故人のご遺体を棺に納める納棺(のうかん)の儀式。通夜や告別式の流れや服装マナーは知っていても、納棺の儀式で気を付けるべき服装マナーややるべきことについては、よく分からない方も多いかもしれません。
そこで本記事では納棺の儀式に相応しい服装やNGの服装について、男女別に解説します。また納棺の儀式で押さえておきたいマナーや儀式の流れもご紹介しているので、一読すれば安心して納棺の儀に参加できます。
納棺とは?どのような儀式なのかを解説
納棺とは文字通り故人の身体を棺に収めることを指し、故人にとっても親族にとっても意味のある大切な儀式です。そこで納棺とは具体的にどのような儀式なのか、納棺を行う意味やメリットについて解説します。
納棺とは
納棺とは、故人を棺に納める儀式のことで、ご遺体が通夜や告別式で参列者の前に出るよりも先に、親族やごく親しい関係者のみで執り行うとても大切な行事です。生前親しくしていた方たちが、思いやりを込めて納棺の儀式を行うことで、故人が安心して旅立ち、来世を迎えるための準備を行います。
単に故人の身体を棺に入れるだけではなく、拭き清め、装束を整え、時にはメイクを施して旅立ってもらうための最後の身支度を行うものです。
納棺は家族向けの儀式
通夜や告別式が故人の友人・知人、会社関係者などご縁のあった方たち向けの「社会的な儀式」であるのに対し、納棺は親族やごく親しい方のみで行う「家族向けの儀式」です。
通夜や告別式は、家族や親族にとっては式の準備や参列者の応対などで慌ただしく、ゆっくり故人と向き合う時間はありません。
その点、納棺は住み慣れた家でゆっくりと時間をとって故人と向き合えます。
納棺時の服装マナーは?
納棺は故人を送り出すための大切な儀式のため、通夜や告別式の時と同様に服装のマナーがあります。納棺の際は故人への敬意を表すためにも、きちんと服装マナーを守ることが大切です。そこで性別やシーン別の服装マナーをご紹介します。
納棺の儀式を火葬場で行う場合
納棺の儀式を葬儀場で行う場合は、男女ともに喪服を着用しましょう。なぜなら葬儀場で納棺を行った後に続けて通夜が行われるのが一般的だからです。
もし何らかの理由で喪服以外の服装で納棺の儀式を行った場合、続けて通夜に参列するのであれば喪服に着替える必要があります。喪服には男性や女性、子供にもマナーがあるので注意しましょう。
男性の服装
男性の喪服は、ブラックのスーツが基本です。できるだけ漆黒に近いブラックを選びましょう。暗めの色だからといって、ネイビーやグレーなどは避けた方が無難です。ネクタイ、ベルト、靴も黒を選びましょう。寒い季節は上着を着用することもありますが、やはり黒を選びます。
中に着るワイシャツは、柄の入っていない白無地がマナーです。また指輪やピアスなどのアクセサリーは派手な印象を与えてしまい葬儀にふさわしくないため、結婚指輪以外のアクセサリーは外します。皮製品も「殺生」がイメージされるため避けるのが無難です。
女性の服装
女性の喪服は、黒のスーツやワンピース、アンサンブルが基本です。できるだけ漆黒に近いブラックを選び、ネイビーやグレーは避けましょう。またラメやスパンコール、ツヤのある素材も、葬儀にはふさわしくありません。
足元は黒のストッキングや布製のパンプスを履くのが基本ですが、ヒールが高すぎる靴は避けてください。
またアクセサリーは結婚指輪とパールのネックレスのみにとどめます。ネックレスは二連三連だと「不幸が二度・三度起きる」ことを連想させるため、一連のものを着用するのがマナーです。またメイクはナチュラルを意識し、ラメや派手な色は控えます。
子供の服装
子供の喪服は学校の制服を着用します。制服であれば黒やグレー、ネイビーなどの暗めの色でなくても構いません。普段の通園・通学時の服装で参列すればOKです。
制服がない場合は喪服を準備します。男子は黒のジャケットとズボン、白のシャツを選び、女子は黒無地のワンピースが無難です。ラメやツヤの入った素材は避けましょう。
納棺の儀式を自宅で行う場合
納棺の儀式は自宅で行うこともあります。この場合の服装は平服でも構いません。ただし平服とは「略喪服」を意味し、決して普段着や私服を意味するわけではないことに注意しましょう。
略喪服は黒以外にネイビーやグレーなどの暗めの色味であれば着用できます。男性はブラックスーツが無難ですが、グレーやネイビーなどのスーツでも構いません。女性も同様に暗めの色味であれば黒以外のワンピースなどを着用できます。シンプルなデザインなら柄入りのものを選ぶことも可能です。
ただしアクセサリーやメイクについては喪服と同様、派手な印象を与えないためにも結婚指輪や一連のパールネックレスにとどめ、それ以外のものは着用を避けるのが好ましいです。
納棺時の服装を選ぶ際の注意点
納棺は故人を偲びつつ最後のときを共にゆっくりと過ごす大切な儀式です。したがって厳かな雰囲気を保つために服装にも気を遣う必要があります。そこで納棺の際に着用する服装について説明します。
ジーンズは基本的にNG
葬儀で「私服可」といわれた場合は、普段着でも構いません。ただしジーンズやTシャツはあまりにもラフすぎるため基本的にNGです。
葬儀は故人との最後の別れの場であり、とても大切な儀式です。ジーンズやTシャツでは、故人だけでなく集まった親族に対しても失礼に当たります。
したがって「私服可」の場合でも、あまりにラフすぎる服装は避けるのがマナーです。普段着の中でも落ち着いたイメージの服装を選ぶようにしましょう。
革製品はNG
動物の毛皮が使われたアイテムを身につけるのはNGです。なぜなら、皮革製品は殺生をイメージさせるため、納棺をはじめとした葬儀の場ではふさわしくないとされているからです。
もっとも男性の場合はベルトや靴に皮革が使われているものが多いため、葬儀のために皮革製品以外のものを用意するのは大変かもしれません。その場合はベルトや靴に限って革製を着用してもよいとされています。
また女性の場合も突然の訃報で靴の用意が難しい場合は、革製の黒パンプスでも差し支えありません。
派手な色や露出の高い服装はNG
葬儀では派手な色や柄、露出の高い服装はふさわしくありません。なぜなら葬儀は故人に思いを馳せ、最後のときをゆっくりと過ごすことが目的であり、ファッション性の高い服装や過度な露出は故人や親族に失礼に当たるからです。
したがって派手なデザインや露出は避け、基本的に黒で統一した服装を着用しましょう。女性の場合はスカートの丈の長さに注意が必要です。丈は膝が隠れる程度とし、膝上のミニスカートは避けてください。
納棺の儀式の流れを解説
一言で「納棺の儀式」といっても、いくつかの手順に分かれています。納棺は故人を敬い、偲ぶ気持ちを表す儀式なので、どの手順もしっかり心を込めて丁寧に行うことが重要です。ここでは納棺の儀式の流れについて詳しく解説します。
「末期の水」を行う
「末期の水」とは、水を含ませたガーゼや脱脂綿を故人の唇に当て、潤いを与える儀式です。元々は仏教の経典が由来とされており、故人が安らかに旅立てることを願って行われます。
末期の水は故人と関係が深かった親族から順に行うのが一般的です。基本的な順番は配偶者、子供、両親、兄弟姉妹、子供の配偶者、孫の順で行います。故人の安らかな旅立ちを願い、心を込めて丁寧に行うことが大切です。幼い子供が行う場合は、大人が手伝いながら行っても差し支えありません。
「湯灌(ゆかん)」を行う
「湯灌」は故人の身体を温め、洗い清める儀式です。昔は親族が行っていましたが、現代では葬儀社のスタッフや納棺師など、専門スタッフが行うのが一般的です。親族は傍らで見守りながら参加します。
もし親族の中で直接故人に湯灌をしてあげたいと希望するのなら、担当するスタッフに申し出れば親族の手によって湯灌をすることも可能です。初めて湯灌をされる方がほとんどで、やり方が分からないかもしれませんが専門スタッフの説明とサポートがあるので安心です。
白い仏衣を着せる
湯灌の後は故人に「死装束」と呼ばれる白い仏衣を着せる儀式に移ります。死装束は一般的に、白い浴衣のような着物を着せます。最近は故人が生前気に入っていた服を着用させるケースが増えてきました。したがって白や着物にこだわることなく、洋服や派手なデザインのものでも着せることができます。
故人のお気に入りの服を死装束としたい場合は、葬儀社のスタッフと相談して決めましょう。なお故人に死装束を着せるにはある程度の力とコツがいるため、専門のスタッフに任せるのが無難です。
ラストメイクを施す
ラストメイクは「死化粧」とも呼ばれ、故人に最後の化粧を施す儀式です。メイクといっても派手にするのではなく、故人の生前の印象と近くなるよう肌や唇の色、眉の形を整えます。ラストメイクは主に以下の手順で行います。
- ・髪をクシやブラシで整える
- ・男性はヒゲを剃る
- ・女性はファンデーション、口紅などで薄く化粧する
- ・爪を切りそろえる
もし故人の顔のやつれが気になる場合は、頬に綿を含ませましょう。また薄化粧は男性に施すことも可能です。場合によっては化粧水や乳液で肌の表面を整え、ファンデーションを薄く塗り、チークで肌色を整えます。葬儀社ではオプションで専門スタッフがラストメイクを施してくれることがほとんどです。
納棺する
故人の最後の身支度が整ったら、ご遺体を棺に納める「入棺」の儀式を行います。入棺は、基本的には納棺師が行うのが一般的ですが、親族や親しい方の手で直接納棺することも可能です。親族が入棺の儀式を行いたい場合は、事前に葬儀社に相談しておきましょう。
故人のご遺体は、生身の人間と違ってとてもデリケートです。そのため入棺の儀式は細心の注意を払いながら丁寧に行う必要があります。親族の手で行う場合も、納棺師のサポートを受けながら心を込めて慎重に納棺するようにしましょう。
副葬品を納める
故人が納まる棺の中には、生前故人が愛用していた品や親族が希望する品を副葬品として入れられます。ただし副葬品として入れてよいものと悪いものがあるため注意が必要です。
棺に入れてよいもの
棺に入れてよいもの |
<燃えるもの・燃えやすいものが基本> ・衣服(金属などの燃えにくい素材の装飾は外す) ・手紙 ・花 ・嗜好品(缶や瓶、プラスチックなどの包装からは取り出す) ・趣味の品 ・人形・ぬいぐるみ(プラスチック素材や大きいものは避ける) ・折り鶴(千羽鶴のような大量の場合は避ける) |
棺に入れてはいけないもの |
<燃えないもの・燃えにくいもの> ・金属製のもの(眼鏡、腕時計、アクセサリーなど) ・ガラス製のもの ・革製のもの ・プラスチック製のもの ・缶、ビン ・ライター ・大きな果物(水分が多く破裂する危険性があるため) ・分厚い本 ・お金(法律で禁じられているため) ・生きている方の写真 |
なお副葬品として入れられるものは地域や宗派によって異なるため、事前にお寺や葬儀社に確認するのがおすすめです。
焼香を行う
納棺の儀式が全て終わったら棺を祭壇の前に移動させ、焼香を行います。焼香台は故人の棺の前に設置します。焼香する際の順番は故人と関係が深い親族から行いましょう。基本的には配偶者、子供、両親、兄弟姉妹、子供の配偶者、孫、友人の順で行います。
納棺の儀式では通夜や告別式と同じく僧侶をお呼びし、読経を捧げてもらうことも可能です。
納棺の儀式にかかる時間
納棺の儀式を希望する場合は「どれくらい時間がかかるか」「どの時間帯に行えばよいか」をあらかじめ押さえておく必要があります。そこで納棺の儀式にかかる時間やいつ行うべきかについて説明します。詳しい時間に関しては、葬儀社のスタッフに確認することも大切です。
納棺の儀式にかかる時間
納棺の儀式にかかる時間は、約30分〜1時間が一般的です。ただし特に決まりはないため、地域や葬儀社によって2時間程度かけてゆっくりと行う場合もあります。
もし「故人との最後の時間をゆっくり過ごしたい」「一つ一つの儀式を時間をかけて丁寧に行いたい」などの希望がある場合は、どれくらいの時間をかけられるか葬儀社に相談しておきましょう。
納棺の儀式はいつ行う?
納棺の儀式を行う時間帯は、通夜の開始時間が一般的に18時〜19時であることから、逆算して14時頃からが多いです。納棺の儀式にかかる時間は30分〜1時間程度ですが、慌ただしくならないよう時間に余裕を持つようにしましょう。
ご遺体を自宅に置いているのではなく専用の施設を利用している場合は、親族が納棺の儀式を希望するか否かで納棺をする時間帯が変わります。納棺の儀式を希望する場合は、通夜の開始時間から逆算した時間帯に行われます。希望しない場合はすみやかに納棺するのが一般的です。
エンバーミングができる葬儀社がおすすめ
エンバーミングとはご遺体を修復し、顔の表情や姿を生前に近い状態に整えることです。日本語では「遺体衛生保全」や「死体防腐処理」といいます。
エンバーミングは単にご遺体の姿を整え防腐処理を施すことだけにとどまらず、親族のグリーフケア(悲嘆ケア)の意味も持っています。
なお「株式会社サン・ライフ」ではエンバーミングを受け付けているので、ご希望の際はスタッフまでご相談ください。
まとめ
納棺の儀式に出席する際の服装は、基本的に通夜や告別式のマナーと同様です。男性も女性もなるべく漆黒に近い黒のスーツやワンピースを選び、派手なメイクやアクセサリー、皮革製品を避けます。納棺の儀式では故人を偲ぶ厳粛な雰囲気に合った服装を選ぶよう心がけましょう。
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