべきとも言われています。新札しかない場合は一度折り目を付けてから入れるようにしましょう。
香典辞退された場合
遺族から香典辞退の意向が伝えられている場合には、香典を包む必要はありません。むしろ辞退されている理由によっては、香典を渡すことで遺族にとって迷惑になってしまったり、余計な手間をかけてしまうことにもなりかねません。また、どうして香典辞退にしたのか、理由を聞くこともマナー違反です。香典辞退の意向を知った場合には、たとえすでに香典を用意していたとしても、喪主や家族の意向を尊重し渡さないようにしましょう。
香典辞退されても弔意を伝える方法
香典辞退をされていても、他の方法で弔意を伝えることはできます。
もし、香典は辞退されていたとしても、供花や供物、弔電について、辞退する意向がなければ、これを送ることで弔意を伝えることは可能です。
ただし、供花や供物など葬儀場内に供えるものについては、宗教や喪主の意向により金額やデザインを統一している可能性があります。また、葬儀社によっては指定店以外の供花や供物の持ち込みを禁止している場合があります。事前に喪主もしくは葬儀社に供花や供物を贈っても問題ないかを確認することが大切です。
葬儀式場に供花や供物を贈り以外にも、故人の好きだったお菓子やお線香に手紙を添えて、自宅にお送りすることで、弔意や故人への感謝を伝えることができます。
家族葬での香典返しのマナーとは
家族葬で行った場合の香典返しはどのように決めればいいのでしょうか。ここでは家族葬の香典返しの相場やお返しするタイミングなど解説いたします。
即日返しが基本マナー
弔問客が大勢参列する一般葬では、以前からご葬儀後に発送の手配をする負担を軽減するため即日返しが行われていましたが、近年ではカタログギフトのような幅広い価格帯の香典返しが用意できるようになったこともあり、香典金額が高額になる家族葬でも即日返しが増えています。会って直接渡せることや、余っても葬儀社が引き取ってくれるのも即日返しのメリットです。
香典返しの相場
香典返しは一般的に「半返し」でよいとされていますが、家族葬の場合は故人との関係が深い身内や親せきが参列者の中心となりますので、一人当たりの香典の金額も高額になります。すべての方に半返しをしなければいけないわけではなく、高額の方については3分の1~4分の1程度のお返しでも失礼には当たりません。
香典返しのおすすめ品
香典返しは昔から葬儀という不祝儀を後に残さない、引きずらない、という考えのもと「消え物」を返すという考え方がありました。定番としては「お茶」や「焼き菓子」などの比較的日持ちする食品系や、洗剤のような消費できる日用品があげられます。
しかし、葬儀の参列するたびに同じような香典返しが家にたまってしまう、という経験をした方が多いからか、最近は参列した人が好きなものを注文できる「カタログギフト」の人気が高まっています。
まとめ
家族葬の香典の相場やマナーについて解説してきました。
親しい関係の親族や友人のみの小規模なご葬儀ですが、香典辞退という案内が無い限りは一般葬と同様に、香典を用意しておくことが無難です。
また、金額や入れ方も一般葬と考え方に違いはなく、故人との関係性や一般的なマナーを守って用意すれば特別なことはありません。
宗教により香典の表書きの書き方は異なりますが、事前に確認をしておけば対応が可能です。迷った場合や確認できなかったときは多くの宗教で幅広く対応可能な「御霊前」を用意することをお勧めします。
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【監修者】
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査 1級葬祭ディレクター
高橋 竜一