
葬儀の際に、お忙しい中駆けつけてくださった参列者の方々へ、感謝の気持ちを伝えるためにお渡しするのが「会葬礼状」です。しかし、いざというとき「どのような文章を書けばいいのだろう?」「いつ、誰に渡すのが正しい作法なのだろう?」と、その書き方やマナーについて戸惑う方もいるでしょう。
本記事では、会葬礼状の基本的な知識から、具体的な書き方のルール、すぐに使える例文、そして渡すタイミングや注意点まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。
会葬礼状の基本知識
初めに、「会葬礼状」がどのようなものなのか、その基本的な意味や役割について解説します。混同されがちな「会葬御礼」や「香典返し」との違いについても、ここでしっかりと確認しておきましょう。
会葬礼状の読み方と基本的な意味
会葬礼状は「かいそうれいじょう」と読みます。通夜や葬儀・告別式に参列(会葬)していただいた方々に対し、喪主や親族一同から深い感謝の気持ちをお伝えするための正式な挨拶状です。
故人に代わって、弔問いただいたことへの感謝、そして生前お世話になったことへの御礼を伝えるという、非常に大切な役割を担っています。書面を通じて、礼を尽くすための重要なツールといえるでしょう。
会葬礼状を渡す目的と役割
会葬礼状には、主に以下のような目的と役割があります。
- 参列への感謝を伝える
- 葬儀が無事に終了したことの報告
- 生前の故人への厚誼(こうぎ)に対する感謝
これらに加え、会社によっては会葬礼状が葬儀に参列した証明となり、忌引休暇を申請する際の実用的な役割を担う場合もあります。
会葬礼状を渡すタイミング・相手
会葬礼状を渡すタイミングは、通夜、または葬儀・告別式の当日です。一般的には、参列者が受付で芳名帳に記帳を済ませた後、返礼品などと一緒にお渡しします。
お渡しする相手は、香典の有無や金額にかかわらず、参列してくださった方全員です。弔問のみで香典を辞退された方にも、足を運んでいただいた感謝の気持ちとして必ずお渡しするのがマナーです。
近年増えている家族葬の場合でも、親族以外に参列者がいる場合は、感謝の気持ちを表すために会葬礼状を用意することが望ましいでしょう。
「会葬御礼」や「香典返し」との違い
葬儀に関わる返礼品には、会葬礼状の他に「会葬御礼」や「香典返し」があり、混同されがちです。それぞれの目的とタイミングの違いを理解しておきましょう。
「会葬御礼」とは、参列への感謝としてお渡しする500~1,500円程度の品物(ハンカチやお茶、塩など)のことです。会葬礼状は、多くの場合この会葬御礼の品に添えて、一緒に手渡されます。
「香典返し」は、いただいた香典に対するお返しの品物です。香典をくださった方のみに、後日(四十九日の忌明け後など)お送りするのが一般的です。葬儀当日にお渡しする会葬礼状や会葬御礼とは、渡す相手もタイミングも異なります。
会葬礼状の準備
会葬礼状は通夜や葬儀の当日に参列者へお渡しするため、それまでに印刷を終え、準備を完了させておく必要があります。準備の方法には、主に「葬儀社に依頼する」場合と「自作する」場合があります。
多くの場合、葬儀社に依頼するのが一般的です。葬儀の打ち合わせの際に、会葬礼状についても相談すれば、文面の提案から印刷、必要枚数の確認まで含めて手配してくれます。
自作する場合は、文面作成から印刷まで、ある程度の時間的余裕を見て早めに準備を始めることが大切です。
作成枚数は、後日訃報を知って自宅へ弔問に訪れる方がいる可能性も考慮し、想定人数の10~20%増しにするのがおすすめです。予備が数枚手元にあれば、万が一の際にも落ち着いて対応できます。
会葬礼状の基本的な書き方
会葬礼状は、故人に代わって感謝を伝える大切な挨拶状です。ここでは、心のこもった、かつ失礼のない会葬礼状を作成するための重要なポイントを、構成要素から細かいルールまで順を追って解説します。
会葬礼状の構成要素
会葬礼状は、一般的に以下の要素で構成されます。これらの要素を順に盛り込むことで、丁寧で分かりやすい文章になります。
- 故人の氏名と参列への感謝
冒頭で誰の葬儀であるかを明確にし、参列いただいたことへの感謝を述べます。故人の氏名には、喪主から見た続柄を添え、「故 祖父 〇〇 儀」のように「儀」を付けます。この「儀」は「~のこと」「~に関する件」という意味で、へりくだった表現です。 - 生前の故人への厚誼(こうぎ)に対する感謝
故人が生前お世話になったことへの感謝を伝えます。「生前中は格別のご厚情を賜り厚く御礼申し上げます」といった一文を加えます。 - 書面での挨拶となることへのお詫び
本来であれば直接お会いして御礼を申し上げるべきところを、書面で済ませることへのお詫びを述べます。「略儀ながら書中をもちまして御礼申し上げます」などの表現が一般的です。 - 日付
葬儀・告別式の日付を記載します。漢数字を用いるのが正式です。 - 差出人の情報
最後に、喪主の住所・氏名を記載し、「外 親族一同」と書き添えます。
句読点・時候の挨拶・重ね言葉に注意
伝統的に、毛筆で書かれていた正式な書状には句読点を用いない慣習がありました。その名残から、会葬礼状でも句読点を使わないのが一般的です。
また手紙で使う「拝啓」や「敬具」といった頭語・結語は、一般的に省略します。すぐに本題の御礼から書き始めて問題ありません。
加えて「たびたび」「くれぐれも」「重ね重ね」といった重ね言葉は、不幸が重なることを連想させるため、弔事では使ってはいけない忌み言葉とされているため、使用を控えましょう。
用紙・筆記具の選び方と文字の書き方
伝統的には、和紙の一種である奉書紙(ほうしょがみ)を二つ折りにして用いるのが正式です。現代では、折りたたむタイプのカードや、官製はがき程度の厚みがある白無地のカードなども広く使われています。葬儀社に依頼すれば、専用の用紙やカードを用意してくれます。
文字は、毛筆または筆ペンで書くのが丁寧です。ただし、用意するのが難しい場合は、黒インクの万年筆や濃い黒のボールペンを使用しても問題ありません。
差出人の書き方・連名の場合の書き方
差出人は、葬儀を主催した喪主の情報を記載するのが基本です。最後に喪主の住所と氏名を書き、その横に「外(ほか) 親族一同」と書き添えます。これは「喪主だけではなく、親族全員からの感謝です」という意味合いを示す言葉です。
喪主が複数いる場合は、連名で記載します。会社や団体が主催する葬儀の場合は、差出人もそれに合わせます。葬儀の責任者である葬儀委員長と、遺族代表である喪主を併記するのが一般的です。
【例文集】さまざまなケースで使える会葬礼状の文例
ここでは、実際の葬儀でそのまま使える会葬礼状の具体的な文例を、さまざまなケース別にご紹介します。基本的な構成は共通していますが、故人様と喪家の状況に合わせて、適した言葉を選ぶことが大切です。各文例の後に記載するポイント解説も参考に、ご自身の言葉で感謝の気持ちを伝えるための雛形としてご活用ください。
一般的な葬儀で使える基本の文例
基本の文例は以下の通りです。
亡父 太郎 儀 葬儀に際しましては
ご多忙中にもかかわらずご会葬を賜り
またご丁重なるご芳志を賜り誠に有難く厚く御礼申し上げます
早速拝眉の上御礼申し上げるべきところ
略儀ながら書中をもちまして謹んでご挨拶申し上げます
令和七年六月十日
神奈川県横浜市〇〇区〇〇一-二-三
喪主 山田 一郎
外 親族一同
家族葬・近親者のみの葬儀の場合の文例
故 母 花子 儀
葬儀に際しましてはご多用中にもかかわらずご会葬賜り
誠にありがとうございました
故人の生前の遺志によりまして
葬儀は近親者のみにて執り行わせていただきました
本来であれば早速お目にかかり御礼申し上げるところではございますが
略儀ながら書中にてご挨拶申し上げます
生前中に賜りましたご厚情に心より感謝申し上げます
令和七年六月十日
東京都町田市〇〇一-二-三
喪主 鈴木 二郎
外 親族一同
「故人の生前の遺志によりまして 葬儀は近親者のみにて執り行わせていただきました」という一文により、なぜ葬儀を小規模にしたのかという理由を参列者に伝えることができます。
香典を辞退する場合の文例
亡祖母 とめ 儀
葬儀告別式に際しましては ご多忙中のところご会葬賜り
誠に有難く厚く御礼申し上げます
誠に勝手ながら 故人の遺志により
御香典御供花等のご厚志につきましては固くご辞退申し上げます
皆様のお気持ちだけに心より感謝申し上げます
生前のご厚情に深く感謝し
略儀ながら書中をもちまして謹んで御礼申し上げます
令和七年六月十日
神奈川県川崎市〇〇区〇〇一-二-三
喪主 佐藤 三郎
外 親族一同
「御香典御供花等のご厚志につきましては固くご辞退申し上げます」と明確に記載することで、香典を準備してくださった方にも、そのお心遣いへの感謝を示しつつ、こちらの意向を改めて丁寧にお伝えできます。
キリスト教の場合の文例
故 父 ヨセフ 儀
召天の際には ご多忙中にもかかわらずご会葬いただき
またご懇篤なるご弔慰を賜りまして心より感謝申し上げます
故人が地上での務めを終え 神の御許に召されましたことをご報告申し上げます
生前中に賜りましたご厚情に深く感謝いたしますとともに
今後とも変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます
略儀ながら書中をもって御礼申し上げます
令和七年六月十日
神奈川県相模原市〇〇区〇〇一-二-三
喪主 高橋 四郎
外 親族一同
宗教による言葉の違いは非常に繊細なため、迷った場合は聖職者、あるいは担当の葬儀社に相談することをおすすめします。
会社関係・社葬の場合の文例
弊社 代表取締役社長 故 山田 太郎 儀
社葬に際しましては ご多用中のところ特別にご会葬を賜り
誠に有難く厚く御礼申し上げます
故人が在職中に賜りましたご厚情に深く感謝いたしますとともに
今後も皆様のご期待に沿えるよう社員一同力を合わせ社業に精励いたす所存でございます
何卒変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます
略儀ではございますが 書中をもちましてご挨拶申し上げます
令和七年六月十日
東京都千代田区〇〇一-二-三
株式会社サン・ライフ商事
葬儀委員長 専務取締役 鈴木 一郎
喪主 山田 花子
外 親族一同
故人の功績を讃え、残された社員がその遺志を継いでいくという決意表明を加えることで、関係者の皆様にも安心していただけるでしょう。
会葬礼状の適切な渡し方
通夜や葬儀・告別式の当日は、受付で参列者をお迎えする際に手渡すのが一般的です。参列者が受付で芳名帳(芳名カード)に記帳を済ませた後、会葬御礼の品物と一緒に、小さな手提げ袋などに入れてお渡しします。礼状が汚れたり折れたりしないように配慮しましょう。
なお、葬儀に参列できなかった方から弔電や供花、香典などを頂いた場合は、後日お礼として会葬礼状を郵送します。
まとめ
葬儀の準備は、悲しみの中で進めなければならず、心身ともに大きな負担がかかります。特に会葬礼状のような、細やかなマナーやしきたりが問われる事柄については、不安や疑問が尽きないことでしょう。そのようなときは、どうか一人で悩まず、私たち葬儀の専門家にご相談ください。
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