
親族として葬儀に参列する際、どのようなマナーがあるのかが分からず、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。故人との関係性によっては、立ち振る舞いにも困ることもあるでしょう。
この記事では「親族」と呼べる具体的な範囲や、葬儀における役割・立ち振る舞いを詳しく解説します。
服装のマナーや供物、通夜・葬儀に親族として参列したときの流れもご紹介しているので、当日に焦らないように確認してみてください。
目次
親族の範囲はどこまで?
葬儀における「親族」は、どの範囲を指すのでしょうか。まずは、親族に含まれる等親と、遺族との違いを解説します。関係性によって葬儀でのマナーが異なるため、自分が葬儀において親族に該当するのかを、理解しておきましょう。
親族の範囲
民法において「親族」と呼ばれる立場にあるのは「6等親内の血族」「配偶者」「3等親内の姻族」です。故人を起点として見た際、具体的には以下のような人物が親族に当たります。
6親等内の血族 | ・親 ・祖父母 ・曾祖父母などの直系尊属 ・子 ・孫 ・曾孫などの直系卑属 ・兄弟姉妹とその子孫 ・叔父叔母とその子孫 など |
配偶者 | ・夫または妻 |
3親等内の姻族 | ・配偶者の親族(義理の父母、義理の兄弟姉妹など) ・親族の配偶者(兄弟姉妹の配偶者など) |
しかし葬儀においては、一般的な親族付き合いがある関係性であれば、親族とみなされることが多いです。親族の範囲は厳密に定められているわけではないため、故人や遺族との関係によって異なると考えておくとよいでしょう。
※参照:厚生労働省. 「6親等内の血族」. https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/dl/s1027-8b.pdf ,(参照 2025-03-18).
親族と遺族の違いとは
親族と遺族にも違いがあるため、理解することが大切です。一般的に親族は、故人が生存しているときにも、6等親内の血族や配偶者、3等親内の姻族に対して使用される呼び方です。葬儀や法要に限らず、結婚式をはじめとするおめでたい席でも使用されます。
一方で遺族は、人が亡くなって初めて、故人の家族に対して使われる呼び方です。故人の配偶者や親、子、兄弟姉妹が遺族に該当します。親族という広い範囲の中でも、故人に近い関係にある家族が遺族と呼ばれます。
葬儀における親族の役割
葬儀において、親族はどのような役割があるのでしょうか。親族の役割を理解した上で、遺族や参列者に配慮した立ち振る舞いを心掛けてください。
遺族のサポート
葬儀において親族には、葬儀を執り行う遺族のサポートが求められます。
遺族は大切な方が亡くなった悲しみの中で、参列者への対応や葬儀社とのやり取りなどを行わなければならず、多忙を極めています。さまざまな判断を求められるため、全てを遺族が担うのは負担が大きくなるはずです。
遺族の負担を軽減するためにも、親族としてできる限りの手助けをすると良いでしょう。遺族にとっても、葬儀を執り行うに当たって信頼できる親族は頼りになる存在といえます。
ただしサポートをする際は、遺族の意向を大切にしなければなりません。遺族に不要な負担をかけないためにも、遺族の心情を理解し、寄り添いながらできる範囲での手伝いをしましょう。
一般参列者に対する振る舞い
親族は葬儀の際に親族席に着くため、一般参列者側から「この度はご愁傷さまでした」と声を掛けられる可能性が高いです。故人とは遠縁関係にある場合、戸惑ってしまうかもしれませんが、スマートな対応を心掛けましょう。
参列者から声を掛けられた場合は「恐れ入ります」「本日はありがとうございます」など、親族の一人として返答します。
故人の社会的地位が高かったり、参列者の人数が多かったりする場合は、遺族だけではなく親族も役割分担をして対応しなければならないケースもあります。遠縁の場合でも、状況に応じて親族として適切な対応を取りましょう。
親族がお手伝いできること
葬儀を執り行う際、遺族にはさまざまな対応や判断が求められます。負担を減らすために、親族もできる範囲で手伝うことが大切です。親族が手伝える内容を理解し、率先して手伝いましょう。
受付
一般的に、葬儀の受付業務は親族が担当することが多いです。葬儀における受付の業務は、主に芳名カードや芳名帳の対応、香典の受け取りなどです。
また一般参列者に対して、親族代表として初めて挨拶を交わす立場であり、参列者からの葬儀に対する印象に関わる重要な役割であるため、丁寧かつ礼儀正しい対応を心掛けましょう。
自分では対応できないことは、速やかに遺族や葬儀会社のスタッフに取り次ぎ、失礼や不備がないように取り組む必要があります。受付を依頼された場合に知っておきたいマナーや準備は、以下の記事で紹介しているのでぜひ参考にしてください。
>>葬儀の受付係を頼まれたとき!事前に知っておきたいマナーや準備
集計
香典の集計も、親族が手伝える役割の一つです。香典の集計では、受付で預かった香典袋内のお金を正確に数えて、喪主へ渡します。金銭を扱うため、遺族から信頼されている親族が担当することが一般的です。
受付業務と並行して行われることも多く、遺族から厚い信頼を寄せられる役目といえます。受付業務や集計業務は、指名されることが多いため、依頼を受けたら快く引き受けると良いでしょう。
湯茶接待
遺族控室では、葬儀に参列した親族や、会葬者をお茶とお菓子でもてなすことが一般的です。お茶やお菓子を用意する役割を遺族に代わって親族が担うことが多いでしょう。自宅での通夜や親族が集まる場面においても、湯茶接待は必要です。
また地域や慣習によっては、湯茶接待の際に白い割烹着や黒いエプロンを身に付ける風習があるため、あらかじめ確認しておくとスムーズに対応できます。
駐車場係
葬儀場で葬儀を行う際の駐車場誘導は、通常葬儀社が担当します。しかし会場や状況によっては、駐車場への誘導員が配置されないこともあります。
誘導員がいない場合、葬儀場の混雑を防ぐためにも、参列者の車両を駐車場まで誘導する駐車場係を親族から選出すると良いでしょう。
親族側の服装マナー
親族として葬儀に参列する際は、一般的な服装のマナーを心掛ける必要があります。葬儀での服装マナーを大人と子どもに分けて解説します。マナー違反とならない服装で葬儀に参列しましょう。
大人の場合
喪服には正喪服・準喪服・略喪服の3つの格式があり、故人との関係性で着用する喪服の格式が異なることが一般的です。
着用する喪服の格式目安として、基本的に喪主を務める場合や故人が3親等以内の近親者である場合は、正喪服(黒の喪服一式)を着用するのが望ましいとされています。男性の場合は黒紋付やモーニングコート、女性の場合は黒無地和服や黒のドレスが正喪服に当たります。
3親等よりも遠縁の親族は、準喪服での参列が一般的です。男性の準喪服とは、黒いスーツに白いシャツ、黒いネクタイ、黒いビジネスシューズとなります。女性の場合は、黒のワンピースや黒のアンサンブルなど、装飾のない黒い服装を着用します。メイクや髪型も清楚かつ控えめにすることが大切です。
通夜では略喪服を着用することがマナーとされていますが、親族は通夜も準喪服で問題ないケースが多いでしょう。
また下記でも服装マナーに関して詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
>>お葬式にふさわしい服装とは?持ち物や身だしなみのマナーを解説
子どもの場合
子どもが親族として参列する際は、学校の制服を着用するのが望ましいです。就学前や学校の制服がない場合は、白や黒のシンプルな服装であれば問題ありません。できるだけフォーマルな印象になるよう心掛けることが大切です。
男の子の場合は、白無地のシャツと黒や紺、グレーのズボンを選択しましょう。女の子の場合は白無地のブラウスと黒や紺、グレーのスカートやズボンなどがおすすめです。性別に関わらず、派手な見た目にならないように考慮した服装であれば、私服でも大丈夫です。
サイズがすぐに変わる子どもは喪服を購入しなくても問題ないため、フォーマルかつシンプルな服装を心掛けてください。
親族が用意する香典の相場
親族が葬儀に参列する際、故人との関係性に合わせて金額を包む必要があります。故人との等親が近ければ近いほど、香典の金額が高額になるのが一般的です。故人との関係性・等親別に、香典の金額相場をご紹介します。
故人との関係 | 等親 | 費用相場 |
両親 | 1等親 | 5万~10万円 |
兄弟姉妹 | 2等親 | 3万~5万円 |
祖父母 | 2等親 | 1万~3万円 |
義両親 | 1等親 | 5万~10万円 |
義兄弟姉妹 | 2等親 | 3万~5万円 |
叔父・叔母 | 3等親 | 1万~2万円 |
その他親族 | 4等親~ | 1万~2万円 |
故人との関係性が同じ場合でも、年齢で金額が増減するケースもあります。例えば長男・長女は弟や妹よりも多めに金額を包むという具合です。同じ関係性の親族がいる場合は、香典の金額を相談しても良いでしょう。
また一般参列者は5,000円程度を包むことが一般的なので、それを下回らないように気を付ける必要があります。
親族が準備する項目
親族として葬儀に参列するに当たって、供物として準備する内容をご紹介します。遺族の考えや慣習によって異なるため、それぞれの葬儀に合わせた準備を行いましょう。
スタンド花を用意する
スタンド花とは、祭壇の横に飾られる背が高い供花のことです。花の脚部分に自分の個人名や「子ども一同」「孫一同」と書かれた名札を添えて贈ります。スタンド花は故人への敬意を表しながら、遺族への配慮も同時に示せる供物です。
親族の場合は同じ立場にある人々が事前に話し合った上で、花の費用を分担して連名で贈るのが慣習となっています。同じ立場の人物がいない場合は、個人名で贈っても良いでしょう。
スタンド花は必須ではないため、よく話し合った上で、どうするかを決定するのがおすすめです。
果物や缶詰などの盛篭
盛篭とは故人に捧げる特別な供物を指し、遺族への弔意を表す手段となります。大分県を起源とする風習でしたが、現在は全国へと広まり、葬儀の慣習として定着しました。
盛篭の中には果物や飲み物、米などの乾物、調味料、線香、ろうそくなどを詰めて贈るのが一般的であり、造花や白黒のリボンを用いて装飾されます。盛篭もスタンド花と同様に、祭壇の横に飾られるケースがほとんどです。
盛篭は、悲しみの中に温かさを感じられます。スタンド花と同様に、同じ立場の人同士で話し合って贈るかどうかの判断をするのがおすすめです。
玄関口に飾る花輪
花輪は自宅や寺社で葬儀を執り行う際に、玄関先を華やかにする目的で贈られていました。葬儀場の入り口やホールに置く花輪を供物として贈るのも、故人へのお悔やみの気持ちを伝える手段として有効です。供花には生花を用いられることが多いですが、花輪は造花であるケースがほとんどです。
花輪を飾るには多くのスペースが必要となるため、都市部を中心に、葬儀場によっては花輪を飾らないことがあります。まずは葬儀社に相談をしてから花輪を贈りましょう。
お菓子や飲み物などの供物
葬儀の際に供物として、お菓子や飲み物を贈るのも良いでしょう。「花や盛篭を贈るほどの関係性ではない」「同じ立場の方がいない」「高額な供物は贈りにくい」と感じている方におすすめです。
お菓子や飲み物を贈る際は、葬儀用の熨斗(のし)を添えましょう。葬儀用の熨斗は、白黒の水引が印刷されているのが一般的です。地域によっては黄白の水引になるため、事前に確認しておきましょう。
また表書きも宗派によって異なります。浄土真宗は「御仏前」と記載します。それ以外の宗派は「御霊前」と記載しましょう。
親族が通夜に参加する際の流れ
親族は、通夜の流れが一般参列者とは異なります。親族が通夜に参加する際に慌てなくて済むよう、一連の流れを事前に確認しておきましょう。
1時間前に到着して準備を始める
故人を起点として3親等内の近親者は、通夜の1時間前には式場へ到着しておく必要があります。直前で焦らないように、自分の席の確認や焼香の手順に関する説明を受けたり確認したりしましょう。
また親族として受付や駐車場係などの役割を任せられている場合は、一般の参列者が到着するよりも早く持ち場について、業務の詳細を確認します。
通夜を執り行うに当たって分からないことや判断に困ったことがあれば、都度葬儀社に確認し、スムーズに進められるよう努めましょう。
お焼香を行う
通夜の最中は、指示に従ってお焼香を行います。お焼香の順番は、故人との関係性や、等親で大まかには決まっていますが、慣習によっても異なります。慣習や個人との関係性に配慮して、順番通りにお焼香を行いましょう。
一般的にお焼香を行う順番は、以下の通りです。
- 喪主
- 子ども
- 両親
- 孫
- 兄弟、姉妹
- 配偶者の兄弟、姉妹
- 叔父、叔母
- 甥、姪
- その他親族
- 関係者
お焼香はさまざまなやり方があり、立場や宗派によっても異なります。お焼香の正しいやり方やマナーについて、以下の記事でご紹介していますので、参考にしてください。
>>焼香の正しいやり方|立礼・座礼・回し焼香における作法の違い
通夜振る舞いに参加する
通夜振る舞いは、通夜の儀式が終わった後に設けられる会食の場です。親族か一般参列者かどうかを問わず、参列者は全員参加するのがマナーです。
通夜振る舞いは、遺族が僧侶や参列者に対して感謝の気持ちを示すために設けられます。またお清めや故人との最後の食事という意味も含んでいます。
遺族に配慮して1時間以内を目安に退席しましょう。その際、遺族に対して寄り添う言葉を掛けてから退出してください。
親族が葬儀に参加する際の流れ
通夜同様、親族が葬儀に参列する際の流れも一般参列者とは異なります。親族は葬儀を執り行う前後でやることがあるため、一連の流れを把握して、スムーズに葬儀を進行できるよう心掛けましょう。
40分〜1時間前に到着して準備する
葬儀が執り行われる40分〜1時間前には、到着し遺族控室に立ち寄って遺族に挨拶をしましょう。役割がある場合はそれぞれの持ち場につき、葬儀をスムーズに進められるように配慮して業務を遂行します。
家族葬の場合は一般参加者が少なく、通夜よりもやることが少ないかもしれません。特に役割がないようであれば、自分の席を確認しておくと良いでしょう。
お別れの儀・納棺に立ち会う
葬儀内でのお焼香が終わったら、お別れの儀と出棺に立ち会います。お別れの儀では、祭壇から棺が降ろされ、故人の周りに花を飾っていきます。
お別れの儀の後は、会場から火葬場に向かう霊柩車に棺を運ぶため、移動の際にサポートが必要です。特に故人との関係性が深く、等親が近い男性は率先して手伝うよう心掛けましょう。人手が足りなければ、遠縁の場合でも手伝うケースがあります。
精進落としの準備
霊柩車を見送った後、親族は精進落としに向けて準備を行います。精進落としとは、火葬の後に遺族が親族や参列者などに対して、感謝の気持ちを込めて設ける食事の席のことです。
精進落としを火葬場で行う場合は、一緒に向かう必要があります。一方で、一度葬儀場に戻って精進落としを行う場合は、そのまま残って準備します。
必ずしも火葬場に行く必要はありませんが、遺族から「来て欲しい」と言われた場合は、一緒に向かいましょう。
まとめ
葬儀における親族のマナーは、故人との関係性や等親によっても異なります。自分が故人から見て、何等親に当たるのかを確認した上で、遺族や参列者に配慮した振る舞いをするように心掛けましょう。宗教や慣習によっても異なりますが、服装や供物、通夜・葬儀の流れもあらかじめ確認しておくと、当日に慌てずマナー違反になることも防げます。
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