
お墓を建てるときに「墓標」「墓誌」「墓碑」「墓石」といった言葉が出てきますが、どのような意味があって、どう違うのかを知らない方もいるのではないでしょうか。特に墓標には三つの意味があるとされていて、しっかり理解していれば、お墓を建てるときの打ち合わせをスムーズに進められるはずです。
本記事では、墓標とは何かが知りたい方に向けて、基本的な三つの意味や立てる理由、注意点について解説します。お墓を建てるときに知っておきたい言葉との違いについてもご紹介するので、ぜひ確認してみてください。
墓標の意味3つ
墓標には以下のような3つの意味があります。
- 埋葬箇所に仮で設置する目印
- お墓の総称
- 墓石に刻む墓誌
ここではそれぞれの意味について解説します。
1.埋葬箇所に仮で設置する目印
墓標には、埋葬箇所に仮で設置する目印という意味があります。墓地にお墓を建てるスペースを確保したものの、すぐには墓石を用意できない場合に、角材を目印として立てておくのです。墓標には長さ約120~180cmの生木の角材が使われます。目印に使われる角材は「木標(ぼくひょう/ぼひょう)」とも呼ばれています。
墓標は、かつて土葬が主流とされていた時代に多く使われていました。中には、遺骨を自宅に置くと成仏できないのではないかという考えから、墓標を検討している方もいるかもしれませんが、火葬を行うようになってからは、墓石ができるまで骨壺を自宅で保管するのが一般的です。そのため、以下のような条件がそろっているときに墓標を立てることを考えると良いでしょう。
- 墓地の使用権を取得していること
- しばらく墓石を建てられない事情があること
- 骨壺を自宅で保管できない事情があること
これらの条件を満たしていると、墓石ができる前に骨壺を墓地に埋葬し、墓標を立てておくことが可能です。ただし、霊園によっては「2年以内に墓石を建立する」というように墓石を用意しなくてはいけない期間を定めていることもあるため、確認が必要です。
2.お墓の総称
現在は、故人を埋葬した印として、墓地に墓石を建てるのが一般的です。墓石には外柵や石碑、墓誌などがあり、これらをまとめたお墓の総称として墓標という場合があります。外柵は納骨室のある墓石の土台に当たる部分のことで、石碑は外柵の上の部分を指し、墓誌は故人の生前の名前や戒名、没年月日などが記されます。前述の通り、墓標は「お墓の目印」としての意味が強いです。そのため墓石の中でも「先祖代々之墓」と刻まれている竿石を指して墓標と呼ぶケースもあります。
故人を埋葬した印として建てられる墓石は、墓標と近しい意味を持っているといえるでしょう。ただし、墓石を取り扱っている石材業者をはじめ、墓石業界では墓石と墓標を混同しないように区別しています。
3.墓石に刻む墓誌
墓誌とは、故人の氏名や戒名、没年月日を記した石板のことです。これを墓標と呼ぶこともあります。一般的には石碑の横に墓誌を建てますが、十分なスペースが確保できないときには、石碑の側面や拝石と呼ばれるお墓の手前に敷かれている石などに彫るケースもあります。墓誌は石碑の大きさや石の種類に合わせて作られ、大きさや作りはさまざまです。
なお、墓石業界では用語の区別をはっきりさせているため、墓誌を墓標と呼ぶことはほとんどありません。
墓標と似た言葉との違い
これまでに解説した通り、墓標にはさまざま意味があり、似たような言葉もあります。しかし、石材業者はそれぞれの言葉が混同しないように線引きを行い、使い分けています。そのため、言葉の意味を正しく理解できていないと、墓石を注文する際の打ち合わせで認識がずれてしまうことも考えられるでしょう。
ここでは墓標と似た言葉の意味とそれぞれとの違いについて解説します。打ち合わせをスムーズに進めるためにも、しっかり確認してみてください。
墓誌との違い
墓誌の「誌」という漢字は、「事実を記した文章や記録」という意味を持っています。前述した通り、墓誌はそのお墓に納骨している方の生前の氏名や戒名、没年月日、享年、略歴などを彫った石板のことです。墓誌自体には納骨できないため、参拝対象ではなく、そのお墓に誰が埋葬されているのかを分かりやすくするために設置されるものです。
墓標と墓誌は埋葬した印であるという意味では同じであるため、同じ意味として使われているケースも少なくありません。
墓碑との違い
墓碑の「碑」という漢字の意味は、「石面に文字を彫って立てた石」です。墓碑はお墓の一番上に置く石(竿石)のことで、「先祖代々之墓」「〇〇家之墓」などの文字を彫ります。
墓標を「お墓の総称」として捉えた場合、墓碑は墓標の一部となります。お墓は墓碑を含め、外柵や石碑、墓誌などで成り立っており、それらをまとめて墓標というため、墓標の中に墓碑が含まれているのです。
墓石との違い
墓石とは、石材を使って建てたお墓のことです。周辺の土台(石板)や外柵、石碑、墓誌、石塔など石でできた構造物をまとめて墓石と呼びます。
墓標もお墓の総称としての意味があるため、ほとんど同じ意味として扱われます。ただし、墓石は石材でできたお墓だけを指すのに対し、墓標はお墓の目印であれば、材質は問いません。墓石ができるまで仮で設置する際は、生木の角材が使われるのがその例といえるでしょう。
墓標の費用
墓標自体を立てる費用の相場は10万円前後です。墓標を立てる際はあらかじめ整地し、外柵を設けなくてはなりません。また骨壺を埋葬するときには、土にそのまま埋めるのではなく、「カロート(納骨室)」を作ることもあるため、事前に石材業者に見積もりをとってもらうのが良いです。
墓地のスペースは確保できたものの、事情があってしばらく墓石を建てられないときには、墓標での埋葬も選択肢の一つです。ただし、墓標は墓石が用意できるまでの「仮の」お墓であることは覚えておいてください。墓標には生木を使用するため、石に比べて耐久性が劣ってしまうため、可能な限り早く墓石を準備し、埋葬してあげましょう。
墓標を立てる際の注意点
中には「遺骨を自宅に置いておくのは良くないこと」と考えて、「とにかく納骨だけはしなくては」という思いから墓標を検討している方もいるでしょう。しかし実際には、遺骨を自宅に置いていくことは禁止されていません。そのため、納骨を急いで墓標を用意する必要はなく、墓石を建ててから納骨しても問題ないのです。
もし墓石の用意のめどが立たず、納骨がいつになるか分からないということであれば、「手元供養」も検討するのがおすすめです。手元供養とは、自宅で遺骨を保管し、供養する方法で、手元供養の方法には以下のようなものがあります。
- 故人をイメージした色やデザインの骨壺に遺骨を移して保管する
- 供養のためのスペースを設けて遺骨や遺影、おりん、線香立てを置く
ただし、遺骨を自宅で保管するよりも、仮のお墓に埋葬してあげたいという気持ちがある場合は、墓標を立てるのがおすすめです。
まとめ
墓標とその他の言葉の意味をしっかり理解しておけば、墓石の準備をする際の石材業者との打ち合わせがスムーズに進められます。墓地のスペースを確保したものの、墓石がしばらく用意できないという場合には、墓標の設置を検討してみるのも良いかもしれません。もし「早く墓地に埋葬しなければ」という思いで墓標を考えているのであれば、手元供養という方法もあります。ご自身の事情に合わせた方法で故人を供養してあげましょう。
サン・ライフでは墓標の設置の際に必要な開眼供養の手配や手元供養の相談などを行っています。墓標を立てるかお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。