
納骨は故人をしのび、心の区切りを付ける大切な儀式です。しかし大切な人を亡くした後に「いつまでに納骨すべきか」「費用はどのくらいかかるのか」「どのような準備が必要なのか」など、疑問や不安を抱える方も少なくありません。
この記事では、納骨の適切なタイミング、必要な準備、手続きの流れ、そして費用について詳しく解説します。納骨に関する疑問や不安を解消し、故人を安心して供養できるよう、ぜひ参考にしてください。
納骨のタイミングは自由でOK
納骨とは、故人の遺骨をお墓や納骨堂などに安置する儀式です。日本の法律では納骨の必要性や時期など明確な決まりが記載されておらず、いつ行っても問題はありません。
葬儀後すぐに焦って納骨する必要はなく、遺族が心の整理を付けてから無理のないタイミングで納骨すると良いでしょう。
大切なのは、形式よりも故人を思う気持ちです。喪失の悲しみが癒えないうちに急いで納骨をするよりも、家族全員が納得してから準備を整え、落ち着いて納骨を行う方が、故人への供養にもつながります。
納骨する一般的な時期をご紹介
納骨は自由なタイミングで行えますが、多くの方は法要の節目を一つの区切りとして選ぶ傾向にあります。ここでは、一般的によく選ばれる納骨の時期をご紹介します。
四十九日
四十九日法要は、故人が亡くなってから49日目に行われる重要な儀式です。仏教では、この日をもって故人の魂が現世を離れ、極楽浄土へと旅立つとされており、霊が安らかに成仏するための大切な節目と考えられています。古くからこのタイミングで納骨を行うのが一般的で、多くの家庭が一つの区切りとして選んできました。
現代でもお墓の準備が整っている場合や、遺族の気持ちの整理が早くついた場合には、伝統に従い四十九日に納骨を行うケースが多く見られます。
葬儀後間もなくの、親族や友人など故人に縁のある人々が集まる機会でもあるため、納骨をこの日に合わせることで皆で心を一つにして故人を見送り、冥福を祈ることができます。
新盆(初盆)
新盆とは、四十九日を過ぎた後に迎える初めてのお盆を指します。四十九日の法要後すぐにお盆を迎える場合は、次の年を新盆とするのが一般的です。
新盆は、家族だけで落ち着いて納骨をしたい方にとって適したタイミングです。ある程度時間を空けてから納品できるというメリットもあり、心の整理がつきやすいという点も納骨に適しています。
ただし新盆の時期はお寺も多忙なことが多く、早めに僧侶とのスケジュール調整が必要です。また準備に追われることも多くなるため、事前に知識を身に付けておくと良いでしょう。新盆に関して詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
百箇日法要
百箇日法要(ひゃっかにちほうよう)は、故人が亡くなってから100日目に営まれる供養の儀式です。「卒哭忌(そっこくき)」とも呼ばれ、「故人を失い涙に暮れる日々から卒業する」という意味が込められています。遺族にとっては、心の区切りとなる大切な節目でもあります。
この頃には家族の気持ちもいくぶん落ち着いており、準備を整えた上でゆとりを持って納骨に臨めるのが特徴です。また日取りに厳密な決まりがないため、日程の調整がしやすいという点もあります。
週末や祝日に法要を行えば親族も参加しやすいでしょう。
一周忌法要
一周忌法要は、故人が亡くなってから1年後に営まれる法要です。この節目も納骨のタイミングとして多くの方が選んでいます。
四十九日では気持ちの整理がつかず納骨を見送った場合や、百箇日法要では準備が間に合わなかった家庭にとって、一周忌は改めて区切りを付ける良い機会です。お供えや儀式の準備も含めて丁寧に故人をしのぶ時間を設けることで、納骨も心穏やかに進められるでしょう。
納骨のタイミングに一周忌法要を選ぶなら、一周忌法要の流れを大まかに理解しておくのがおすすめです。詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
>>一周忌とは?一周忌法要の流れや準備、基本的なマナーについて解説
三周忌法要
三周忌法要は、故人が亡くなってから2年目の命日に営まれる年忌法要です。納骨の時期としてはやや遅めとなりますが、「気持ちの整理がまだつかない」「新しくお墓を建てる準備をしている」などの理由から、あえてこの時期まで自宅で手元供養を続ける方もいます。
ただし納骨を長く先延ばしにすると親族から心配の声が上がったり、災害や盗難などの予期せぬトラブルで遺骨を失ったりするリスクもゼロではありません。三周忌までに納骨を済ませるのは、区切りを付ける一つの目安といえるでしょう。
大切なのは、心の準備と現実的な環境の両面が整っているかどうかになります。家族や親族とよく相談しながら、無理のないタイミングで納骨の時期を決めることが大切です。
納骨前に必要な準備
納骨を行う際にはいくつかの準備が必要です。突然慌ただしく動き出すのではなく、段階を踏んで計画的に進めることで、落ち着いた気持ちで迎えられます。ここでは納骨前に知っておきたい事項を詳しく解説します。
納骨先を選定する
納骨の準備として最初に行うのが納骨先の選定です。すでに先祖代々のお墓がある場合は問題ありませんが、納骨を行う前にお墓がない場合は遺骨の納骨先を決める必要があります。一般的なお墓に納骨する場合、納骨先は以下の3種類に分けられます。
種類 | 特徴 |
民営墓地 | ・宗教・宗派不問のところが多く、デザインや区画の自由度が高いのが特徴
・設備も整っている |
公営墓地 | ・地方自治体が管理・運営しており、費用が比較的安価で、宗教・宗派を問わない
・数が限られているため抽選となる場合もある |
寺院墓地 | ・特定の寺院が管理しており、対象となる寺院の檀家となる必要がある
・宗派によっては制限があるものの、僧侶による手厚い供養が期待できる |
検討する際には、家族の意向や予算、宗教観などを総合的に考慮し、自分たちに合った納骨先を慎重に選ぶことが大切です。お墓を建てる場合は石材店への発注から完成まで最低でも2〜3カ月かかるため、早めに依頼しましょう。
菩提寺と納骨日を決める
納骨のタイミングが決まったら、次に行うのが菩提寺との相談です。仏式で納骨式を行う場合、一般的には僧侶に読経をお願いします。特に土日祝日などは法要の予約が集中しやすいため、できるだけ早めに日程を伝え、僧侶のスケジュールを押さえてもらうようにしましょう。
納骨式と併せて年忌法要を行いたい場合は、その旨を事前に菩提寺に伝えます。段取りの確認と共に、かかる費用の目安を事前に把握しておくと良いです。
また菩提寺が遠方にある場合や新たにお墓を建てた先の寺院と付き合いがないときは、手続きに時間がかかることもあります。そのため余裕を持った準備が必要です。納骨式を円滑に進められるよう、僧侶との連携はしっかり行いましょう。
参列者に連絡する
納骨式の日取りが決まったら、参列してほしい方に連絡しましょう。参列者のリストをあらかじめ作成し、連絡に必要な情報を整理しておくと案内もスムーズです。日程や場所が決まったら、電話やハガキ、メールなどを使って参列の可否を確認します。
案内には納骨式の日付、時間、場所(霊園や寺院の名称・住所)、集合時間、服装の指定(喪服か平服か)、駐車場の有無、当日の流れなどを明記しておくと丁寧です。遠方からの参列者がいる場合は、最寄り駅や交通手段の案内も加えると良いでしょう。
納骨式を家族のみで行う場合は、その意向をあらかじめ周囲に伝えておくと誤解やトラブルを回避できます。落ち着いて当日を迎えるためにも、早めの連絡がおすすめです。
埋葬許可証を取得する
納骨には埋葬許可証が必要です。これは市町村の許可が必要な正式な書類で、まずは死亡届を役所に提出し、火葬許可証を発行してもらいます。
火葬後、この火葬許可証に「火葬済」の印と火葬日時が記されると、埋葬許可証として扱われます。この埋葬許可証は原本のみが有効とされており、納骨時に提出する大切な書類です。紛失や破損がないよう、保管には十分注意しましょう。
手続きに不安がある場合は、葬儀社や霊園の管理事務所に相談するとスムーズに進められます。法律に則り適切に準備しましょう。
※参考:厚生労働省.「墓地、埋葬等に関する法律の概要」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130181.html ,(参照2025-06-04).
お布施やお供物を用意する
納骨式では、お布施の準備が必要です。お布施とは、僧侶に対し読経をしていただいたことへの感謝の気持ちを示すもので、地域や寺院によって異なりますが一般的には3万〜10万円が相場とされています。
また僧侶が遠方から来る場合には「お車代」として5,000〜10,000円を包むのが通例です。納骨式後の会食(お斎)を行う際、僧侶が参加しない場合もあるので「お膳料」として5,000円ほどを別途用意しておくとスムーズに渡せます。
なお、お布施を包む際は、白無地の封筒か奉書紙を使用し、表書きとして上部中央に「御布施」、下部中央に喪主の名字またはフルネームを書きます。お金は新札を用意し、気持ちを込めて準備し正式なマナーに沿って渡しましょう。
お布施の包み方やマナーに関して詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
>>お布施にダメな金額は?相場や書き方、渡し方のマナーを解説
【当日】納骨までの流れを解説
納骨式当日は、準備してきた段取りに沿って厳かに進めます。遺族や親族にとっても大切な区切りとなるため、納骨式の流れを事前に把握しておきましょう。ここでは当日の主な流れを説明します。
施主の挨拶・僧侶の読経
納骨式の冒頭では、まず施主あるいは遺族代表から参列者へ向けて挨拶を行います。挨拶の内容としては、忙しい中参列してくれたことへの感謝の気持ちや、故人をしのぶ思い、また簡単な家族の近況などを含めると良いでしょう。
会食を予定している場合は、その案内もここで伝えます。挨拶は3分程度を目安に、簡潔にまとめるのが一般的です。
挨拶が終わると、僧侶による読経が始まります。この読経は、故人の冥福を祈るためのものであり、納骨式の中心的な儀式として静かに執り行われます。故人への思いを胸に手を合わせる時間です。
納骨を行う
読経が終わると、納骨の儀に移ります。納骨の儀は、墓石の下にある納骨室(カロート)を開けて遺骨を納めるという作業です。カロートの開閉作業は石材店に依頼するか、遺族自らが行う場合もあります。
納骨の方法は地域や墓地の形式によって異なりますが、主に3つの納め方があります。
- 骨壷をそのまま納骨室に納める方法
- 骨壷から遺骨を出して直接納め、壷を使わない方法
- 骨壷の中の遺骨を納骨袋(さらし袋)に移し、納める方法
どの方法を選ぶかは、墓地や寺院の指示、地域の風習により決まることが多いため、菩提寺へ事前に確認しておくのが良いです。納骨という行為は物理的な作業ではあっても、精神的にも大きな節目であることから丁寧に心を込めて行う必要があります。
読経と焼香
遺骨を納めた後、再び僧侶による読経が行われます。これは「納骨経」と呼ばれる、参列者一人ひとりが故人との思い出に思いを馳せながら、故人が安らかに眠れるよう願いを込める供養の一環です。
読経が始まり、僧侶の合図に従って参列者が順番に焼香を行います。焼香の順番は、まず施主や近親者が行い、その後に友人や知人が続くのが一般的です。
焼香の作法や回数は宗派によって異なるため、不安な場合は僧侶や他の参列者の動きを参考にすると良いでしょう。
納骨式後の会食
納骨式が終わった後は、僧侶や参列者を招いて会食を行うのが一般的です。このときの会食は「お斎(とき)」と呼ばれ、故人をしのびながら語り合う時間として設けられます。
会食の場所は、ホテルや料亭の個室、自宅、あるいは寺院や霊園内の会食スペースなど状況に応じて選ばれます。
会食が始まる際には、施主または喪主が改めて挨拶を述べ、献杯をもって開始の合図とするのが通例です。献杯では、故人の位牌の前に酒を注いだ盃を供えるのが一般的とされています。
会食中は、あくまでも故人の思い出や感謝の気持ちを中心に、静かで落ち着いた雰囲気を大切にしましょう。温かく、そして静かで余韻の残るひとときとなるよう、心を込めて言葉を選ぶのがマナーです。
会食の締めくくりには、施主が改めて挨拶を行い参列者へ感謝の言葉を述べて式を終えます。なお僧侶が会食を辞退された場合は「御膳料」を包んで渡すのが丁寧な対応とされています。
納骨にかかる費用相場
納骨を行う際は、さまざまな費用が発生します。内容を把握して事前に準備しておくことで、当日の混乱を避け心に余裕を持って大切な供養に臨めます。以下は、一般的な納骨にかかる費用の内訳とその目安です。
項目 | 費用相場(目安) | 内容 |
納骨式のお布施 | 3万~5万円 | 僧侶への謝礼。読経のお礼として渡す |
会食費(お斎) | 5,000~1万円程度/人 | 参列者への振る舞いとして食事を提供 |
彫刻料 | 2万~5万円 | 墓石に命日や戒名を追加で彫刻する費用 |
お墓の費用 | 100万~350万円 | 墓地の購入・墓石建立が必要な場合 |
法要・年忌法要 | 3万円程度 | 法要の読経に伴う費用や会場使用料など |
納骨費用は内容や地域、宗派によって異なり、あくまで目安となります。特に墓地の購入や墓石の建立には、高額な費用がかかる場合があるため早めに予算を組みましょう。
納骨にかかる項目や費用について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
>>納骨費用の項目や金額の目安とは?納骨式の概要や流れ・安く抑える方法など分かりやすく解説
納骨の際の注意点
納骨は故人を弔う大切な儀式ですが、準備を滞りなく進めるにはいくつかの注意点があります。後々のトラブルを避けるためにも、あらかじめポイントを把握しておきましょう。
家族とよく話し合いをする
納骨先や供養の方法を決定する際は、家族や親族と時間をかけて話し合いを行いましょう。
近年では、従来のお墓以外にも別の納骨先や供養方法など選択肢が多くなっており、年配の親族や宗教的な価値観を重視する方との間で意見が対立するケースも少なくありません。
一人で決定してしまうと、後々の感情的な対立や遺族間の関係悪化につながる事例もあります。供養に対する考え方や宗教観、家族それぞれの意見に耳を傾けながら丁寧に方針を定めることが重要です。
お墓を新しく建てた場合は開眼供養を行う
新たにお墓を建立した場合には、「開眼供養(かいげんくよう)」を行う必要があります。墓石に仏の魂を迎え入れ、お参りや供養の対象にするための儀式です。
地域や宗派によっては「開眼法要」「入魂式」「魂入れ」「建碑式」とも呼ばれますが、いずれも同じ意味を持ちます。
「開眼」とは、もともと仏像や仏画に目を入れる行為に由来し、そこに魂が宿るとされています。開眼供養は、僧侶を招いて読経していただくことで執り行われるもので、納骨式と同日に実施されるのがほとんどです。
開眼供養を行うと、故人の魂が安らかに眠る場所として正式に認められます。特に新しく墓を建てた場合は、忘れずに準備しましょう。
まとめ
納骨式は時期に明確な決まりはなく、気持ちの整理が付いてからいつでも行えます。急ぐ必要はないので、自分の気持ちと向き合い、それぞれのペースで準備を進めていきましょう。
株式会社サン・ライフでは、葬儀や法要、納骨に関するサポートを行っております。専門的な知識と多くの実績を持つスタッフが、心の負担を軽減し、滞りなく儀式を行えるようアドバイスしていきます。不明な点にも丁寧に回答いたしますので、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。