
お墓に管理や維持が大変というイメージを持つ人の中には、購入を迷っている人やお墓以外の供養方法を探している人もいるのではないでしょうか。
今回はお墓を持つことのメリット・デメリットやお墓以外の供養方法、今あるお墓をなくす墓じまいの流れ・注意点を解説します。自分の死後、残された家族が供養方法に迷わないように、今のうちにしっかりと考えておきましょう。
目次
お墓はいらないと考える理由
お墓はいらないと考える理由はいくつかあります。ここでは「お墓を引き継ぐ人がいない」「維持費がかかる」「遠方に住んでいて管理ができない」「お墓に対する価値観が変わった」の4つに注目して解説します。
お墓を引き継ぐ人がいないから
一昔前は、お墓を引き継ぐのはその家の長男の役割でしたが、現代は少子化が進み未婚率が上がっていることから、男児がいない家庭や婿養子を取らない家庭などが増加しています。
お墓の継承者不在という現実的な問題に直面し、やむを得ない状況からお墓なしを選ばざるを得ない人々が増えています。これは従来の供養形態の変化を示す、新しい社会現象として捉えられるでしょう。
維持費がかかるから
お墓をきちんと維持するためには、それなりの費用がかかります。お墓の維持は長期間にわたるため、残された家族にはある程度の経済的負担が伴います。具体的にかかる費用を以下にまとめてみました。
- 年間管理費
- 檀家料
- 修繕費
- 交通費(お墓参りに伴う)
特に修繕費は地震や台風などの自然災害でお墓が損傷した場合、建て替えに数百万円かかるケースもあります。そうなると家族の経済的負担がかなり大きくなるため、お墓はいらないと判断する人も出てくるでしょう。
遠方に住んでいて管理できないから
お墓の管理には「寺院や霊園による管理」と「墓地所有者による管理」の2種類があります。寺院や霊園による管理は、毎年管理費を支払って共有部分(参道・水場・垣根など)の管理を依頼できますが、基本的にお墓周りの草むしりや掃除などは家族が行わなければなりません。
この草むしりや清掃が、墓地所有者による管理に当たります。特に夏場はすぐに雑草が生えてきてしまい、小まめに除草しないと、草が生え放題になってしまうこともあるでしょう。
お墓を大切にしたいという思いが強いからこそ、きちんとした管理ができない状況を避けるため、新たな供養方法を選択する判断に至るケースが見られます。
お墓に対する価値観が変わったから
日本は昔から先祖を大切にするという価値観が強く、命日やお盆・お彼岸などは家族みんなでお墓参りをして故人を偲ぶことが習慣となっていました。
しかし時は流れ、人々のお墓に対する価値観は大きく変化しています。お墓を建ててお参りしてもらうことが本当に望むことなのかを考え、管理などで家族の負担を増やすことになるのであればお墓はいらないと生前に宣言する人も珍しくありません。
このような背景もあり、お墓参りをしたことがない・お墓の所在を知らない世代も増加しています。
そもそもお墓の意味合いとは?
お墓の始まりは、平安時代の貴族がお墓を建てて供養した習慣だといわれています。江戸時代には庶民の間でも浸透し、日本では死後お墓を建てて故人を供養するという伝統が生まれました。
お墓は遺骨の安置場所という役割だけでなく、お墓参りをして故人と向き合うことで故人を偲び、心の整理をする精神的な場所でもあります。お墓に向かって「このようなことがあった」「今このようなことで悩んでいる」など、報告や相談をする人も少なくありません。
これは多くの日本人が死後の魂の存在を信じており、故人の霊魂と対話できる場所としてお墓を考えているからでしょう。お墓には先祖供養や節目の法要などを通じて家族の絆を強め、世代を超えた精神的なつながりを育むといった意味合いがあるといえます。
お墓があるメリット
ここからはお墓を持つことのメリットを2つ紹介します。お墓を持つことで得られるメリットを知って、購入検討の参考にしてください。
先祖とのつながりを感じられる
お墓参りは、現代を生きる私たちと先祖とを結ぶ大切な機会です。日々の忙しさの中で見過ごしがちですが、そこに眠る先祖一人ひとりの存在があってこそ、今の自分の命が紡がれてきたという事実に向き合えます。
この深い気付きは単なる祖先への敬意だけでなく、自身の存在の意味や日常生活の尊さを見つめ直すきっかけとなるでしょう。お墓という場所は、先祖から受け継いだ命のバトンを実感し、生きていることに対する感謝の念を呼び覚ます、かけがえのない空間として機能しているのです。
納骨先に困らない
遺骨は自宅での保管も可能ですが「何となく落ち着かない」という人もいるでしょう。お墓に納骨できれば、精神的な負担が減るという点はメリットです。
またお墓に納骨することで、遺族がお参りできる場所ができ、よりしっかりとした供養を行える点もメリットとして挙げられます。
お墓を持つデメリット
次はお墓を持つデメリットを紹介します。自分のライフスタイルや環境と照らし合わせて確認してください。
承継者がいないと無縁仏になる
お墓は世代間での継承を前提とするため、結婚の予定がない・子どもがいない夫婦などでは購入が制限されることがあります。
なぜ購入に制限がかかるかというと、お墓はこれから先も半永久的に誰かが管理する必要がありますが、継承者がいないと無縁仏となってしまう可能性があるためです。
「継承者ができる可能性は低いけれど、死後はどこかに納骨してほしい」という人は、永代供養墓や樹木葬、納骨堂といった、継承の必要のない新しい形態のお墓を検討しましょう。
親族以外の納骨は難しい
先祖代々のお墓を継承するのは長男とその家族が行い、それ以外の兄弟は別のお墓を自分で建てるのが一般的です。結婚している女性は配偶者のお墓に入り、未婚もしくは離婚した女性は実家のお墓に入るのが基本スタイルとなります。
納骨に関しては誰が行っても法律上は問題ないですが、実際には家族もしくは親戚などの親族が行い、それ以外の人が納骨を行うのは慣習的に認められていないのが現状です。そのため身寄りが全くいないという人は、お墓を購入できたとしても納骨が難しくなるリスクがあるでしょう。
お墓はいらないと決める前に注意したいポイント
ここまでの内容を読んでお墓はいらないと判断した人でも、今から紹介する2つの注意ポイントは必ずチェックしてください。お墓の購入をやめる前に、これらの問題をクリアできるかどうかを検討しましょう。
親族の了承を得られない可能性がある
お墓と聞くと墓石型のお墓をイメージする人が大半で、それ以外のお墓にはあまりなじみがないという人がほとんどでしょう。特に高齢の人であれば、墓石以外のお墓に対して抵抗感を持っているかもしれません。
また永代供養や納骨堂などは、身寄りのない人のための場所という偏見を持っている人もおり「お墓はいらない」という考えを理解してもらえない可能性があります。
子どもや孫の負担を考えて墓石を購入しないと決断した人でも、こういった親族間でのトラブルが起きてしまうと、かえって精神的な負担をかけることになりかねません。トラブルを避けるためにも、自分一人で決めるのではなく、家族や親族としっかり相談して決めることが大切です。
合祀や散骨は元に戻せない
墓石に納骨しない方法として、合祀や散骨といった供養方法があります。合祀は血縁関係の全くない多くの人と同じお墓に入る方法で、散骨は遺骨を粉末状にして海や森などの自然に撒く方法です。
どちらの方法でも遺骨を元に戻すことが不可能なので、後から「やはり墓石に納骨したい」と思ってもかないません。
ちなみに故人の遺骨を全て取り出して散骨する場合は、「改葬」扱いとなります。お墓がある地域の自治体役場で、改葬許可の申請手続きを行いましょう。ただし自治体によっては改葬が認められない場合もあるので、留意してください。
お墓がいらないときの骨はどうする? 供養方法・費用を紹介
総合的に判断してお墓はいらないとしても「遺骨はどうすれば良いのか」と悩むこともあるでしょう。ここからはお墓がない場合の供養方法や費用を紹介します。
樹木葬
墓標となる樹木(シンボルツリー)の周りに遺骨を埋葬する樹木葬は、近年注目が集まっている埋葬方法です。
樹木葬は、山間部への埋葬以外にも草花や芝生などを使ったガーデン風の場所への埋葬をするタイプもあり、ナチュラルで自然が好きな人に向いています。継承を必要としない永代供養で、家族や親族がいない人でも利用できる点も魅力の一つです。
また一般的なお墓と異なり、墓石の購入が必要なく、遺骨を埋葬する小さなスペースを用意するだけで構わないため、費用を格段に安く抑えられます。これらの点が現代社会に生きる人がお墓に求めるニーズとマッチしていることから、樹木葬を選ぶ人が増えてきています。
永代使用料 | 約5~200万円 |
埋葬料 | 数万円 ※使用料に含む場合も有 |
銘板彫刻代 | 数万円 ※使用料に含む場合も有 |
年間管理料 | なし |
散骨
散骨とは遺骨を粉末状にして自然にまくことを指し、場所は海・森・空・宇宙などが挙げられます。上記の樹木葬などと同じ自然葬の一つとされていて、故人の思い出の場所に還す意味合いのある供養です。
散骨を明確に違法とする法律はなく、弔いのセレモニーとして散骨を行うに当たっては罪には問われません。ただし指定された墓地以外で人骨を埋葬、捨てるなどをした場合は、死体遺棄罪に該当するので注意しましょう。
また代表的な海洋散骨と山林散骨について、以下表に費用の相場をまとめました。
海洋散骨 | ・業者に委託:約2~10万円 ・合同散骨:約10~30万円 ・個人散骨:約15~50万円以上 |
山林散骨 | ・私有地に散骨:約1万5千~5万円 ・業者に委託:約10~30万円 |
散骨は自分で勝手に行うとトラブルとなりかねないため、必ず業者に依頼し、自治体のルールに則って行ってください。
なお株式会社サン・ライフでは散骨代行も行っています。興味がある場合は、下記の記事もぜひご覧ください。
>>代行散骨とは
納骨堂
納骨堂は大きな建物の中に遺骨を収納する棚がずらっと並んだ施設で、多くの人と一緒に遺骨を安置するスタイルです。お墓の一種なので、好きなときに訪れて供養ができます。
納骨堂は一人用、夫婦、家族など、形態ごとにプランが選べます。独身の人や子どもがいない人でも利用しやすく、現代人の価値観やライフスタイルに合ったお墓といえるでしょう。立地も利便性が良い場合が多く、管理不要でコストも抑えられる点が納骨堂の大きな魅力です。
代表的な納骨堂の費用を4つのスタイル別にまとめました。
ロッカー型 | 20~80万円 |
仏壇型 | 50~150万円 |
自動搬送型 | 80~150万円 |
位牌型 | 10~20万円 |
永代供養墓
個人でお墓を建てるのではなく、何人かの遺骨と合同で埋葬するお墓です。霊園や寺院など永代供養墓の管理者がお墓の供養をしてくれるので、家族や子どもがおらず継承者がいない人に人気があります。
墓石を個人で購入せずに済むので、コストがかなり抑えられる点も魅力の一つです。「墓石は管理が面倒」「費用がかかりすぎるため墓石の購入を断念したけれど、毎年の供養はきちんと行いたい」と考えている人におすすめの方法といえるでしょう。
永代供養墓 | 約3万~数十万円 |
合葬や永代供養に関して詳しく知りたい場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。
>>合祀墓とは?合葬や永代供養の違いや費用相場、メリット・デメリットを解説
手元供養
手元供養は、故人の遺骨を自宅で大切に保管し供養を行う方法です。遺骨全てを自宅で保管する形態と、一部のみを手元に置き残りを納骨堂に納める分骨という形態があり、遺族の状況に応じて選択できます。
手元供養では遺骨を骨壺に納めて仏壇や専用の飾り台に安置することで、日常的に故人を身近に感じながら供養ができます。故人との物理的な距離が近いことで精神的なつながりも深まり、日々の生活の中で自然な形で供養を続けられるでしょう。
手元供養にかかる費用は、骨壺や仏壇などの購入費用です。これらの相場をまとめました。
骨壺 | 1千~30万円 |
仏壇 | 4千~15万円 |
なお、いつでも故人と一緒にいたい人は、アクセサリーの中に遺骨を入れる方法もおすすめです。興味がある人はこちらの記事もチェックしてみてください。
お墓を撤去する際の墓じまいする流れ
「継承者がいない」「管理が大変」といった理由で、今あるお墓を撤去する「墓じまい」の流れを簡単に紹介します。費用相場も併せて解説するので、ぜひ参考にしてください。
墓じまいとは
墓じまいとは、遺骨を取り出し墓石を撤去して更地に戻し、土地の使用権を管理者に返還することを指します。先祖代々受け継いできたお墓があっても、維持管理の難しさや継承者不在などの理由で墓じまいを考えている人は近年増加傾向です。
すでにお墓の維持管理が大きな負担となっている人や今後の管理が不安な人に、墓じまいが選択されることが多いでしょう。
取り出した遺骨の新たな納骨先を見つけるまでが墓じまいとなります。供養方法は納骨堂や自然葬など、残された家族が負担にならないような形を見つけることが大切です。
墓じまいに関して、より詳しく知りたい場合は下記の記事も参考にしてください。
>>墓じまいから散骨までの費用はどれくらい?墓じまい後の供養についても解説
墓じまいの流れ
墓じまいの流れは、以下の通りです。
- 遺骨の移転先を決めて、管理者となる寺院や霊園から埋葬許可証を発行してもらう
- 各自治体から改葬許可証を発行してもらう
- 閉眼供養を依頼し、墓石を撤去してもらう
- 墓地を更地に戻して、管理者へ返却する
まずは、遺骨の移転先を決めましょう。納骨堂や合祀墓、樹木葬、散骨などが候補として挙げられます。移転先が決まれば、その管理者となる寺院や霊園から埋葬許可証を発行してもらいましょう。
次に各自治体から改葬許可証を発行してもらいます。手元供養の場合は改葬許可書の申請は不要ですが、将来的に必要になる可能性もあるため、改葬許可申請書の改葬先を空欄にして作成し、保管してください。
改葬許可証が発行された後は、お墓の魂を抜き取る儀式である閉眼供養を行います。僧侶の読経によって行われ、お布施は3万円程度必要です。
最後は石材店に依頼し、墓石を撤去してもらいます。墓石を解体して、土地をきれいに更地にしてから管理者へと返却しましょう。墓じまいが無事に終わったら、決めておいた移転先に改葬許可書を提出して納骨を行います。
墓じまいにかかる費用相場
墓じまいにかかる費用は大きく分けて「墓石の撤去費用」「手続きに関する費用」「新しい納骨先にかかる費用」の3つあります。それぞれにかかる費用相場を、以下の表にまとめましたので参考にしてください。
墓石の撤去費用 | 約23~50万円 |
手続きに関する費用 | 約数百~1500円 |
新しい納骨先にかかる費用 | 約8~260万円 |
墓石の撤去費用は、お寺へのお布施や離檀料などが含まれるため、各々の状況によって大きく異なります。また新しい納骨先にかかる費用も同様に、どのような埋葬方法を選ぶのかによって金額に大きな違いが出てくるでしょう。
墓じまいする際の注意点
ここからは墓じまいをする際の注意点を3つ紹介します。墓じまいを検討する理由はさまざまですが、事前に注意するポイントを確認しましょう。
檀家を離れる際のトラブル
檀家を離れることを「離檀」といい、その際に離檀料を檀家に支払うことが通例となっています。離檀料に明確な規定はなく、今までお世話になった気持ちとしての金額を支払うのが一般的です。
しかし多くの寺院が経済的な困難に直面しており、離檀に難色を示されることが少なくありません。円満な形で墓じまいを進めるためには、離檀をスムーズに行うことが鍵です。そのためには早い段階からゆくゆくは墓じまいをしたい旨を伝えておき、節目節目で丁寧に話し合いをし、相互理解を深めておくことが大切です。
親族と会う機会が少なくなる
お墓はただ単に故人を供養する場所ではなく、家族や親族間のつながりを保って強くする役割も果たしています。命日やお盆、お彼岸など先祖を供養する節目でお墓参りをして、親族みんなで法要を行うことで、遠方に住んでいる家族や親族が集まる機会が生まれるでしょう。
高齢になるとどうしても疎遠になりがちな親戚付き合いも、お墓があることで絶たれることなく関係性を継続できます。お彼岸やお盆などの機会に、家族や親戚が自然と集まり、供養を通じて世代を超えた交流が生まれます。墓じまいによって大切な集いの場が失われることは、親族のつながりが稀薄になってしまうことを念頭に置きましょう。
葬儀社に相談する
墓じまいはさまざまな手続きや話し合いが必要なため、家族だけで行うのは大変です。そのようなときは、墓じまい代行や相談に乗ってくれる葬儀社を利用することをおすすめします。
葬儀社は墓じまい後の供養方法(永代供養、納骨堂、散骨など)や、家族の希望、経済的負担、維持管理など、あらゆる相談に対応しています。各家庭の状況に合わせたプランを提案してくれる葬儀社が増えており、家族だけで考えるよりも適切な決断ができるでしょう。
改葬許可証の取得や寺院との離檀交渉なども代行してくれる場合もあるので、気になる人はぜひ一度相談してみてください。
まとめ
お墓は故人を供養する場所として大切な場所ですが、維持管理が大変、経済的な負担が大きいなどのデメリットもあります。故人を供養する方法は墓石を建てる以外にも、納骨堂や樹木葬、散骨、手元供養など他にも複数あるので、各家庭に合った方法を見つけていきましょう。
墓じまいをする場合は、檀家との話し合いや納骨の移転先を見つけるなど、さまざまな準備が必要です。もし家族だけで行うのが大変であれば、葬儀社に相談してみるのも一つの方法です。
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