家族を亡くすと喪失感にあふれるとともに、さまざまな手続きが必要になります。
例えば病院では死亡を公式に証明するために、死亡診断書を受け取る必要があります。また葬式の準備のため、病院から葬儀場への搬送を依頼しなくてはなりません。しかし病院での対応が分からないと、混乱の中で全てをスムーズに進めるのは困難です。
そこで本記事では病院で亡くなった場合に行うべき手続きや葬式の準備に関して、順を追って説明します。落ち着いて故人とのお別れを迎えるためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
身内が病院で亡くなった後の流れ|病室でやること
身内が病院でなくなった場合は、故人の安置場所を決め、移送と葬式の準備ができるよう速やかに行動する必要があります。ここでは、病院で身内が亡くなってすぐに行う内容を解説します。
末期の水をとる
まず故人の口元に水を含ませる「末期の水」という儀式を行います。末期の水は、お釈迦様の入滅時に口の渇きを訴え、鬼神が水を捧げたという故事に由来するとされている仏教の儀式です。
故人の魂が安らかに浄土へ旅立てるよう、最後の水を飲ませてから見送るという思いが込められています。ただし浄土真宗ではすぐに成仏すると考えられるため、末期の水は行いません。
末期の水の方法は、以下の通りです。
- 脱脂綿やガーゼを割り箸で挟み、水を含ませる
- 故人の唇をなぞる
このときは故人に語りかけ、感謝の気持ちや最後の別れの言葉を伝えましょう。
エンゼルケア(死化粧)を行う
エンゼルケアとは亡くなった故人の体を清め、故人の生前の姿に近づける一連のケアのことです。故人の体を丁寧に拭き清めることから始まり、闘病中に生じた痕跡や傷跡を覆う処置、また穏やかな表情を保つための整顔、さらにはナチュラルなメイクアップが含まれます。
エンゼルケアは単なる肉体的なケアにとどまらず、精神的にも大きな意味を持ちます。遺族にとって、闘病や亡くなった際の苦しみが残った表情を見て別れを告げるのは非常につらいものです。エンゼルケアによって故人は安らかな表情を取り戻し、遺族も悲しみを和らげ心の整理をつけやすくなります。
エンゼルケアは病院の看護師、病院が提携している業者、または遺族が手配する葬儀社などが行います。エンゼルケアの詳細や費用は、下記の記事も参考にしてください。
>>エンゼルケアとは?エンゼルケアは必要?全体にかかる費用とは
医師から死亡診断書を受け取る
死亡診断書は故人の診療を担当していた医師が、死亡に至る経過を詳細に記録し作成してくれます。故人の死亡を医学的および法律的に証明する非常に重要な書類で、火葬や埋葬の手続きを進めるために欠かせません。
この書類がなければ、故人は法的に生存していると見なされるため、火葬や埋葬が行えず、さらに課税や年金の支給が継続されるなどのトラブルが発生する可能性があります。
身内が病院で亡くなった後の流れ|安置後にやること
病院で人が亡くなると、病室から安置室へ一時的に搬送されます。その後、各所へ訃報の連絡をする必要がありますが、連絡順は状況によって異なるので柔軟に対応してください。
親族や知人に訃報連絡を入れる
故人が亡くなる前に死期が近いと感じた場合は、できるだけ早めに身内や親しい方に連絡を入れましょう。家族や親しい友人にとっても、心の準備を整えるには時間が必要です。
そして医師により臨終が確認された際は、速やかに近親者や親しい知人へ訃報を伝えます。この時点では、葬式の日程や詳細がまだ決まっていなくても問題ありません。まずは故人の逝去を知らせることが重要です。
訃報のお知らせをどのように行えば良いか詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
>>【例文あり】家族葬で訃報のお知らせにマナーはある?タイミングや注意点を解説
菩提寺に連絡する
次に菩提寺へ連絡します。ここでは正確な情報を伝える必要があります。具体的には故人の氏名(漢字表記を含む)、死亡日時、享年(数え年または満年齢)、生年月日(西暦と和暦の両方)などです。
特に享年は地域や宗派によって数え方に違いがあるため、事前の確認が必要になるかもしれません。菩提寺へは葬儀社と打ち合わせを行ってから連絡するのが一般的で、繰り返し何度も連絡すると業務の妨げになる可能性もあるので注意しましょう。
葬儀社にご遺体の搬送を依頼する
病院ではご遺体を長時間安置できないため、遺族は早急に搬送先を決めて葬儀社に依頼する必要があります。通常、病院での安置時間は2〜3時間程度が目安といわれています。
葬儀社はご遺体の搬送に加え、葬式全体に関わるさまざまな手続きや準備、必要な手配をサポートしてくれる存在です。具体的には葬式の日程調整、会場の手配、火葬や埋葬の手続きなど専門的な知識が必要となる部分を遺族に代わって進めてくれます。
ただし深い悲しみや混乱の中では、葬儀社から提案された全てのプランやオプションを無意識に受け入れてしまうケースも存在します。後で「本当に必要だったのか」「過剰なサービスに高額な費用を支払ってしまった」と後悔してしまうかもしれません。葬式の準備は時間的に制約があるものの、各葬儀社が提供するプランや費用をできる限り冷静に判断・比較して決定しましょう。
葬儀社で失敗しないポイントを以下の記事でまとめているので、参考にしてください。
>>葬儀社の選び方で失敗しないコツは?お葬式で後悔しないためのポイント
退院の手続きを行う
搬送の手配が完了した後は、搬送車が病院に到着するまでの時間を使って退院の手続きを進めましょう。通常は病院側で必要な書類を用意してくれるので、指示に従って必要事項を記入するのみとなります。
医療費や入院費の支払いは、後日精算となる場合が一般的です。ただし病院によってはその場で支払いを求められることもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
病院からご遺体を搬送する
最後に故人を病院から搬送します。葬儀社はご遺体を病院からご自宅または斎場など、指定の場所へ安全かつ丁寧に移送するサービスを提供しています。葬儀社が決まれば後はお任せするのみです。
注意したいのは運ぶ場所です。ご遺体を自宅へ搬送する場合は、棺を置くための十分なスペースと、ご遺体を適切な状態で保てる環境を確保する必要があります。一方で斎場に搬送する場合は、設備が整っており葬式開始まで安全な状態で預けられます。ただし利用料金が発生する可能性があるため、葬儀会社と契約する際に確認しましょう。
なお株式会社サン・ライフでは、ご安置室が1日無料になる特典をご用意しております。ご遺体の搬送に関して詳細を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
>>遺体搬送の費用や流れを解説。自分で搬送する際のリスクや注意点
ご遺体を搬送した後の流れ
病院から搬送した後は葬儀社がサポートしてくれますが、葬式までの間に遺族が行う内容がいくつかあるのでご紹介します。
葬儀の日程を連絡する
ご遺体の搬送が完了し葬儀の日程が確定したら、まずは親族や友人に迅速に連絡をしましょう。病院から亡くなったと訃報連絡を入れた方には、改めて葬式の日程や場所、時間などの詳細をお知らせする必要があります。連絡手段としては、電話やメール、メッセージアプリなど、相手の都合に応じた方法を選びましょう。
もし家族葬を行う場合は、参列を希望する限られた方のみに当日の流れや参列に関する注意点を丁寧に伝えます。連絡する際は相手の状況や時間帯を配慮し、失礼にならないよう心掛けてください。
また家族葬の参列者の範囲に関しては、下記を参考にしてください。
>>家族葬と言われたらどうすべき?参列の決め方と参列時のマナーを解説
納棺の儀を行う
葬式に先立ち、故人を丁寧に送り出すための重要な儀式として「納棺の儀」が行われます。また納棺の儀に先立ち、故人の体を清め感謝と敬意を込めて最期の身支度を整える「湯灌(ゆかん)」も大切な儀式です。
納棺の儀では湯灌を終えた故人を、静かに厳粛な雰囲気の中で棺に納めます。この儀式も葬儀社のスタッフや専門の担当者が主導して進行しますが、近年では遺族が直接お見送りの手伝いをされるケースが増加傾向にあります。遺族が一緒に参列し葬式までの時間を共有することで、心の整理につながると考えられるからです。
納棺の流れを詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
身内が亡くなった後の必要な手続き
身内が亡くなった後、遺族にはさまざまな手続きが求められます。主な手続きについては下記で説明します。
火葬許可証を受け取る
火葬を行うためには「火葬許可証」が必要です。火葬許可証は死亡届を提出する際に、併せて申請するのが一般的です。死亡届は、病院で発行される死亡診断書と一体になっています。
死亡届は同居していた親族や同居人、または法律で定められた届出義務者が故人の死亡を知った日から7日以内に役所に提出しなければなりません。この手続きが完了すれば火葬ができます。
なおこれらの手続きは遺族にとって負担になる場合もあります。葬儀社が代行して手続きを進めてくれるサポートもあるため、確認してください。
火葬の流れや手続きについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
年金の受給停止を行う
年金受給者が亡くなった場合、その方に支給されていた年金を停止する手続きが必要です。通常「受給権者死亡届(報告書)」を日本年金機構に提出すると、年金の受給停止手続きが行われます。
ただし故人の個人番号(マイナンバー)が日本年金機構に登録されている場合は、この手続きが自動的に行われ、届出を省略できるケースがあります。手続きの有無は日本年金機構や担当窓口に確認しましょう。
また故人が亡くなった月までに支給されるべき年金のうち、まだ支払われていない分を「未支給年金」と呼びます。この未支給年金は故人と生計を共にしていた遺族が請求できるので、未支給年金があるときは必要書類をそろえ日本年金機構で手続きを行いましょう。
※参考:日本年金機構.「年金を受けている方が亡くなったとき」. https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html ,(参照2024-09-30).
本人確認書類を返却する
故人が所持していた各種証書や身分証明書は、適切な機関に返却する必要があります。これらの手続きは、故人の個人情報を保護し不正利用を防ぐためにも重要です。葬式後、できるだけ早めに進めましょう。以下、主な証明書の返却先を表記します。
書類 | 返却先 |
健康保険証 | 加入していた保険組合や自治体 |
介護保険証 | 加入していた自治体 |
運転免許証 | 最寄りの警察署や運転免許センター |
パスポート | 旅券事務所 |
返却作業は煩雑に感じますが、適切な手続きは故人の情報を安全に管理し、今後のトラブルを防ぐ上でも大切なステップといえるでしょう。
大切な人が亡くなったときのよくある質問
ここでは病院で遺族が対応するに当たって、多く寄せられる質問とその回答をご紹介します。
夜中に亡くなっても葬儀社に連絡できる?
ほとんどの葬儀社は夜間や休日を含め24時間体制で対応していますが、一部の葬儀社では夜間の対応に制限があることが考えられます。事前に連絡先を調べておき、いざというときに慌てないようにしておきましょう。
株式会社サン・ライフは24時間365日受付しています。突然の訃報に対するご相談・ご質問なども受け付けております。
病院から紹介された葬儀社にしなくてはならない?
病院から紹介された葬儀社を利用するかどうかは、遺族の意向が尊重されます。必ずしも紹介された葬儀社を利用する必要はありません。
すでに別の葬儀社を決めている場合は、病院に別の葬儀社に依頼したい旨を伝えましょう。ただしすぐに決めるのが難しい場合は、まずは病院に搬送を依頼して、その後葬儀社を選ぶという方法もあります。
お世話になったスタッフにお礼をした方が良い?
故人を献身的にサポートしてくれた医師や看護師、スタッフに対して遺族が感謝の意を表すためにお礼の品物を渡す方もいます。その場合は、分けやすく食べやすいお菓子や軽食などがおすすめです。
ただし病院によっては、ルールとして職員への贈答品を受け取るのを禁止しているところもあるので事前に確認しておくと良いです。品物を渡せないときは、手紙やはがきなどでメッセージを書き、感謝の言葉を伝えると喜ばれるでしょう。
故人の服装はどんなの?
病院で逝去した場合、看護師さんや業者によって故人の体を清める「エンゼルケア」という処置が行われます。この段階では病院が用意した浴衣に着替えさせるのが一般的です。介護施設や老人ホームなどでは、パジャマを着せることがあります。
一般的にイメージされる白い「死装束」は、実際には納棺の際に着用する衣装です。病院での浴衣はあくまで一時的なものであり、その後の正式な装いは葬式の際に改めて行われます。
まとめ
身内が亡くなると病院からの搬送や葬式の日程調整、納棺の儀、葬式後の手続きなど、行うべきことは多岐にわたります。
株式会社サン・ライフでは、ご遺族をサポートするため葬儀に関するご相談から各種手続きの代行、そして心のこもった葬儀の執り行いまで幅広いサービスを提供しています。
希望する葬儀の形態に合わせてさまざまなプランを提案し、経験豊富なスタッフがご遺族の気持ちに寄り添いながら一つひとつの手続きを丁寧に行いますので、ぜひ一度ご相談ください。