献杯とは、葬儀などの場で杯を捧げることを言います。乾杯と献杯は似ているように思えますが、行われる意味や役割は全く異なります。「献杯」という言葉は知っていても、具体的にどのようなことをするか分からない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、献杯の正しいマナーやタイミング、注意点などについてご紹介します。
献杯とは
献杯とは、故人に対して敬意を表し、杯を捧げることをいいます。一般的には、葬儀や法要後に参列者が集まって会食を行う際の挨拶に続いて行います。献杯は宗教や宗派などによる規定はなく、昔からの習慣として行われています。
献杯と乾杯の違い
「献杯」と「乾杯」は根本的に意味が異なります。乾杯は、主に結婚式などの慶事の場などで使われる言葉であり、お祝いや祈りを捧げて杯を飲みほすことを意味します。
一方、献杯は葬儀や法事などの弔事の食事の席で使用される言葉で、相手に杯を捧げ、敬意を示すという意味が強くなっています。そのため、互いにグラスを打ち合わせて気分を盛り上げる乾杯とは大きく異なり、献杯は厳かな面を持ちます。
献杯には期限はない
献杯は故人を偲んで行われます。そのため、多くは葬儀や法事の後の会食時に行われますが、「何回忌まで献杯を行う」という期限はありません。故人を偲ぶ場や機会があれば、法事などでなくとも献杯は行われます。
献杯を頼まれるタイミング
献杯の唱和は、喪主や故人との関係の深い友人などに依頼されることが多いようです。
では、献杯はどのタイミングで依頼されるものなのでしょうか。
葬儀や法事のお知らせのタイミング
献杯の依頼は、葬儀や法事のお知らせとともに、喪主から依頼されることが多いです。献杯の前に挨拶を行う必要もあるため、当日までに挨拶内容を考えておくとスムーズに進めることができます。なお、献杯を行う方法に決まりはありません。
献杯を行う人は、故人と親しかった親族や友人に限らず、会社関係の方が担う場合もあります。もし依頼された場合は、できる限り断らずに、依頼を引き受けるようにしましょう。
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当日に頼まれるケースもある
場合によっては、葬儀や法事の当日に献杯の挨拶を依頼されることがあります。急な依頼で準備も何もしてないとは思いますが、献杯の挨拶は1分程度で問題ありません。故人への想いを、献杯の挨拶にかえましょう。
献杯の一般的な流れ
献杯の一般的な流れは以下の通りです。
- 故人の位牌へ飲み物を注ぐ。
- 参列者へ飲み物が注ぐ。
- 遺族の代表者が挨拶を行う。
- 代表者の挨拶後、献杯の挨拶を行う。
- 挨拶を終えたら「献杯」の発声を行う。
- 参列者はグラスを胸の前に差し上げ、静かに「献杯」と発声して、グラスに口を付ける。
- 献杯が終われば食事を始める。
献杯の挨拶は、主に通夜や葬儀、法事後の会食時に行われます。そのため、式場から会食会場に移動し、参列者が着席して、全員に飲み物が行き渡ってから始めます。飲み物は喪主が参列者一人ひとりのグラスに注ぐ場合もあれば、葬儀社のスタッフが注ぐ場合もあります。
献杯の挨拶を行う人は、全員に飲み物が行き渡ったかをきちんと確認しましょう。全員に飲み物が行き渡ったら、遺族の代表者の挨拶を経て、献杯の挨拶を行います。
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献杯の挨拶の仕方(例文付き)
ここからは、献杯の挨拶について解説していきます。様々な立場に合わせて挨拶の例文をご紹介しますので、献杯を依頼された場合の参考にして下さい。
葬儀後の会食での献杯の場合
まず初めに最も一般的である葬儀後、会食で献杯を行う場合の挨拶をご紹介します。
一般的な献杯挨拶の例文
「只今ご紹介いただきました(故人との関係)の、〇〇〇〇と申します。このように皆様にお集まりいただき故人も喜んでいることと存じます。ここに故人を偲び、皆さまに献杯をお願いしたいと存じます。皆さまお手元にグラス(または杯)のご用意をお願いいたします。それでは、献杯とご唱和をお願いいたします。献杯。ありがとうございました。」
喪主(長男)が献杯挨拶を行う場合
「喪主を務めました(故人)の長男〇〇と申します。昨日の通夜、そして本日の葬儀とお忙しい中皆様方のご参列をいただきまして、深く感謝申し上げます。突然の逝去でありましたもので、まだ心もとない気持ちも残っているのが本音ではございますが、今後は残された母を支えながら、家族一同努力していく所存でございます。あらためまして、これからも皆様方のご支援やご協力をいただければ有り難く存じます。それでは皆様、献杯のご唱和をお願いいたします。献杯。ありがとうございました。」
友人が献杯挨拶を行う場合
「只今ご紹介をいただきました〇〇と申します。△△さんとは学生時代からの付き合いですが、まさか、このような形で突然のお別れをすることになるとは思っていなかったので、今でも信じられない気持ちでいっぱいです。ご遺族のご心中を思うと言葉もございませんが、故人を偲びご冥福をお祈りして、献杯をさせていただきたいと思います。献杯。ありがとうございました。」
故人の弟が献杯挨拶を行う場合
「私は、故人の弟の〇〇〇〇と申します。通夜、葬儀と2日間にわたり、ご参列いただきありがとうございました。お祭りや花火大会など、とにかく賑やかなことが大好きな明るい性格の姉でした。このように皆様にお集まりいただき、姉もきっと喜んでいることと思います。ここで姉を偲んで献杯を行いたいと思います。それでは皆様、献杯のご発声をお願いいたします。献杯。ありがとうございました。」
親族代表として献杯挨拶を行う場合
「本日はお忙しい中、足をお運びいただきありがとうございました。私は、故人の叔父の〇〇〇〇と申します。お陰様で通夜、葬儀共に無事に終えることができました。これもひとえに皆様のご厚意とお力添えのお陰と感謝しております。ささやかではございますが、食事の用意をいたしました。故人の思い出話などをしながらゆっくり召し上がってください。それでは献杯をさせていただきます。献杯。ありがとうございました。」
法事・法要後の献杯の場合
法事・法要後の献杯を行う場合の挨拶をご紹介します。
喪主の献杯挨拶の例文
「喪主の〇〇です。本日は父の一周忌法要に参列いただき、誠にありがとうございました。今でも時々、ふと側に父がいるように感じることがあります。気持ちが落ち込んだ時は父の口癖だった「やればできる」という言葉が、父の声で耳の奥に響くように感じます。今でも存在感のある父ですが、父が父らしくいられたのはお集まりくださった皆様方のお力添えがあってこそだったと思います。ささやかではございますが御食事をご用意いたしますので、父を偲びながらお召し上がりください。それでは皆様、献杯のご唱和をお願いいたします。献杯。ありがとうございました。」
甥が献杯挨拶をする場合の例文
「本日はお集まりいただきましてありがとうございました。私は、故人の甥の〇〇〇〇と申します。月日が流れるのは早いもので、おかげさまで無事に一周忌を済ませることができ、叔父も安心していることと思います。この席では、皆様と叔父との懐かしい思い出話を伺いながら、故人を偲び冥福を祈りたいと思います。それでは、献杯のご唱和をお願いいたします。献杯。ありがとうございました。」
献杯の挨拶で使ってはいけない言葉
ここでは、献杯の挨拶で使ってはいけない言葉や注意点について紹介します。
- ●献杯の挨拶は短くまとめる
挨拶は1分程度にとどめて、簡潔な挨拶にしましょう。 - ●忌み言葉を使わない
挨拶では、忌み言葉を使わないように注意しましょう。
- ・不吉な言葉(切れる、消える、終わる、落ちる、数字の四(死)、数字の九(苦)など)
- ・不幸が重なることを連想させる言葉(わざわざ、次々、重ね重ね、いよいよ、どんどん など)
- ・不幸が繰り返されることを連想させる言葉(再び、再々、また、ひき続き、続いて、追って など)
- ・死に関わる言葉(死ぬ、生きる など)
- ・笑顔での挨拶は避ける
弔事の場です。ご遺族のことを考え、笑顔での挨拶は控えましょう。
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- 献杯が終わるまでは食事に手を出さない。
- 献杯の唱和は静かな声で行う。
- 挨拶を終えても拍手はしない。
- 杯を高く掲げずに、胸のあたりにとどめる。
- グラスは打ち合わせない。
上記のマナーや注意点を守り、故人との思い出話に花を咲かせましょう。
※宗教や宗派によっては献杯を行わない場合もありますので、あらかじめ葬儀社や僧侶へ確認しておくことをおすすめします。
まとめ
今回の記事では、献杯の挨拶の一般的な流れや正しいマナー、乾杯との違いなどを紹介してきました。献杯の挨拶を依頼されることは非常に光栄なことです。急なタイミングでの依頼だとしても、マナーを守った挨拶ができるように心掛けましょう。
「サン・ライフ」では、24時間対応のコールセンターも完備していますので、葬儀に関する疑問やお悩み事がある際は、お気軽にお問い合わせください。スタッフが親身になってご対応いたします。大切な故人との最期のお別れを全力でサポートいたします。