葬儀では僧侶にお布施を渡す機会があります。お布施とは僧侶への感謝の意を表すお金です。お布施は単なる金銭の支払いではなく、重要な宗教的儀式と位置付けられています。そのためお布施は僧侶に尊敬の意を表し、心を込めて渡すことが大切です。
本記事では家族葬に必要なお布施の内訳や相場を解説します。お布施を渡す際のマナーやポイントも併せて紹介するのでぜひ参考にしてください。
家族葬にもお布施は必要?
家族葬であっても僧侶を呼ぶ場合はお布施が必要です。お布施とは僧侶のお勤めに対して渡す謝礼金を指します。僧侶に読経してもらったり、故人に戒名を付けてもらったりした際は、お礼としてお布施をお渡しましょう。もしも家族葬を身内だけで執り行い、僧侶を呼ばないならお布施も必要ありません。
お布施は僧侶の働きの対価ではなく、あくまでもお礼として施すものと考えられています。そのためお布施に明確な金額は決められていません。お布施の相場は一般葬でも家族葬でも同じです。読経の回数や戒名、地域などによってお布施の相場は異なります。
家族葬に必要なお布施の内訳と相場
お布施に明確な金額は決められていませんが、ある程度の相場はあるため把握しておきましょう。家族葬に必要なお布施の内訳は以下のとおりです。
● 読経料
● 戒名料
● お車代
● 御膳料
お布施の相場は地域によっても異なるため、あらかじめ地域の事情に詳しい方に相場を尋ねておくとよいでしょう。
1.読経料
読経料とは僧侶による故人のための読経に対するお礼です。読経料の平均的な相場は15〜30万円です。ただし読経料は僧侶に来てもらう回数や、僧侶の人数、宗派などによって異なります。読経のタイミングは宗派や葬儀のスタイルによっても左右されます。
宗教別のお布施(読経料と戒名料を含めたもの)の目安は以下のとおりです。
浄土宗 | 30~50万円 |
浄土真宗 | 20万円前後 |
真言宗 | 30万円〜 |
曹洞宗 | 30~60万円 |
天台宗 | 40万円〜 |
日蓮宗 | 30~50万円 |
臨済宗 | 30万円〜 |
神道 | 15~35万円 |
キリスト教 | 10~20万円 |
家族葬は比較的規模が小さく、葬儀内容を柔軟に選択しやすい点が特徴です。家族葬なら読経がない無宗教形式の葬儀も選べます。ただし家族葬は近しい間柄だけで執り行う葬儀であり、儀礼や儀式を簡素化するものではありません。家族葬であっても僧侶に足を運んでもらうことが一般的です。
ちなみにお布施に代わってキリスト教ではお礼や献金、神道では御祭祀料(おさいしりょう)を支払います。
2.戒名料
戒名は亡くなった方に付ける名前だというイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、戒名とは本来、仏門に入った方に付けられる名前です。厳しい戒律を守り経典を学んだ証として授けられるものでした。
現在では生前に出家せず修行をしていない方でも、亡くなってから戒名を付ける習わしとなっています。戒名を与えられれば、故人が迷わず極楽浄土に行けると考えられているからです。
僧侶に戒名を付けてもらう場合は、謝礼として戒名料を渡します。戒名は故人の社会的地位や、寺との生前のお付き合いによって位が決められ、お布施の相場は戒名の位によっても違ってきます。
戒名料は原則として葬儀で僧侶に手渡すお布施に含まれています。ただし、場合によっては戒名料をお布施とは別に用意する必要があります。お布施に戒名料が含まれるのかはっきりしない場合は、葬儀社や菩提寺に確認しましょう。宗派別の戒名料の相場は以下のとおりです。
浄土宗の戒名料相場
信士・信女 | 30~40万円 |
居士・大姉 | 50~60万円 |
院信士・院信女 | 70万円~ |
浄土真宗(大谷派)の戒名料相場
(普通法名)釋(尼)〇〇 | 2万円 |
(院号法名)〇〇院釋(尼)〇〇 | 8万円 |
(浄土真宗では戒名はなく法名が用いられます。)
浄土真宗(本願寺派)の戒名料相場(生前授与の場合)
釋〇〇(未成年) | 5,000円 |
釋〇〇(18歳〜) | 1万円 |
(浄土真宗では戒名はなく法名が用いられます。)
真言宗・天台宗の戒名料相場
信士・信女 | 30~50万円 |
居士・大姉 | 50~70万円 |
院信士・院信女 | 80万円~ |
院居士・院大姉 | 100万円~ |
曹洞宗の戒名料相場
信士・信女 | 30万円~ |
居士・大姉 | 50~70万円 |
院信士・院信女 | 100万円~ |
院居士・院大姉 | 100万円~ |
日蓮宗の戒名料相場
院信士・院信女 | 30~50万円 |
院居士・院大姉 | 100万円~ |
臨済宗の戒名料相場
信士・信女 | 30~50万円 |
居士・大姉 | 50〜80万円 |
院居士・院大姉 | 100万円〜 |
ちなみに仏教の戒名に似たものとして、神道には霊号(れいごう)があります。霊号は亡くなった人の御霊(みたま)としての名前です。神道における御霊には、死後も存在するとされる精神的な意味があります。
キリスト教には戒名にあたるものはありません。似たものに洗礼名がありますが、キリスト教徒が洗礼を受ける際に授かる名前なので葬儀の際に付けられる訳ではない点で異なります。
3.お車代
お車代とは葬儀場や自宅まで僧侶に足を運んでもらったことへのお礼です。お車代の相場は5,000円〜1万円程度です。ただし、お車代の金額を決める際は、移動のために実際にかかる交通費を考慮する必要があります。交通費が多くかかるような立地や地域なら、お車代を増やす必要があるかもしれません。例えば遠方から来た僧侶に対しては、1万円程度上乗せします。お車代は前述した読経料や戒名料などのお布施とは別に用意するのが一般的です。
4.御膳料
御膳料は通夜や告別式の後に開かれる、通夜振る舞いや精進落としなどの会食に僧侶が参加しない場合に手渡すものです。御膳料の相場は5,000円〜2万円程度で、実際の金額は会食の食事内容に合わせます。僧侶が会食に参加する場合は、御膳料を用意する必要はありません。
家族葬でお布施を渡す際のマナーとポイント
家族葬でお布施を渡す際に気を付けるべきポイントは以下のとおりです。
● お布施を渡すタイミング
● お布施の包み方
● お布施の書き方
● お布施の渡し方
それぞれの場面でのマナーを詳しく解説します。
お布施を渡すタイミング
僧侶にお布施を渡すタイミングは葬儀前、または葬儀後が一般的です。お布施は僧侶に直接手渡しします。渡す際には労いの言葉を添えましょう。
葬儀前にお布施を渡すあいさつの例
● 本日はお世話になります。よろしくお願いいたします。
● この度の葬儀につきましてお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。
● 本日は故人のためにありがとうございます。
葬儀後にお布施を渡すあいさつの例
● 本日はお心のこもったお勤めをいただきありがとうございました。
● ささやかではございますがお礼です。どうぞお納めくださいませ。
● 本日は無事に葬儀を執り行うことができました。お心のこもったお勤めをありがとうございました。
ただし、宗派や地域によってはお布施を渡すタイミングに決まりがあるため事前に確認しておきましょう。
お布施の包み方
お布施はきちんとお布施袋に入れておきます。お布施の包み方には以下の2つの方法があります。
● 奉書紙(ほうしょし)で包む
● 白い無地の封筒に入れる
奉書紙とは弔辞を書く際に用いられる和紙です。古くは公文書の作成に使われていました。
奉書紙でお布施を包む場合は、紙のつるつるした面を表にします。紙幣を中袋に入れ、奉書紙で包みましょう。中袋に入った状態のお布施を中央より少し左寄りに置きます。奉書紙を左、右、下、上の順に折って包めば完成です。
白い無地の封筒に入れる場合は、郵便番号の印刷がないものを選びます。お布施を包む封筒は何も柄がなく、真っ白である必要があるためです。お布施では中包み(中袋)は必要ありません。
また、お布施では封筒に付ける水引は不要です。ただし、水引に関するマナーは地域によっても異なります。地域の風習によっては白黒や黄色の水引をお布施にかけることもあるので、水引のマナーがはっきりと分からない場合は葬儀社に確認しましょう。
二重封筒の使用はマナー違反となります。二重の構造が不幸の重なりを連想させるためです。お布施専用に作られたお布施袋も売られています。お布施の包み方で悩む場合は、お布施袋を利用するとよいでしょう。
お布施の書き方
お布施は奉書紙に包むか封筒に入れた後、必要事項を書き入れましょう。お布施の表面には濃墨の筆を使って「お布施」や「御布施」、または「御礼」と記載します。ただし、元々お布施の記載があるお布施袋を用いるなら省略します。読経料や戒名料以外のお車代や御膳料として渡すお布施には、御車料、または御膳料と書き入れてください。
表面の下段には喪主の名前を書き入れましょう。名前の記載は名字のみでも「〇〇家」と家名を用いても構いません。お布施の裏面には左側半分に収まるように、住所・氏名・電話番号・金額を書きます。裏面にはフルネームを記載しましょう。
住所や電話番号は漢数字、金額は旧漢数字や大字で表記します。お布施の金額は4と9を含まないようにするのがマナーです。金額の最後には、圓也と書き入れます。お布施の中袋には表面に金額、裏面左下に住所や氏名、電話番号を記入してください。
【旧漢数字・大字の一覧】
1 | 壱 |
2 | 弐 |
3 | 参 |
4 | 肆 |
5 | 伍 |
6 | 陸 |
7 | 漆 |
8 | 捌 |
9 | 玖 |
10 | 拾 |
100 | 佰 |
1,000 | 仟 |
10,000 | 萬 |
例えばお布施の金額が30万円なら、金参拾萬圓也と表記します。
お布施の渡し方
お布施は新札でなくてもマナー違反には該当しません。ただし葬儀に足を運んでくれた僧侶に対して感謝の気持ちを表す意味で、余裕があれば新札を用意しましょう。お布施の渡し方には以下の2種類があります。
● 切手盆にのせて渡す
● 袱紗(ふくさ)から取り出して渡す
それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。
切手盆にのせて渡すケース
お布施を切手盆にのせて渡す手順は以下のとおりです。
1. お布施を自分から見て正面になる向きで切手盆の上に置く
2. 切手盆を左右の手で持ち上げる
3. 僧侶から見てお布施が正面になるよう、お盆を右回りに回す
4. 僧侶に切手盆を差し出す
5. 僧侶が受け取った後、切手盆が返されたら受け取る
お布施を僧侶に渡す際は、奉書紙や封筒のままでは不適切とされます。切手盆にのせるか、袱紗から取り出して渡しましょう。お布施を渡す際は「この度の葬儀につきまして、どうぞよろしくお願い申し上げます。」と一言添えるとよいでしょう。
袱紗(ふくさ)から取り出して渡すケース
お布施を袱紗(ふくさ)から取り出して渡す手順は以下のとおりです。
1. 折りたたんだ袱紗にお布施をのせ、両手で持って僧侶に差し出す
2. 僧侶から見てお布施が正面を向くように調整する
3. 僧侶が受け取った後、袱紗を片付ける
お布施を切手盆にのせて渡さない場合は、僧侶の前で袱紗から取り出して渡すことになります。袱紗から取り出して渡す際も、僧侶に対して労いの言葉をかけましょう。
まとめ
お布施は葬儀に僧侶を呼んだ際、読経や戒名のお礼として渡すお金です。家族葬であっても僧侶に来てもらったのなら、一般葬と同じようにお布施を用意する必要があります。お布施に決まった金額はありません。とはいえ、ある程度の相場が決まっているため、相場に則ってお布施の金額を決めましょう。またお布施を僧侶に渡す際は、失礼がないようマナーに気を使う必要があります。
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